行政書士の過去問
令和4年度
法令等 問30

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

行政書士試験 令和4年度 法令等 問30 (訂正依頼・報告はこちら)

Aは、BにCから贈与を受けた動産甲を売却する旨の契約(以下「本件契約」という。)をBと締結したが、引渡し期日が過ぎても動産甲の引渡しは行われていない。この場合についての次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。
  • 本件契約に「Cが亡くなった後に引き渡す」旨が定められていた場合、Cの死亡後にBから履行請求があったとしても、Aが実際にCの死亡を知るまではAの履行遅滞の責任は生じない。
  • 動産甲が、契約締結前に生じた自然災害により滅失していたために引渡しが不能である場合、本件契約は、その成立の時に不能であるから、Aは、Bに履行の不能によって生じた損害を賠償する責任を負わない。
  • 動産甲の引渡しについて、Aが履行補助者であるDを用いた場合、Dの過失により甲が滅失し引渡しができないときには、Aに当然に債務不履行責任が認められる。
  • 動産甲が本件契約締結後引渡しまでの間にA・B双方の責めに帰すことができない事由によって滅失したときは、Aの引渡し債務は不能により消滅するが、Bの代金債務は消滅しないから、Bは、Aからの代金支払請求に応じなければならない。
  • Aが本件契約に基づき動産甲をBのもとに持参して引き渡そうとしたが、Bがその受領を拒んだ場合、その後にA・B双方の責めに帰すことができない事由によって甲が滅失したときは、Bは、本件契約の解除をすることも、Aからの代金支払請求を拒絶することもできない。

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

債務不履行には、履行遅滞・履行不能・不完全履行の3つがあります。債務不履行があったとき、債権者は債務者に対して、損害の賠償を請求することができます(民法415条)。

ただし、債務者の責任とはいえない事由の場合は、債権者は損害賠償請求をすることができません。

選択肢1. 本件契約に「Cが亡くなった後に引き渡す」旨が定められていた場合、Cの死亡後にBから履行請求があったとしても、Aが実際にCの死亡を知るまではAの履行遅滞の責任は生じない。

誤りです

「Cが亡くなった後に引き渡す」という定めは、「不確定期限」です。

債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、①その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又は②その期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負います(民法412条2項)。

この場合、「Cの死亡後」に「Bから履行請求があった」として①に該当するため、履行遅滞の責任を負います。

選択肢2. 動産甲が、契約締結前に生じた自然災害により滅失していたために引渡しが不能である場合、本件契約は、その成立の時に不能であるから、Aは、Bに履行の不能によって生じた損害を賠償する責任を負わない。

誤りです

契約時にすでに履行不能であっても、契約は有効となります。有効な契約である以上、履行不能の場合には損害を賠償する責任は負います。

選択肢3. 動産甲の引渡しについて、Aが履行補助者であるDを用いた場合、Dの過失により甲が滅失し引渡しができないときには、Aに当然に債務不履行責任が認められる。

誤りです

履行補助者の過失による履行不能については、Aに「当然に」債務不履行責任が認められるわけではありません。契約や債務の発生原因、取引上の社会通念に照らして履行補助者に帰責事由があるかで判断が変わります。履行補助者に帰責事由があると判断された場合には、債務者に債務不履行責任が発生します。

選択肢4. 動産甲が本件契約締結後引渡しまでの間にA・B双方の責めに帰すことができない事由によって滅失したときは、Aの引渡し債務は不能により消滅するが、Bの代金債務は消滅しないから、Bは、Aからの代金支払請求に応じなければならない。

誤りです

当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができます(民法536条1項)。

Aの引渡し債務は不能により消滅し、Bの代金債務も反対給付の履行なので拒絶することができます。

選択肢5. Aが本件契約に基づき動産甲をBのもとに持参して引き渡そうとしたが、Bがその受領を拒んだ場合、その後にA・B双方の責めに帰すことができない事由によって甲が滅失したときは、Bは、本件契約の解除をすることも、Aからの代金支払請求を拒絶することもできない。

正しいです

債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなします(民法413条の2第2項)。

また、債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、契約解除ができません(民法543条)。

さらに、債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができません(民法536条2項前段)。

そのため、この場合責任は買主Bにあるので、Bは契約解除をすることができず、反対給付を拒むこともできません。

まとめ

債務不履行があった場合、損害賠償責任や契約解除をすることができます。それぞれ債権者と債務者のどちらが負うかなど要件が異なりますので押さえておきましょう。

参考になった数11

02

相手方は債務不履行責任を追及でき、契約解除や損害賠償請求などが可能です。

選択肢1. 本件契約に「Cが亡くなった後に引き渡す」旨が定められていた場合、Cの死亡後にBから履行請求があったとしても、Aが実際にCの死亡を知るまではAの履行遅滞の責任は生じない。

誤り。

民法412条2項には、「債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う」としています。

よって、Aが実際にCの死亡を知らずとも、Bより請求があれば履行遅滞となるので誤りです。

選択肢2. 動産甲が、契約締結前に生じた自然災害により滅失していたために引渡しが不能である場合、本件契約は、その成立の時に不能であるから、Aは、Bに履行の不能によって生じた損害を賠償する責任を負わない。

誤り。

民法412条の2 2項には、「契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第415条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない」とあります。

(民法415条は債務不履行による損害賠償の請求ができる場合について定められています。)

よって、Aは履行不能によるBへの損害賠償責任を負います。

選択肢3. 動産甲の引渡しについて、Aが履行補助者であるDを用いた場合、Dの過失により甲が滅失し引渡しができないときには、Aに当然に債務不履行責任が認められる。

誤り。

民法415条1項ただし書きには、「その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」とあります。

問題文には、「Aに当然に債務不履行責任が認められる」とあり、認められない場合もある為誤りです。

選択肢4. 動産甲が本件契約締結後引渡しまでの間にA・B双方の責めに帰すことができない事由によって滅失したときは、Aの引渡し債務は不能により消滅するが、Bの代金債務は消滅しないから、Bは、Aからの代金支払請求に応じなければならない。

誤り。

民法536条1項には、「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる」とあります。

よって、BはAの引渡し債務不能を理由に代金支払い請求を拒むことができます。

選択肢5. Aが本件契約に基づき動産甲をBのもとに持参して引き渡そうとしたが、Bがその受領を拒んだ場合、その後にA・B双方の責めに帰すことができない事由によって甲が滅失したときは、Bは、本件契約の解除をすることも、Aからの代金支払請求を拒絶することもできない。

正しい。

民法413条の2 2項には、「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めの帰することができない事由によってその債務の履行が不能になったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす」とあります。

よって、Bは、本件契約の解除をすることも、Aからの代金支払い請求を拒絶することもできませんので、こちらが正しいです。

まとめ

債務不履行の3つの類型(履行遅滞、履行不能、不完全履行)のそれぞれの要件や効果の区別を押さえておきましょう。

参考になった数2

03

この問題のポイントは、民法412条2項、412条の2第2項、413条の2第2項、415条1項、536条1項の理解です。

民法412条2項は債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負うとされています。

民法412条の2第2項は契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第四百十五条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げないとされています。

民法413条の2第2項は債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなすとされています。

民法415条1項は債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでないとされています。

最後に民法536条1項は当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができるとされています。

 

以上の点を押さえて、解説をみていきましょう。

選択肢1. 本件契約に「Cが亡くなった後に引き渡す」旨が定められていた場合、Cの死亡後にBから履行請求があったとしても、Aが実際にCの死亡を知るまではAの履行遅滞の責任は生じない。

解説の冒頭より、債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負うとされています。

よって、本件契約に「Cが亡くなった後に引き渡す」旨が定められていた場合、Cの死亡後にBから履行請求があったか、Aが実際にCの死亡を知るまではAの履行遅滞の責任は生じないとなります。

選択肢2. 動産甲が、契約締結前に生じた自然災害により滅失していたために引渡しが不能である場合、本件契約は、その成立の時に不能であるから、Aは、Bに履行の不能によって生じた損害を賠償する責任を負わない。

解説の冒頭より、契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第四百十五条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げないとされています。

よって、動産甲が、契約締結前に生じた自然災害により滅失していたために引渡しが不能である場合、本件契約は、その成立の時に不能であっても、Aは、Bに履行の不能によって生じた損害を賠償する責任を負うとなります。

選択肢3. 動産甲の引渡しについて、Aが履行補助者であるDを用いた場合、Dの過失により甲が滅失し引渡しができないときには、Aに当然に債務不履行責任が認められる。

解説の冒頭より、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでないとされています。

よって、動産甲の引渡しについて、Aが履行補助者であるDを用いた場合、Dの過失により甲が滅失し引渡しができないときには、Aに当然に債務不履行責任が認められるとは限らないとなります。

選択肢4. 動産甲が本件契約締結後引渡しまでの間にA・B双方の責めに帰すことができない事由によって滅失したときは、Aの引渡し債務は不能により消滅するが、Bの代金債務は消滅しないから、Bは、Aからの代金支払請求に応じなければならない。

解説の冒頭より、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができるとされています。

よって、動産甲が本件契約締結後引渡しまでの間にA・B双方の責めに帰すことができない事由によって滅失したときは、Aの引渡し債務は不能により消滅するが、Bの代金債務は消滅しないが、Bは、Aからの代金支払請求を拒むことができるとなります。

選択肢5. Aが本件契約に基づき動産甲をBのもとに持参して引き渡そうとしたが、Bがその受領を拒んだ場合、その後にA・B双方の責めに帰すことができない事由によって甲が滅失したときは、Bは、本件契約の解除をすることも、Aからの代金支払請求を拒絶することもできない。

解説の冒頭より、債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなすとされています。

よって、Aが本件契約に基づき動産甲をBのもとに持参して引き渡そうとしたが、Bがその受領を拒んだ場合、その後にA・B双方の責めに帰すことができない事由によって甲が滅失したときは、Bは、本件契約の解除をすることも、Aからの代金支払請求を拒絶することもできないとなります。

まとめ

この問題のように、条文知識を問う問題は必ず出るので、条文素読もやった方が良いでしょう。

参考になった数1