行政書士の過去問
令和4年度
法令等 問34
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問題
行政書士試験 令和4年度 法令等 問34 (訂正依頼・報告はこちら)
不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 未成年者が他人に損害を加えた場合、道徳上の是非善悪を判断できるだけの能力があるときは、当該未成年者は、損害賠償の責任を負う。
- 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、過失によって一時的にその状態を招いたとしても、損害賠償の責任を負わない。
- 野生の熊が襲ってきたので自己の身を守るために他人の宅地に飛び込み板塀を壊した者には、正当防衛が成立する。
- 路上でナイフを振り回して襲ってきた暴漢から自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ者には、緊急避難が成立する。
- 路上でナイフを持った暴漢に襲われた者が自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ場合、窓を壊された被害者は、窓を割った者に対して損害賠償を請求できないが、当該暴漢に対しては損害賠償を請求できる。
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この過去問の解説 (3件)
01
各問題が不法行為によるものか、賠償責任が発生するかをみていきます。
妥当ではありません。
未成年者は、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていない場合は、賠償責任を負いません。
妥当ではありません。
過失によって一時的に自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にあるというのは、例えば飲酒による酩酊状態などをいいます。
その際は、損害賠償責任を負います。
妥当ではありません。
正当防衛は、他人の不法行為に対し行う加害行為で、緊急避難は、他人の物から生じた緊迫した危難を避けるための物損です(民法720条)
よって、本問題は緊急避難になります。
妥当ではありません。
他人の不法行為による行為ですので、正当防衛となります。
妥当です。
正当防衛による加害行為は賠償責任を負いません。
しかし、被害者から不法行為者への損害賠償請求は可能です。
不法行為に基づく損害賠償請求の要件は、
加害者に責任能力がある、故意・過失がある、加害行為に違法性がある、損害が発生している、加害行為と損害発生に因果関係があるなどです。
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02
故意または過失により違法に他人に損害を与えた場合、加害者は被害者に対して損害賠償をしなければなりません。不法行為に基づく損害賠償請求権が発生する要件について検討していきましょう。
妥当ではありません
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負いません(民法712条)。
「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」とは、「加害行為の法律上の責任を弁識 するに足りるべき知能をいう」とされていて(判例:大判大6.4.30)裁判例上、11歳から13歳程度が基準とされています。「道徳上の是非善悪を判断できるだけの能力」では足りません。
妥当ではありません
精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負いません。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りではありません(民法713条)。
「故意又は過失によって」というのは、飲酒による酩酊状態などのことです。
妥当ではありません
正当防衛と緊急避難が成立した場合は損害賠償の責任を負いません。
<正当防衛>
他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負いません(民法720条1項)。
<緊急避難>
他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合、損害賠償の責任を負いません(民法720条2項)。
正当防衛は、不正な侵害に対して反撃をする状況のこと。緊急避難は、正当な第三者の権利または利益を犠牲にして自己の利益を守るという違いがあります。そのため、本肢の内容は正当防衛ではなく緊急避難に該当します。
妥当ではありません
正当防衛と緊急避難が成立した場合は損害賠償の責任を負いません。
<正当防衛>
他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負いません(民法720条1項)。
<緊急避難>
他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合、損害賠償の責任を負いません(民法720条2項)。
正当防衛は、不正な侵害に対して反撃をする状況のこと。緊急避難は、正当な第三者の権利または利益を犠牲にして自己の利益を守るという違いがあります。そのため、本肢の内容は緊急避難ではなく正当防衛に該当します。
妥当です
まず本肢のケースでは、正当防衛にあたるため窓を割った者は損害賠償の責任を負いません。
正当防衛や緊急避難による被害者は、不法行為をした者に対して損害賠償の請求をすることはできます(民法720条1項ただし書き、2項)。
不法行為責任の要件は、①加害者に故意または過失があること、②損害が発生していること、③他人の権利を侵害していること、④加害行為と損害との間に因果関係があること、⑤加害者に責任能力があること、⑥違法性阻却事由(緊急避難・正当防衛)がないことの6つです。
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03
この問題のポイントは、民法712条、713条、720条1項と2項の理解です。
まず、民法712条は未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わないとされています。
民法713条は精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでないとされています。
最後に民法720条1項は他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げないとされ、その2項は前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用するとされています。
以上の点をおさえて、解説を見ていきましょう。
解説の冒頭より、未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わないとされています。
よって、未成年者が他人に損害を加えた場合、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えているときは、当該未成年者は、損害賠償の責任を負うとなります。
解説の冒頭より、精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでないとされています。
よって、精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、過失によって一時的にその状態を招いた場合は、損害賠償の責任を負うとなります。
解説の冒頭より、他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わないとされています。
また、野生の熊は動物であり、法律的に物に該当するので、他人の不法行為に該当しません。
よって、野生の熊が襲ってきたので自己の身を守るために他人の宅地に飛び込み板塀を壊した者には、正当防衛が成立しないとなります。
解説の冒頭より、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わないとされています。
しかし、この緊急避難が成立するのは、他人の物が原因で、その物が損傷した場合です。
よって、路上でナイフを振り回して襲ってきた暴漢から自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ者には、緊急避難が成立しないとなります。
解説の冒頭より、他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げないとされています。
よって、路上でナイフを持った暴漢に襲われた者が自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ場合、窓を壊された被害者は、窓を割った者に対して損害賠償を請求できないが、当該暴漢に対しては損害賠償を請求できるとなります。
この問題で出てきた民法720条1項と2項のイメージ及び理解を深めるため、問題や解説を含め、何度か見直した方が良いでしょう。
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