行政書士の過去問
令和4年度
法令等 問35
このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。
問題
行政書士試験 令和4年度 法令等 問35 (訂正依頼・報告はこちら)
相続に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときを除き、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
- 相続人は、相続開始の時から、一身専属的な性質を有するものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するが、不法行為による慰謝料請求権は、被害者自身の精神的損害を填補するためのものであるから相続財産には含まれない。
- 相続財産中の預金債権は、分割債権であるから、相続開始時に共同相続人に対してその相続分に応じて当然に帰属し、遺産分割の対象とはならない。
- 相続開始後、遺産分割前に共同相続人の1人が、相続財産に属する財産を処分した場合、当該財産は遺産分割の対象となる相続財産ではなくなるため、残余の相続財産について遺産分割を行い、共同相続人間の不公平が生じたときには、別途訴訟等により回復する必要がある。
- 共同相続人は、相続の開始後3か月を経過した場合、いつでもその協議で遺産の全部または一部の分割をすることができる。
正解!素晴らしいです
残念...
この過去問の解説 (3件)
01
相続とは、被相続人の財産や債務などの権利および義務を引き継ぐことをいいます。
遺産分割は、法定相続分とは違う割合で相続財産を継承する話し合いです。
妥当です。
民法897条1項には、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が継承する。」とあります。
よって、問題文のとおり、妥当です。
妥当ではありません。
民法896条には、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を継承する」とあります。
また、最判昭和42年11月1日:慰藉料請求事件の判例では、「不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる」と解しています。
よって、問題文中「不法行為による慰謝料請求権が相続財産に含まれない」となっているので、妥当ではありません。
妥当ではありません。
最判平成28年12月19日:遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件での判例では、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」と解しています。
よって、問題文中、「遺産分割の対象とはならない」となっているため、妥当ではありません。
妥当ではありません。
民法906条の2 1項には、「遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる」とあります。
よって、問題文中、「遺産分割の対象となる相続財産ではなくなる」となっているため、妥当ではありません。
妥当ではありません。
民法907条1項には、「共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同上第二項の規定による分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる」とあります。
よって、問題文中「相続開始後3か月経過」する必要はないので、妥当ではありません。
相続は、高齢化社会と言われる現代において、よく触れられる内容が多くあります。
参考になった数14
この解説の修正を提案する
02
相続に関しては、相続人・遺言に関する法律関係について民法ではどのように規定されているのかを覚えておかなければなりません。
妥当です
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。 ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継します(民法897条1項)。
※前条の規定とは、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」という包括承継の規定のこと
つまり、祭祀主宰者は故人が生前に指定していた者があれば、その人に、指定がない場合は慣習に従って決められるということです。
妥当ではありません
前半部分は正しいです。
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。ただし、被相続人の一身に専属したものは、承継しません(民法896条)。
後半部分が間違っています。
被害者がこの請求権を放棄したものと解しうる特別の事情のない限り、生前に請求の意思を表明しなくても、その相続人は、当然にこの慰謝料請求権を相続します(判例:最大判昭42.11.1)。
つまり、不法行為による慰謝料請求権も相続の対象となります。
妥当ではありません
共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となります(判例:最大決平28.12.19)。
妥当ではありません
遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができます(民法906条の2第1項)。
処分された遺産も含めて遺産分割を行うことができ、別途訴訟等により回復する必要はありません。
妥当ではありません
共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合又は分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができます(民法907条1項)。
「相続の開始後3か月を経過した場合」という規定はありません。
相続では、相続人や相続分、遺言や遺留分などといった分野がよく出題されます。制度や仕組みをしっかり理解して暗記しましょう。
参考になった数2
この解説の修正を提案する
03
この問題のポイントは民法896条、897条1項、906条の2第1項、907条1項と判例最判昭42.11.1と最大決平28.12.19の理解です。
まず民法896条は相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでないとされています。
民法897条1項は系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継するとされています。
民法906条の2第1項は遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができるとされています。
民法907条1項は共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができるとされています。
次に最判昭42.11.1の争点は不法行為による慰藉料請求権は相続の対象となるかで、結論として不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となるとされています。
最後に最大決平28.12.19の争点は共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は遺産分割の対象となるかで、結論として共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるとされています。
以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。
解説の冒頭より、系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継するとされています。
よって、系譜、祭具及び墳墓の所有権は、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときを除き、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するとなります。
解説の冒頭より、不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となるとされています。
よって、相続人は、相続開始の時から、一身専属的な性質を有するものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継し、不法行為による慰謝料請求権も、被害者自身の精神的損害を填補するためのものであるが相続財産には含まれるとなります。
解説の冒頭より、共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるとされています。
よって、相続財産中の預金債権は、分割債権であるが、相続開始時に共同相続人に対してその相続分に応じて当然に帰属するわけでなく、遺産分割の対象とはなるとなります。
解説の冒頭より、遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができるとされています。
よって、相続開始後、遺産分割前に共同相続人の1人が、相続財産に属する財産を処分した場合、その全員の同意により、当該財産は遺産分割の対象となる相続財産であるとみなすことができるとなります。
解説の冒頭より、共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができるとされています。
よって、共同相続人は、原則として、いつでもその協議で遺産の全部または一部の分割をすることができるとなります。
この問題に出てきた判例は今後も出題される可能性があるので、一度見直してみるといいでしょう。
参考になった数0
この解説の修正を提案する
前の問題(問34)へ
令和4年度問題一覧
次の問題(問36)へ