行政書士の過去問 令和4年度 法令等 問36
この過去問の解説 (2件)
商法でいう「営業譲渡」は、一体としての商売全体を買い取るイメージです。営業譲渡があった場合には、商法で債権の引き渡し・債務の引き受けに関するルールが定められています。
誤りです
商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができます(商法15条1項)。前項の規定による商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができません(商法15条2項)。
登記が必要なのは、第三者に対抗する場合なので、当事者間では登記をしなくても営業の譲渡は有効です。
誤りです
営業を譲り受けた商人が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負います(商法17条1項)。
よって、前半部分の記載は正しいです。
ただし、このルールはが適用されない場合が商法17条2項で定められています。
営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用されません。営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人及び譲渡人から第三者に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、同様とします(商法17条2項)。
まず、譲受人の乙は甲の債務を弁済する責任を負わない旨の登記はしていません。また、通知に関しては譲渡人の甲と譲受人の乙の両方が通知をしなければなりませんが、問題文では「乙が第三者である丙に対して」とありますので、この要件を満たしていません。そのため、乙は原則通り責任を負うことになります。
誤りです
譲渡人(営業を譲り受けた商人)の営業によって生じた債権について、その譲受人にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときは、その効力を有します(商法17条4項)。
つまり、弁済者の丙は「善意」で「重過失がない」ことが必要になります。問題文は「丙の過失の有無を問わず」となっているため誤りです。
誤りです
譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡人の債権者は、その譲受人に対して弁済の請求をすることができます(商法18条1項)。
問題文の場合、乙が引き受ける旨の広告をした場合に「甲の弁済責任が消滅する」となっていますが、これが誤りです。この場合、丙は甲と乙のどちらにも請求が可能です。
なお、譲受人が前項の規定により譲渡人の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡人の責任は、同項の広告があった日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅します(商法18条2項)。
つまり、乙が債務を引き受ける旨の広告をしてから2年以内に丙が請求しない場合には、甲の弁済責任が消滅します。
正しいです
譲渡人が譲受人に承継されない債務の債権者(残存債務者)を害することを知って営業を譲渡した場合には、残存債権者は、その譲受人に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。ただし、その譲受人が営業の譲渡の効力が生じた時において残存債権者を害することを知らなかったときは、この限りではありません(商法18条の2第1項)。
問題文では「甲および乙」の両方が柄を害することを知っているため、丙は乙に対して履行を請求することができます。
商法の問題は毎年1問しか出題されませんが、基礎的な問題になります。条文に記載されている事項はしっかりと押さえておきましょう。
営業譲渡は会社全体ではなく事業の資産や負債のみを売買するM&A方式です。有形固定資産や流動資産、無形資産などが含まれます。
会社法では、同じ意味合いで事業譲渡と呼称されています。
誤り。
譲渡は、当事者間においての意思表示によって成立します。登記が必要なのは第三者対抗に対してです。
誤り。
甲の債務を弁済する責任を負わない旨の通知は、甲乙の両方から丙へ通知しなければなりません。
誤り。
丙が善意無過失である場合は効力を有します。
誤り。
広告をして2年以内は甲にも請求できます。(商法18条2項)
正しい。
損害を与えることを知りながら営業譲渡した場合は、その継承財産を上限として債務履行請求ができます。
商法は行政書士試験において出題が1問です。難易度はそれほど高くないですが、条文数と得点の効果を見れば優先順位は低いかもしれません。
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