問題
国家補償制度は、国家賠償と損失補償によって構成されるが、両者のいずれによっても救済されない問題が存在する。公務員の( ア )の違法行為による被害は、国家賠償法の救済の対象とはならず、他方、憲法29条3項によって求められる損失補償は、( イ )以外の権利利益についての被害には及ばないと考えられるからである。この救済の空白地帯は「国家補償の谷間」と呼ばれている。
「国家補償の谷間」の典型事例は予防接種による副反応被害である。この事例を損失補償により救済するアプローチは、( イ )よりも重要な利益である生命・身体の利益は、当然に憲法29条3項に規定する損失補償の対象となるとする( ウ )解釈によって、救済を図ろうとする。
これに対して、国家賠償による救済のアプローチをとる場合、予防接種の性質上、予診を尽くしたとしても、接種を受けることが適切でない者(禁忌者)を完全に見分けることが困難であり、医師による予診を初めとする公務員の行為は( ア )とされる可能性が残る。この点について、最高裁判所昭和51年9月30日判決は、予防接種により重篤な副反応が発生した場合に、担当医師がこうした結果を予見しえたのに、過
誤により予見しなかったものと( エ )することで、実質的に、自らが( ア )であることの立証責任を国側に負わせることで救済を図った。