行政書士の過去問
令和5年度
法令等 問2

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問題

行政書士試験 令和5年度 法令等 問2 (訂正依頼・報告はこちら)

法人等に関する次のア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

ア  いわゆる「権利能力なき社団」は、実質的には社団法人と同様の実態を有するが、法人格がないため、訴訟上の当事者能力は認められていない。
イ  法人は、営利法人と非営利法人に大別されるが、合名会社やそれと実質的に同様の実態を有する行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人は非営利法人である。
ウ  一般社団法人および一般財団法人は、いずれも非営利法人であることから、一切の収益事業を行うことはできない。
エ  公益社団法人および公益財団法人とは、一般社団法人および一般財団法人のうち、学術、技芸、慈善その他の法令で定められた公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業を行うことを主たる目的とし、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)から公益認定を受けた法人をいう。
オ  特定非営利活動法人(いわゆる「NPO 法人」)とは、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする保健、医療または福祉の増進その他の法令で定められた特定の活動を行うことを主たる目的とし、所轄庁(都道府県の知事または指定都市の長)の認証を受けて設立された法人をいう。
  • ア・ウ
  • ア・エ
  • イ・ウ
  • イ・オ
  • エ・オ

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この過去問の解説 (3件)

01

この問題のポイントは、法人についての法的知識です。

 

まず、法人とは、法によって法人格(権利能力)を認められた団体のことをいい、法によって法人格(権利能力)を認められない団体を権利能力なき社団といい、権利能力なき社団の例としてPTA等があります。

ただし、権利能力なき社団といえど、民事訴訟法第29条では法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができるとされているので、訴訟上の当事者能力は認められています。

 

次に法人をおおまかに分けると社団法人と財団法人の2つになります。

・社団法人

人の集団(社団)を基礎とする法人であり、その構成員である社員が存在します。

例として一般社団法人や会社です。

・財団法人

財産の集合体(財団)を基礎とする法人であり、財団法人に構成員はいません。

例として一般財団法人や学校法人があります。

 

さらに法人は営利法人と非営利法人の2つに分かれます。

・営利法人

営利を事業目的とする法人であり、代表例は会社です。

・非営利法人

営利を事業目的としない法人であり、例として一般社団法人やNPOがあります。

ただし、非営利法人も収益事業を営むことは可能です。

 

最後に公益社団法人・公益財団法人とは一般社団法人および一般財団法人のうち、学術、技芸、慈善その他の法令で定められた公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業を行うことを主たる目的とし、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)から公益認定を受けた法人をいい、特定非営利活動法人(いわゆる「NPO 法人」)とは、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする保健、医療または福祉の増進その他の法令で定められた特定の活動を行うことを主たる目的とし、所轄庁(都道府県の知事または指定都市の長)の認証を受けて設立された法人をいいます。

 

以上の点を押さえて、解説をみていきましょう。

選択肢1. ア・ウ

まず解説の冒頭より、社団法人は法人でありかつ権利能力があり、権利能力なき社団は法人ではなく、権利能力はないです。

また、民事訴訟法第29条より権利能力なき社団は訴訟上の当事者能力は認められます。

よって、アはいわゆる「権利能力なき社団」は、社団法人と異質の実態を有し、法人格がないが、訴訟上の当事者能力は認められているとなります。

 

次に解説の冒頭より、非営利法人も収益事業を営むことは可能です。

よって、ウは一般社団法人および一般財団法人は、いずれも非営利法人であるが、収益事業を行うことはできるとなります。

選択肢2. ア・エ

解説の冒頭より、公益社団法人・公益財団法人とは一般社団法人および一般財団法人のうち、学術、技芸、慈善その他の法令で定められた公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業を行うことを主たる目的とし、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)から公益認定を受けた法人をいいます。

よって、エは公益社団法人および公益財団法人とは、一般社団法人および一般財団法人のうち、学術、技芸、慈善その他の法令で定められた公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業を行うことを主たる目的とし、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)から公益認定を受けた法人をいうとなります。

選択肢3. イ・ウ

解説の冒頭より、合名会社は会社なので、営利法人となります。

また弁護士法人等は合名会社に準じた法人であるので、営利法人です。

よって、イは法人は、営利法人と非営利法人に大別されるが、合名会社やそれと実質的に同様の実態を有する行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人は営利法人であるとなります。

選択肢4. イ・オ

解説の冒頭より、特定非営利活動法人(いわゆる「NPO 法人」)とは、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする保健、医療または福祉の増進その他の法令で定められた特定の活動を行うことを主たる目的とし、所轄庁(都道府県の知事または指定都市の長)の認証を受けて設立された法人をいいます。

よって、オは特定非営利活動法人(いわゆる「NPO 法人」)とは、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする保健、医療または福祉の増進その他の法令で定められた特定の活動を行うことを主たる目的とし、所轄庁(都道府県の知事または指定都市の長)の認証を受けて設立された法人をいうとなります。

まとめ

法人に関する問題はよく出てくるので、過去問を解きながらポイントを押さえていきましょう。

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02

 法人等に関する出題です。

選択肢5. エ・オ

 前提として、民法33条1項により、「法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。」とされ、同条2項により、「学術、技芸、慈善、祭祀し、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。」とされ、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律2条1号により、「この法律において、公益社団法人の用語の意義は、4条の認定を受けた一般社団法人をいう。」とされ、同条2号により、「この法律において、公益財団法人の用語の意義は、4条の認定を受けた一般財団法人をいう。」とされ、同条3号により、「この法律において、公益法人の用語の意義は、公益社団法人又は公益財団法人をいう。」とされ、同条4号により、「この法律において、公益目的事業の用語の意義は、学術、技芸、慈善その他の公益に関する一定の種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。」とされ、同法4条により、「公益目的事業を行う一般社団法人又は一般財団法人は、行政庁の認定を受けることができる。」とされます。

 

 

 いわゆる「権利能力なき社団」は、実質的には社団法人と同様の実態を有するが、法人格がないため、訴訟上の当事者能力は認められていない。

 

 最高裁判所判決昭和39年10月15日で、判事事項により、「①法人に非ざる社団の成立要件、➁法人に非ざる社団の資産の帰属。」とされ、裁判要旨により、「①法人に非ざる社団が成立するためには、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要する、➁法人に非ざる社団がその名においてその代表者により取得した資産は、構成員に総有的に帰属するものと解すべきである。」とされ、最高裁判所判決平成14年6月7日で、判事事項により、「預託金会員制のゴルフクラブが民訴法29条にいう法人でない社団に当たるとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「預託金会員制のゴルフクラブにおいて、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、規約により代表の方法、総会の運営等が定められていること、同クラブには、固定資産又は基本的財産は存しないが、団体として内部的に運営され対外的にも活動するのに必要な収入の仕組みが確保され、かつ、規約に基づいて収支を管理する体制も備わっていること、同クラブが、ゴルフ場経営会社との間でゴルフ場の経営等に関する協約書を調印し、同会社や会員個人とは別個の独立した存在としての社会的実体を有していることなど判示の事情の下においては、上記クラブは、民訴法29条にいう法人でない社団に当たる。」とされます。

 つまり、「訴訟上の当事者能力は認められていない」という部分が、妥当ではありません。

 

 

 法人は、営利法人と非営利法人に大別されるが、合名会社やそれと実質的に同様の実態を有する行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人は非営利法人である。

 

 「合名会社やそれと実質的に同様の実態を有する行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人は非営利法人である」という部分が、妥当ではありません。営利法人です。

 

 

 一般社団法人および一般財団法人は、いずれも非営利法人であることから、一切の収益事業を行うことはできない。

 

 「一切の収益事業を行うことはできない」という部分が、妥当ではありません。収益事業を行うことができる場合があります。

 

 

 公益社団法人および公益財団法人とは、一般社団法人および一般財団法人のうち、学術、技芸、慈善その他の法令で定められた公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業を行うことを主たる目的とし、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)から公益認定を受けた法人をいう。

 

 妥当です。

 

 

 特定非営利活動法人(いわゆるNPO 法人)とは、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする保健、医療または福祉の増進その他の法令で定められた特定の活動を行うことを主たる目的とし、所轄庁(都道府県の知事または指定都市の長)の認証を受けて設立された法人をいう。

 

 妥当です。

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03

妥当であるのは、「エ・オ」です。

この問題では、法人に関する定義や特徴などを押さえていることが重要です。

 

以下の点がポイントとなります。

①社団法人・権利能力なき社団について

社団法人は法人ですが、権利能力なき社団は「法人のような実態を有しているものの、法律の規定により権利をもつことが認められているわけではない団体」であり、法人ではありません。

 

②権利能力なき社団の訴訟上の当事者能力について

民事訴訟法29条より、「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる」とあることから、代表者や管理人の定めがある場合は訴訟上の当事者能力が認められることになります。

 

③営利法人・非営利法人について

営利法人とは営利を事業目的とする法人のことです。例.会社

また、弁護士法人等は合名会社に準じた法人であり、営利法人として扱われます。

非営利法人は営利営利を事業目的としない法人のことです。例.一般社団法人、NPOなど

一般社団法人・一般財団法人は、非営利法人として扱われます。

非営利法人も収益事業を行うことは可能です。

 

④公益社団法人および公益財団法人とは

公益社団法人および公益財団法人とは、「一般社団法人および一般財団法人のうち、学術、技芸、慈善その他の法令で定められた公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業を行うことを主たる目的とし、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)から公益認定を受けた法人」をいいます。

 

⑤特定非営利活動法人(いわゆる「NPO 法人」)とは

特定非営利活動法人(いわゆる「NPO 法人」)とは、「不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする保健、医療または福祉の増進その他の法令で定められた特定の活動を行うことを主たる目的とし、所轄庁(都道府県の知事または指定都市の長)の認証を受けて設立された法人」をいいます。

 

選択肢別に、上記のポイントを参考にしながら詳細を解説していきます。

選択肢1. ア・ウ

・ア:誤り

冒頭の①より、権利能力なき社団は法人ではないため、問題文「同様の実態を有する」の部分が誤りです。

②より、権利能力なき社団の訴訟上の当事者能力が一律に認められないとする点で誤りです。

 

・ウ:誤り

③より、「収益事業を行うことはできない」とする点で誤りです。

選択肢2. ア・エ

・ア:誤り

問題文「同様の実態を有する」の部分が誤りです。

冒頭の①より、権利能力なき社団は法人ではありません。

また、②より、権利能力なき社団の訴訟上の当事者能力が一律に認められないとする点で誤りです。

 

・エ:正しい

④より、問題文中の通りです。

選択肢3. イ・ウ

・イ:誤り

③より、「行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人は非営利法人」とする点で誤りです。

 

・ウ:誤り

③より、「収益事業を行うことはできない」とする点で誤りです。
 

選択肢4. イ・オ

・イ:誤り

③より、「行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人は非営利法人」とする点で誤りです。

 

・オ:正しい

⑤より、問題文中の通りです。
 

選択肢5. エ・オ

・エ、オ:正しい

④、⑤より、問題文中の通りです。
 

まとめ

法人の定義、特徴に関する問題は頻出です。

違いを意識して押さえておきましょう。
 

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