行政書士の過去問
令和5年度
法令等 問5
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問題
行政書士試験 令和5年度 法令等 問5 (訂正依頼・報告はこちら)
罷免・解職に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 衆議院比例代表選出議員または参議院比例代表選出議員について、名簿を届け出た政党から、除名、離党その他の事由により当該議員が政党に所属する者でなくなった旨の届出がなされた場合、当該議員は当選を失う。
- 議員の資格争訟の裁判は、国権の最高機関である国会に認められた権能であるから、両院から選出された国会議員による裁判の結果、いずれかの議院の議員が議席を失った場合には、議席喪失の当否について司法審査は及ばない。
- 閣議による内閣の意思決定は、慣例上全員一致によるものとされてきたので、これを前提にすれば、衆議院の解散の決定にあたり反対する大臣がいるような場合には、当該大臣を罷免して内閣としての意思決定を行うことになる。
- 最高裁判所の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付されるが、その後、最高裁判所の長官に任命された場合は、任命後最初の衆議院議員総選挙の際に、長官として改めて国民の審査に付される。
- 裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されず、また、著しい非行があった裁判官を懲戒免職するためには、最高裁判所裁判官会議の全員一致の議決が必要である。
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この過去問の解説 (3件)
01
この問題のポイントは、憲法55条、78条、79条及び内閣の閣議の意思決定の慣例の理解です。
憲法55条1項では両議院は、各々その議長その他の役員を選任するとされ、2項では両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とするとされています。
次に憲法78条では、裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできないとされています。
憲法79条では、第1項で、最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命するとされ、第2項で
最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とするとされ、第3項では第2項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免されるとされています。
第4項では審査に関する事項は、法律でこれを定めるとされ、第5項では最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官するとされています。
第6項では最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができないとされています。
最後に内閣の閣議の意思決定の慣習では閣議の意思決定は全員一致の原則で行われていることと閣議の内容について高度の秘密が要求されることです。
また、憲法第68条第2項により内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができるとされています。
以上より、解説をみていきましょう。
まず衆議院比例代表選出議員または参議院比例代表選出議員について離党の場合、離党して無所属になるか又は当選した後にできた新党に移ったときは、当選を失わずに議員のままになります。
ただし、除名をされた場合は議員ではなくなります。
よって、衆議院比例代表選出議員または参議院比例代表選出議員について、名簿を届け出た政党から、除名で政党に所属する者でなくなった旨の届出がなされた場合、当該議員は当選を失うとなります。
解説の冒頭より、両議院は、各々その議長その他の役員を選任するとされ、2項では両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができるとされており、議員の資格争訟の裁判は両議院に認められた権能になります。
よって、議員の資格争訟の裁判は、両議院に認められた権能であるから、両院から選出された国会議員による裁判の結果、いずれかの議院の議員が議席を失った場合には、議席喪失の当否について司法審査は及ばないとなります。
解説の冒頭より、閣議の意思決定は全員一致の原則で行われており、憲法第68条第2項により内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができるとされています。
よって、閣議による内閣の意思決定は、慣例上全員一致によるものとされてきたので、これを前提にすれば、衆議院の解散の決定にあたり反対する大臣がいるような場合には、当該大臣を罷免して内閣としての意思決定を行うことになるとなります。
解説の冒頭より、憲法79条では、最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命するとされ、最高裁判所の長官に関してはそのあとの規定はありません。
よって、最高裁判所の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付されるとなります。
解説の冒頭より、憲法78条では、裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されないとされています。
よって、裁判官は、公の弾劾以外に心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合も罷免されるとなります。
この問題に出てくる、内閣の閣議決定の慣習や憲法78条、79条はよく出てくるので、それらに注意しながら過去問を解いていきましょう。
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02
罷免・解職に関する出題です。
衆議院比例代表選出議員または参議院比例代表選出議員について、名簿を届け出た政党から、除名、離党その他の事由により当該議員が政党に所属する者でなくなった旨の届出がなされた場合、当該議員は当選を失いません。
つまり、「当該議員は当選を失う」という部分が、妥当ではありません。
日本国憲法55条により、「両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。」とされます。
つまり、「国権の最高機関である国会に認められた権能であるから、両院から選出された国会議員による裁判の結果」という部分が、妥当ではありません。
日本国憲法68条2項により、「内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。」とされます。
つまり、「閣議による内閣の意思決定は、慣例上全員一致によるものとされてきたので、これを前提にすれば、衆議院の解散の決定にあたり反対する大臣がいるような場合には、当該大臣を罷免して内閣としての意思決定を行うことになる。」ということは、妥当です。
日本国憲法79条2項により、「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。」とされます。
つまり、「その後、最高裁判所の長官に任命された場合は、任命後最初の衆議院議員総選挙の際に、長官として改めて国民の審査に付される」という部分が、妥当ではありません。
日本国憲法78条により、「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。」とされます。
つまり、「裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されず、また、著しい非行があった裁判官を懲戒免職するためには、最高裁判所裁判官会議の全員一致の議決が必要である。」ということは、妥当ではありません。
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03
罷免・解職に関する問題です。
選択肢ごとに解説します。
1:妥当でない
国会法109条の2では、衆議院や参議院の比例代表選挙において、政党が名簿を提出して選挙に参加し、その名簿から当選した議員が、除名や離党などの事由によってその政党に所属しなくなった場合でも、他の政党に所属しなかった場合、当該議員は当選を失わないとされています。よって、本肢は妥当ではありません。
国会法109条の2では、衆議院や参議院の比例代表選挙で政党名簿から当選した議員が、離党して、他の政党に所属した場合、当選を失うとしています。
2:妥当でない
議員の資格争訟の裁判は、両議院に認められた権能です(憲法55条)。本肢は「国権の最高機関である国会に認められた権能」となっているので妥当ではありません。
ほか、資格争訟の裁判の結果、いずれかの議院の議員が議席を失った場合には、議席喪失の当否について司法審査は及ばない点は正しいです。
3:妥当
内閣は、行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負います(憲法66条3項)。そのため、閣議による内閣の意思決定は、慣例上、全員一致で行うものとされてきました。そして、内閣総理大臣は任意に大臣を罷免することができるため(憲法68条2項)、衆議院の解散の決定に反対する大臣がいる場合、内閣総理大臣は、その大臣を罷免して、内閣としての意思決定を行うこととなっています。
4:妥当でない
最高裁判所の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付されます(憲法79条2項)。しかし、その後、最高裁判所の「長官に任命」された場合に、任命後最初の衆議院議員総選挙で、「長官として改めて国民審査」を受けるわけではありません。よって、妥当ではありません。
5:妥当でない
裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾(弾劾裁判)によらなければ罷免されません(憲法78条)。
以上から、裁判官は、心身の故障のために職務を執ることができないと決定があれば、公の弾劾によらずに罷免されます。よって、本肢は「裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されず」が妥当ではありません。
出題率の高い分野ですのでしっかり押さえておきましょう。
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