行政書士の過去問
令和5年度
法令等 問19
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問題
行政書士試験 令和5年度 法令等 問19 (訂正依頼・報告はこちら)
行政事件訴訟法が定める抗告訴訟の対象に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、当該請求者の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有さないため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
- 行政庁が建築基準法に基づいて、いわゆるみなし道路を告示により一括して指定する行為は、特定の土地について個別具体的な指定をしたものではなく、一般的基準の定立を目的としたものにすぎず、告示による建築制限等の制限の発生を認めることができないので、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
- 労災就学援護費に関する制度の仕組みに鑑みると、被災労働者またはその遺族は、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するため、労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
- 市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、公の権威をもって住民の身分関係を証明し、それに公の証明力を与える公証行為であるから、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
- 都市計画法の規定に基づく用途地域指定の決定が告示された場合、その効力が生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され、これらの基準に適合しない建築物については建築確認を受けることができなくなる効果が生じるので、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
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この過去問の解説 (3件)
01
この問題のポイントは最判昭57.4.22、最判平11.1.21、最判平14.1.17、最判平15.9.4、最判平17.4.14の理解です。
これらの内容を以下にまとめます。
・最判昭57.4.22
この判例の争点は工場地域指定(用途地域の指定)の決定は抗告訴訟の対象となる行政処分となるかどうかです。
結果として、行政処分とならないとされ、理由としてこの決定の効果は不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできないとされました。
・最判平11.1.21
この判例の争点は市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるかどうかです。
結果として、当たらないとされ、理由は市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、が何らかの法的効果を有すると解すべき根拠はないからとされています。
・最判平14.1.17
この判例の争点は告示により一括して2項道路(みなし道路)を指定することは抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるかどうかです。
結果として、あたるとされ、告示によって2項道路(みなし道路)の指定の効果が生じるものと解する以上、このような指定の効果が及ぶ個々の道は2項道路(みなし道路)とされ、具体的な私権の制限を受けることになるからです。
・最判平15.9.4
この判例の争点は労働基準監督署が行う労災就学援護費の支給決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるかどうかです。
結果としてあたるとされ、理由は労働基準監督署が行う労災就学援護費の支給決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的な公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の権利に直積的影響を及ぼす法的効果を有するものであるからとされています。
・最判平17.4.14
この判例の争点は登記をした者が、登録免許税法31条2項に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求を登記機関が拒否通知した場合に、拒否通知は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるかどうかです。
結果として、あたるとされ、理由は登録免許税法31条2項は、登記をした者に対して、簡単に早く還付できる手続きを利用できることを保証しており、登録免許税法31条2項に基づく還付請求に対する拒否通知は登記機関が還付手続きをしないことを明らかにするものであるからとされています。
以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。
解説の冒頭より、登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は抗告訴訟の対象となる行政処分には当たるとされています。
よって、登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、当該請求者の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有すため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たるとされています。
解説の冒頭より、告示により一括して2項道路(みなし道路)を指定することは抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるとされており、告示によって2項道路(みなし道路)の指定の効果が生じるものと解する以上、このような指定の効果が及ぶ個々の道は2項道路(みなし道路)とされ、具体的な私権の制限を受けることになるとされております。
よって、行政庁が建築基準法に基づいて、いわゆるみなし道路を告示により一括して指定する行為は、特定の土地について個別具体的な指定をしたものであり、告示による建築制限等の制限の発生を認めることができるので、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たるとなります。
解説の冒頭より、労働基準監督署が行う労災就学援護費の支給決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるとされ、労働基準監督署が行う労災就学援護費の支給決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的な公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の権利に直積的影響を及ぼす法的効果を有するものであるとされています。
よって、労災就学援護費に関する制度の仕組みに鑑みると、被災労働者またはその遺族は、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するため、労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとなります。
解説の冒頭より、市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらないとされ、市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、が何らかの法的効果を有すると解すべき根拠はないからとされています。
よって、市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、公の権威をもって住民の身分関係を証明し、それに公の証明力を与える公証行為であるから、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有しないため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないとなります。
解説の冒頭より、工場地域指定の決定は不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできないとされています。
よって、都市計画法の規定に基づく用途地域指定の決定が告示された場合、その効力が生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され、これらの基準に適合しない建築物については建築確認を受けることができなくなる効果が生じるが、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないとなります。
この問題で出てくる判例は過去に出題実績のある判例なので、今回の解説は勿論、判例をしっかり復習した方が良いでしょう。
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02
行政事件訴訟法が定める抗告訴訟の対象に関する問題です。
選択肢別に解説していきます。
1:妥当でない
登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求をした。
これに対し、登記機関が拒否処分を下した。この場合の登記機関が行った拒否処分は、行政処分に当たります(最判平17.4.14)。
2:妥当でない
行政庁が建築基準法に基づいて、みなし道路(二項道路)を告示により一括して指定する行為は、
抗告訴訟の対象となる行政処分に当たります(最判平14.1.17)。
2項道路が指定されると、その敷地所有者は当該道路につき道路内の建築等が制限されるなど具体的な私権の制限を受けることになります。
そうすると、特定行政庁による2項道路(みなし道路)の指定は、それが一括指定の方法でされた場合であっても、
個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり、
個人の権利義務に対して直接影響を与えるものといえます。
そのため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たります。
3:妥当である
労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たります(最判平15.9.4)。
災労働者又はその遺族は、具体的に支給を受けるためには、労働基準監督署長に申請し、
所定の支給要件を具備していることの確認を受けなければなりません。
そして、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得します。
労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、
被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、
抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものといえます。
4:妥当でない
市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たりません(最判平11.1.21)。
なぜなら、住民票に「続柄」を記載する行為は、何らかの法的効果を有するものではないからです。
ちなみに、同じ判例の中で「市町村長が住民票に記載事項を記載する行為は、元来、公の権威をもって住民の居住関係に関するこれらの事項を証明し、それに公の証拠力を与えるいわゆる公証行為であり、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するものではない」と言っています。
よって、本肢は妥当ではありません。
5:妥当でない
都市計画法の規定に基づく用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たりません(最判昭57.4.22)。
都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法8条1項1号に基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては、
建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用されます。
しかし、これらの効果は、当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、
個別具体的な処分とは言えないので、処分性を有しません。
そのため、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たりません。
抗告訴訟の対象は比較しながらしっかり押さえておきましょう。
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03
行政事件訴訟法が定める抗告訴訟の対象に関する出題です。
行政事件訴訟法3条1項により、「この法律において抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。」とされ、同条2項により、「この法律において処分の取消しの訴えとは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。単に処分という。)の取消しを求める訴訟をいう。」とされ、同条3項により、「この法律において裁決の取消しの訴えとは、審査請求その他の不服申立て(単に審査請求という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(単に裁決という。)の取消しを求める訴訟をいう。」とされ、最高裁判所判決平成17年4月14日で、判事事項により、「 ①過大に登録免許税を納付して登記等を受けた者が登録免許税法(平成14年法律第152号による改正前のもの)31条2項所定の請求の手続によらないで過誤納金の還付を請求することの可否、➁登記等を受けた者が登録免許税法(平成14年法律第152号による改正前のもの)31条2項に基づいてした請求に対する登記機関の拒否通知と抗告訴訟の対象。」とされ、裁判要旨により、「①過大に登録免許税を納付して登記等を受けた者は、登録免許税法(平成14年法律第152号による改正前のもの)31条2項所定の請求の手続によらなくても、国税通則法56条に基づき,過誤納金の還付を請求することができる、➁登記等を受けた者が登録免許税法(平成14年法律第152号による改正前のもの)31条2項に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。」とされます。
つまり、「当該請求者の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有さないため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない」という部分が、妥当ではありません。
行政事件訴訟法3条1項により、「この法律において抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。」とされ、最高裁判所判決平成14年1月17日で、判事事項により、「告示により一括して指定する方法でされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定と抗告訴訟の対象。」とされ、裁判要旨により、「告示により一定の条件に合致する道を一括して指定する方法でされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。」とされます。
つまり、「特定の土地について個別具体的な指定をしたものではなく、一般的基準の定立を目的としたものにすぎず、告示による建築制限等の制限の発生を認めることができないので、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない」という部分が、妥当ではありません。
行政事件訴訟法3条1項により、「この法律において抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。」とされ、最高裁判所判決平成15年9月4日で、判事事項により、「労働基準監督署長が労働者災害補償保険法(平成11年法律第160号による改正前のもの)23条に基づいて行う労災就学援護費の支給に関する決定と抗告訴訟の対象。」とされ、裁判要旨により、「 労働基準監督署長が労働者災害補償保険法(平成11年法律第160号による改正前のもの)23条に基づいて行う労災就学援護費の支給に関する決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。」とされるので、妥当です。
行政事件訴訟法3条1項により、「この法律において抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。」とされ、国家賠償法1条1項により、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」とされ、最高裁判所判決平成11年1月21日で、判事事項により、「 ①市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為と抗告訴訟の対象、➁市長が住民票に非嫡出子の世帯主との続柄を子と記載した行為に国家賠償法1条1項にいう違法がないとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「 ①市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない、➁市長が住民票に非嫡出子の世帯主との続柄を子と記載した行為は、住民基本台帳の記載方法等に関して国が定めた右行為当時の住民基本台帳事務処理要領に、世帯主の嫡出子の続柄は長男、二女等と、非嫡出子のそれは子と記載することと定めており、当該市長もこれに従って当該続柄の記載をしたものであり、当該定めが明らかに住民基本台帳法の解釈を誤ったものということはできないなど判示の事情の下においては、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然とされたものとはいえず、当該行為には国家賠償法1条1項にいう違法がない。」とされます。
つまり、「公の権威をもって住民の身分関係を証明し、それに公の証明力を与える公証行為であるから、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる」という部分が、妥当ではありません。
行政事件訴訟法3条1項により、「この法律において抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。」とされ、最高裁判所判決昭和57年4月22日で、判事事項により、「都市計画法8条1項1号の規定に基づく工業地域指定の決定と抗告訴訟の対象。」とされ、裁判要旨により、「 都市計画法8条1項1号の規定に基づく工業地域指定の決定は、抗告訴訟の対象とならない。」とされます。
つまり、「これらの基準に適合しない建築物については建築確認を受けることができなくなる効果が生じるので、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる」という部分が、妥当ではありません。
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