行政書士の過去問
令和5年度
法令等 問28

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問題

行政書士試験 令和5年度 法令等 問28 (訂正依頼・報告はこちら)

Aが所有する甲土地(以下「甲」という。)につき、Bの所有権の取得時効が完成し、その後、Bがこれを援用した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
  • Bの時効完成前に、CがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Cに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することができる。
  • Bの時効完成後に、DがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Dに対して、Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときでも、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない。
  • Bの時効完成後に、EがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、その後さらにBが甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、Bは、Eに対し時効を援用すれば、時効による所有権取得をもって登記なくして対抗することができる。
  • Bの時効完成後に、FがAから甲につき抵当権の設定を受けてその登記を了した場合、Bは、抵当権設定登記後引き続き甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、BがFに対し時効を援用すれば、Bが抵当権の存在を容認していたなどの抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅する。
  • Bの時効完成後に、GがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Gに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することはできず、その際にBが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許されない。

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この過去問の解説 (3件)

01

この問題のポイントは、最判昭35.7.27、最判昭36.7.20、最判昭41.11.22、最判平18.1.17、最判平24.3.16の理解です。

これらの判例を以下にまとめます。

・最判昭35.7.27

この判例の争点は取得時効の時効期間の起算点で、結論として時効期間は、時効の基礎たる事実の開始された時を起算点として計算すべきもので、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできないとされました。

・最判昭36.7.20

この判例の争点は時効で不動産の所有権を取得した場合の対抗要件は何かで、不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが、第三者の右登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくとも時効取得をもつて対抗しうるものと解すべきであるとされています。

・最判昭41.11.22

この判例の争点は取得時効と登記で、不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができるとされています。

・最判平18.1.17

この判例の争点は不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した者が背信的悪意者に当たる場合で、甲が時効取得した不動産について,その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において,乙が,当該不動産の譲渡を受けた時に,甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており,甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは,乙は背信的悪意者に当たるとされ、背信的悪意者は民法177条の第三者に該当しないので、登記がなくとも時効取得を主張することができるとされています。

・最判平24.3.16

この判例の争点は不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合における,再度の取得時効の完成をしたら、抵当権は消滅するかどうかで、 不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において,上記不動産の時効取得者である占有者が,その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し,その期間の経過後に取得時効を授用したときは,上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り,上記占有者が,上記不動産を時効取得する結果,上記抵当権は消滅するとされています。

 

以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。

選択肢1. Bの時効完成前に、CがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Cに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することができる。

解説の冒頭より、不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができるとされています。

よって、Bの時効完成前に、CがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Cに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することができるとなります。

選択肢2. Bの時効完成後に、DがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Dに対して、Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときでも、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない。

解説の冒頭より、背信的悪意者は民法177条の第三者に該当しないので、登記がなくとも時効取得を主張することができるとされています。

よって、Bの時効完成後に、DがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Dに対して、Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときは、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできるとなります。

選択肢3. Bの時効完成後に、EがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、その後さらにBが甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、Bは、Eに対し時効を援用すれば、時効による所有権取得をもって登記なくして対抗することができる。

解説の冒頭より、不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが、第三者の右登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくとも時効取得をもつて対抗しうるものと解すべきであるとされています。

よって、Bの時効完成後に、EがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、その後さらにBが甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、Bは、Eに対し時効を援用すれば、時効による所有権取得をもって登記なくして対抗することができるとなります。

選択肢4. Bの時効完成後に、FがAから甲につき抵当権の設定を受けてその登記を了した場合、Bは、抵当権設定登記後引き続き甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、BがFに対し時効を援用すれば、Bが抵当権の存在を容認していたなどの抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅する。

解説の冒頭より、不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において,上記不動産の時効取得者である占有者が,その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し,その期間の経過後に取得時効を授用したときは,上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り,上記占有者が,上記不動産を時効取得する結果,上記抵当権は消滅するとされています。

よって、Bの時効完成後に、FがAから甲につき抵当権の設定を受けてその登記を了した場合、Bは、抵当権設定登記後引き続き甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、BがFに対し時効を援用すれば、Bが抵当権の存在を容認していたなどの抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅するとなります。

選択肢5. Bの時効完成後に、GがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Gに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することはできず、その際にBが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許されない。

解説の冒頭より、不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえなく、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできないとされています。

よって、Bの時効完成後に、GがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Gに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することはできず、その際にBが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許されないとなります。

まとめ

この問題で出てくる判例は度々行政書士試験に出てくるので、もう一度今回の判例を復習した方が良いでしょう。

参考になった数8

02

取得時効・物権変動に関する出題です。

選択肢ごとに解説いたします。

選択肢1. Bの時効完成前に、CがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Cに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することができる。

妥当です。

時効取得者は、登記がなくても、時効完成前の第三者に対し、権利を主張することができます(大判大正7.3.2)。よって、時効取得者Bは、登記がなくても、時効完成前の第三者であるCに対して時効による所有権取得を対抗することができるので、本肢は妥当です。

選択肢2. Bの時効完成後に、DがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Dに対して、Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときでも、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない。

誤りです。

時効取得者と時効完成後の第三者は、二重譲渡の対抗関係となり、時効取得者は、登記を備えなければ「時効完成後の第三者D」に対して、時効取得を対抗することができません(大連判大正14.7.8)。しかし、「時効完成後の第三者D」が背信的悪意者の場合は、例外的に、時効取得者は登記がなくても時効取得を対抗することができます(最判昭和43.8.2)。よって、時効完成後の第三者Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情がある場合、時効取得者Bは、登記がなくても、時効による所有権取得を対抗することができるので、本肢は「登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない」が妥当ではありません。

選択肢3. Bの時効完成後に、EがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、その後さらにBが甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、Bは、Eに対し時効を援用すれば、時効による所有権取得をもって登記なくして対抗することができる。

妥当です。

時効取得者と時効完成後の第三者は、二重譲渡の対抗関係となり、時効取得者は、登記を備えなければ「時効完成後の第三者E」に対して、時効取得を対抗することができません(大連判大正14.7.8)。ここまでは選択肢2と同じです。しかし、時効取得者が、時効完成後の第三者の登記後に、再度、取得時効の要件を満たしたとき(再度、取得時効の成立に必要な期間継続したとき)は、その第三者Eに対し、登記がなくても、権利を主張することができます(最判昭和36.7.20)。よって、時効取得者Bは、時効完成後の第三者であるEに対し時効を援用すれば、時効による所有権取得を登記なくして、対抗することができるので、妥当です。

選択肢4. Bの時効完成後に、FがAから甲につき抵当権の設定を受けてその登記を了した場合、Bは、抵当権設定登記後引き続き甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、BがFに対し時効を援用すれば、Bが抵当権の存在を容認していたなどの抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅する。

妥当です。

Bの取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者Fが原所有者Aから抵当権の設定を受けて抵当権設定登記をした場合において、不動産の時効取得者である占有者Bが、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続したときは、占有者Bが抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、占有者Bは、不動産を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅します(最判平成24.3.16)。よって、Bが、再度、甲を時効取得すれば甲に設定されていたFの抵当権は消滅します。

選択肢5. Bの時効完成後に、GがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Gに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することはできず、その際にBが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許されない。

妥当です。

時効の起算点は占有開始時と決まっています。取得時効を援用する者は、その起算点を任意に(事由に)選択することはできません(最判昭和35.7.27)。よって、Bが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許されません。

まとめ

出題率の高い分野ですのでしっかり押さえておきましょう。

参考になった数0

03

 民法の規定および判例に関する出題です。

選択肢1. Bの時効完成前に、CがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Cに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することができる。

 民法144条により、「時効の効力は、その起算日にさかのぼる」とされ、同法162条1項により、「20間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」とされ、同条2項により、「10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」とされ、同法177条により、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」とされ、同法397条により、「債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。」とされ、最高裁判所判決昭和33年8月28日で、判事事項により、「不動産所有権の時効取得と対抗要件。」とされ、裁判要旨により、「時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、その善意であると否とを問わず、所有権の取得を対抗できない。」とされ、最高裁判所判決昭和35年7月27日で、判事事項により、「取得時効の時効期間の起算点。」とされ、裁判要旨により、「 時効期間は、時効の基礎たる事実の開始された時を起算点として計算すべきもので、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。」とされ、最高裁判所判決昭和36年7月20日で、判事事項により、「時効による不動産の所有権取得とその対抗要件。」とされ、裁判要旨により、「 不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが、第三者の当該登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくとも時効取得をもつて対抗しうるものと解すべきである。」とされ、最高裁判所判決昭和41年11月22日で、判事事項により、「取得時効と登記。」とされ、裁判要旨により、「不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる。」とされ、最高裁判所判決平成18年1月17日で、判事事項により、「不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した者が背信的悪意者に当たる場合。」とされ、裁判要旨により、「 甲が時効取得した不動産について、その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において、乙が、当該不動産の譲渡を受けた時に、甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは、乙は背信的悪意者に当たる。」とされ、最高裁判所判決平成24年3月16日で、判事事項により、「不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合における、再度の取得時効の完成と上記抵当権の消長。」とされ、裁判要旨により、「 不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において、上記不動産の時効取得者である占有者が、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し、その期間の経過後に取得時効を授用したときは、上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、上記占有者が、上記不動産を時効取得する結果、上記抵当権は消滅する。」とされるので、妥当です。

選択肢2. Bの時効完成後に、DがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Dに対して、Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときでも、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない。

 民法144条により、「時効の効力は、その起算日にさかのぼる」とされ、同法162条1項により、「20間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」とされ、同条2項により、「10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」とされ、同法177条により、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」とされ、同法397条により、「債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。」とされ、最高裁判所判決昭和33年8月28日で、判事事項により、「不動産所有権の時効取得と対抗要件。」とされ、裁判要旨により、「時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、その善意であると否とを問わず、所有権の取得を対抗できない。」とされ、最高裁判所判決昭和35年7月27日で、判事事項により、「取得時効の時効期間の起算点。」とされ、裁判要旨により、「 時効期間は、時効の基礎たる事実の開始された時を起算点として計算すべきもので、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。」とされ、最高裁判所判決昭和36年7月20日で、判事事項により、「時効による不動産の所有権取得とその対抗要件。」とされ、裁判要旨により、「 不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが、第三者の当該登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくとも時効取得をもつて対抗しうるものと解すべきである。」とされ、最高裁判所判決昭和41年11月22日で、判事事項により、「取得時効と登記。」とされ、裁判要旨により、「不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる。」とされ、最高裁判所判決平成18年1月17日で、判事事項により、「不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した者が背信的悪意者に当たる場合。」とされ、裁判要旨により、「 甲が時効取得した不動産について、その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において、乙が、当該不動産の譲渡を受けた時に、甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは、乙は背信的悪意者に当たる。」とされ、最高裁判所判決平成24年3月16日で、判事事項により、「不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合における、再度の取得時効の完成と上記抵当権の消長。」とされ、裁判要旨により、「 不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において、上記不動産の時効取得者である占有者が、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し、その期間の経過後に取得時効を授用したときは、上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、上記占有者が、上記不動産を時効取得する結果、上記抵当権は消滅する。」とされます。

 つまり、「Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときでも、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない」という部分が、妥当ではありません。

選択肢3. Bの時効完成後に、EがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、その後さらにBが甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、Bは、Eに対し時効を援用すれば、時効による所有権取得をもって登記なくして対抗することができる。

 民法144条により、「時効の効力は、その起算日にさかのぼる」とされ、同法162条1項により、「20間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」とされ、同条2項により、「10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」とされ、同法177条により、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」とされ、同法397条により、「債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。」とされ、最高裁判所判決昭和33年8月28日で、判事事項により、「不動産所有権の時効取得と対抗要件。」とされ、裁判要旨により、「時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、その善意であると否とを問わず、所有権の取得を対抗できない。」とされ、最高裁判所判決昭和35年7月27日で、判事事項により、「取得時効の時効期間の起算点。」とされ、裁判要旨により、「 時効期間は、時効の基礎たる事実の開始された時を起算点として計算すべきもので、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。」とされ、最高裁判所判決昭和36年7月20日で、判事事項により、「時効による不動産の所有権取得とその対抗要件。」とされ、裁判要旨により、「 不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが、第三者の当該登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくとも時効取得をもつて対抗しうるものと解すべきである。」とされ、最高裁判所判決昭和41年11月22日で、判事事項により、「取得時効と登記。」とされ、裁判要旨により、「不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる。」とされ、最高裁判所判決平成18年1月17日で、判事事項により、「不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した者が背信的悪意者に当たる場合。」とされ、裁判要旨により、「 甲が時効取得した不動産について、その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において、乙が、当該不動産の譲渡を受けた時に、甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは、乙は背信的悪意者に当たる。」とされ、最高裁判所判決平成24年3月16日で、判事事項により、「不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合における、再度の取得時効の完成と上記抵当権の消長。」とされ、裁判要旨により、「 不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において、上記不動産の時効取得者である占有者が、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し、その期間の経過後に取得時効を授用したときは、上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、上記占有者が、上記不動産を時効取得する結果、上記抵当権は消滅する。」とされるので、妥当です。

選択肢4. Bの時効完成後に、FがAから甲につき抵当権の設定を受けてその登記を了した場合、Bは、抵当権設定登記後引き続き甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、BがFに対し時効を援用すれば、Bが抵当権の存在を容認していたなどの抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅する。

 民法144条により、「時効の効力は、その起算日にさかのぼる」とされ、同法162条1項により、「20間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」とされ、同条2項により、「10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」とされ、同法177条により、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」とされ、同法397条により、「債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。」とされ、最高裁判所判決昭和33年8月28日で、判事事項により、「不動産所有権の時効取得と対抗要件。」とされ、裁判要旨により、「時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、その善意であると否とを問わず、所有権の取得を対抗できない。」とされ、最高裁判所判決昭和35年7月27日で、判事事項により、「取得時効の時効期間の起算点。」とされ、裁判要旨により、「 時効期間は、時効の基礎たる事実の開始された時を起算点として計算すべきもので、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。」とされ、最高裁判所判決昭和36年7月20日で、判事事項により、「時効による不動産の所有権取得とその対抗要件。」とされ、裁判要旨により、「 不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが、第三者の当該登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくとも時効取得をもつて対抗しうるものと解すべきである。」とされ、最高裁判所判決昭和41年11月22日で、判事事項により、「取得時効と登記。」とされ、裁判要旨により、「不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる。」とされ、最高裁判所判決平成18年1月17日で、判事事項により、「不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した者が背信的悪意者に当たる場合。」とされ、裁判要旨により、「 甲が時効取得した不動産について、その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において、乙が、当該不動産の譲渡を受けた時に、甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは、乙は背信的悪意者に当たる。」とされ、最高裁判所判決平成24年3月16日で、判事事項により、「不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合における、再度の取得時効の完成と上記抵当権の消長。」とされ、裁判要旨により、「 不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において、上記不動産の時効取得者である占有者が、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し、その期間の経過後に取得時効を授用したときは、上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、上記占有者が、上記不動産を時効取得する結果、上記抵当権は消滅する。」とされるので、妥当です。

選択肢5. Bの時効完成後に、GがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Gに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することはできず、その際にBが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許されない。

 民法144条により、「時効の効力は、その起算日にさかのぼる」とされ、同法162条1項により、「20間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」とされ、同条2項により、「10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」とされ、同法177条により、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」とされ、同法397条により、「債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。」とされ、最高裁判所判決昭和33年8月28日で、判事事項により、「不動産所有権の時効取得と対抗要件。」とされ、裁判要旨により、「時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、その善意であると否とを問わず、所有権の取得を対抗できない。」とされ、最高裁判所判決昭和35年7月27日で、判事事項により、「取得時効の時効期間の起算点。」とされ、裁判要旨により、「 時効期間は、時効の基礎たる事実の開始された時を起算点として計算すべきもので、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。」とされ、最高裁判所判決昭和36年7月20日で、判事事項により、「時効による不動産の所有権取得とその対抗要件。」とされ、裁判要旨により、「 不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが、第三者の当該登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくとも時効取得をもつて対抗しうるものと解すべきである。」とされ、最高裁判所判決昭和41年11月22日で、判事事項により、「取得時効と登記。」とされ、裁判要旨により、「不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる。」とされ、最高裁判所判決平成18年1月17日で、判事事項により、「不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した者が背信的悪意者に当たる場合。」とされ、裁判要旨により、「 甲が時効取得した不動産について、その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において、乙が、当該不動産の譲渡を受けた時に、甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは、乙は背信的悪意者に当たる。」とされ、最高裁判所判決平成24年3月16日で、判事事項により、「不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合における、再度の取得時効の完成と上記抵当権の消長。」とされ、裁判要旨により、「 不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において、上記不動産の時効取得者である占有者が、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し、その期間の経過後に取得時効を授用したときは、上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、上記占有者が、上記不動産を時効取得する結果、上記抵当権は消滅する。」とされるので、妥当です。

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