行政書士の過去問 令和5年度 法令等 問29
この過去問の解説 (1件)
この問題のポイントは、最判昭54.2.15、最判昭62.11.10、最判平18.7.20、最判平30.12.7の理解です。
以下にこれらの判例のポイントについてまとめました。
・最判昭54.2.15
この判例の争点は構成部分が変動する集合動産を譲渡担保の目的とすることができるかどうかで、結論として構成部分の変動する集合動産であつても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうるとされています。
・最判昭62.11.10
この判例の争点は譲渡担保権の設定後に構成部分が変動した後の集合動産にも、譲渡担保権の効力は及ぶかどうかで、結論として、構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶとされています。
また、集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至つたものということができ、この対抗要件具備の 効力は、その後構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれな い限り、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物について及ぶものと解 すべきであるとされています。
最後に構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができるとされています。
・最判平18.7.20
この判例の争点は譲渡担保権の設定後であっても、設定者が通常の営業の範囲に超える売り方をした場合、処分の相手方は、動産の所有権を承継取得できるかどうかで、結果として、構成部分の変動する集合動産を目的とする対抗要件を備えた譲渡担保の設定者が,その目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合,当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り,当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないとされています。
・最判平30.12.7
この判例の争点は継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合に、買主が在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者が、売買代金が完済されていない動産について、売主に対して譲渡担保権を主張できるかどうかで、
結果として、継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合にこれは売主が買主に上記契約の売買代金を支払うための資金を確保させる趣旨であると解されることなど判示の事情の下においては、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者は、売買代金が完済されていない商品につき売主に上記譲渡担保権を主張することができないとされています。
以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。
解説の冒頭より、構成部分の変動する集合動産であつても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうるとされ、占有改定の方法によつて、譲渡担保権につき対抗要件を具備するという判例もあります。
よって、構成部分が変動する集合動産についても、その種類、場所および量的範囲が指定され、目的物の範囲が特定されている場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができ、当該集合物につき、AはBから占有改定の引渡しを受けることによって対抗要件が具備されるとなります。
解説の冒頭より、集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至つたものということができ、この対抗要件具備の 効力は、その後構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれな い限り、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物について及ぶものと解 すべきであるとされています。
よって、本件譲渡担保権の設定後に、Bが新たな家電製品乙(以下「乙」という。)を営業用に仕入れて甲倉庫内に搬入した場合であっても、集合物としての同一性が損なわれていない限り、本件譲渡担保権の効力は乙に及ぶとなります。
解説の冒頭より、構成部分の変動する集合動産を目的とする対抗要件を備えた譲渡担保の設定者が,その目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合,当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り,当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないとされています。
よって、本件譲渡担保権の設定後であっても、通常の営業の範囲に属する場合であれば、Bは甲倉庫内の在庫商品を処分する権限を有するとなります。
解説の冒頭より、構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができるとされています。
よって、甲倉庫内の在庫商品の中に、CがBに対して売却した家電製品丙(以下「丙」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丙の売買代金を支払わない場合、丙についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Cは丙について動産先取特権を行使することができないとなります。
解説の冒頭より、継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合にこれは売主が買主に上記契約の売買代金を支払うための資金を確保させる趣旨であると解されることなど判示の事情の下においては、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者は、売買代金が完済されていない商品につき売主に上記譲渡担保権を主張することができないとされています。
よって、甲倉庫内の在庫商品の中に、DがBに対して所有権留保特約付きの売買契約によって売却した家電製品丁(以下「丁」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丁の売買代金をDに支払わないときにはDに所有権が留保される旨が定められていた場合でも、丁についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Aは、Dに対して本件譲渡担保権を当然に主張することができないとなります。
この問題で出てきた最判平30.12.7は初の出題で今後も出てくるかもしれないので、一度この判例を読んだ方が良いでしょう。
また、今回出てきた判例は度々行政書士試験に出てくるので、判例を見直した方が良いでしょう。
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