行政書士の過去問
令和5年度
法令等 問29

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問題

行政書士試験 令和5年度 法令等 問29 (訂正依頼・報告はこちら)

Aが家電製品の販売業者のBに対して有する貸金債権の担保として、Bが営業用動産として所有し、甲倉庫内において保管する在庫商品の一切につき、Aのために集合(流動)動産譲渡担保権(以下「本件譲渡担保権」という。)を設定した。この場合に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当でないものはどれか。
  • 構成部分が変動する集合動産についても、その種類、場所および量的範囲が指定され、目的物の範囲が特定されている場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができ、当該集合物につき、AはBから占有改定の引渡しを受けることによって対抗要件が具備される。
  • 本件譲渡担保権の設定後に、Bが新たな家電製品乙(以下「乙」という。)を営業用に仕入れて甲倉庫内に搬入した場合であっても、集合物としての同一性が損なわれていない限り、本件譲渡担保権の効力は乙に及ぶ。
  • 本件譲渡担保権の設定後であっても、通常の営業の範囲に属する場合であれば、Bは甲倉庫内の在庫商品を処分する権限を有する。
  • 甲倉庫内の在庫商品の中に、CがBに対して売却した家電製品丙(以下「丙」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丙の売買代金を支払わない場合、丙についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Cは丙について動産先取特権を行使することができない。
  • 甲倉庫内の在庫商品の中に、DがBに対して所有権留保特約付きの売買契約によって売却した家電製品丁(以下「丁」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丁の売買代金をDに支払わないときにはDに所有権が留保される旨が定められていた場合でも、丁についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Aは、Dに対して本件譲渡担保権を当然に主張することができる。

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この過去問の解説 (3件)

01

この問題のポイントは、最判昭54.2.15、最判昭62.11.10、最判平18.7.20、最判平30.12.7の理解です。

以下にこれらの判例のポイントについてまとめました。

・最判昭54.2.15

この判例の争点は構成部分が変動する集合動産を譲渡担保の目的とすることができるかどうかで、結論として構成部分の変動する集合動産であつても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうるとされています。

・最判昭62.11.10

この判例の争点は譲渡担保権の設定後に構成部分が変動した後の集合動産にも、譲渡担保権の効力は及ぶかどうかで、結論として、構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶとされています。

また、集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至つたものということができ、この対抗要件具備の 効力は、その後構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれな い限り、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物について及ぶものと解 すべきであるとされています。

最後に構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができるとされています。

・最判平18.7.20

この判例の争点は譲渡担保権の設定後であっても、設定者が通常の営業の範囲に超える売り方をした場合、処分の相手方は、動産の所有権を承継取得できるかどうかで、結果として、構成部分の変動する集合動産を目的とする対抗要件を備えた譲渡担保の設定者が,その目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合,当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り,当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないとされています。

・最判平30.12.7

この判例の争点は継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合に、買主が在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者が、売買代金が完済されていない動産について、売主に対して譲渡担保権を主張できるかどうかで、

結果として、継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合にこれは売主が買主に上記契約の売買代金を支払うための資金を確保させる趣旨であると解されることなど判示の事情の下においては、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者は、売買代金が完済されていない商品につき売主に上記譲渡担保権を主張することができないとされています。

 

以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。

選択肢1. 構成部分が変動する集合動産についても、その種類、場所および量的範囲が指定され、目的物の範囲が特定されている場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができ、当該集合物につき、AはBから占有改定の引渡しを受けることによって対抗要件が具備される。

解説の冒頭より、構成部分の変動する集合動産であつても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうるとされ、占有改定の方法によつて、譲渡担保権につき対抗要件を具備するという判例もあります。

よって、構成部分が変動する集合動産についても、その種類、場所および量的範囲が指定され、目的物の範囲が特定されている場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができ、当該集合物につき、AはBから占有改定の引渡しを受けることによって対抗要件が具備されるとなります。

選択肢2. 本件譲渡担保権の設定後に、Bが新たな家電製品乙(以下「乙」という。)を営業用に仕入れて甲倉庫内に搬入した場合であっても、集合物としての同一性が損なわれていない限り、本件譲渡担保権の効力は乙に及ぶ。

解説の冒頭より、集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至つたものということができ、この対抗要件具備の 効力は、その後構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれな い限り、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物について及ぶものと解 すべきであるとされています。

よって、本件譲渡担保権の設定後に、Bが新たな家電製品乙(以下「乙」という。)を営業用に仕入れて甲倉庫内に搬入した場合であっても、集合物としての同一性が損なわれていない限り、本件譲渡担保権の効力は乙に及ぶとなります。

選択肢3. 本件譲渡担保権の設定後であっても、通常の営業の範囲に属する場合であれば、Bは甲倉庫内の在庫商品を処分する権限を有する。

解説の冒頭より、構成部分の変動する集合動産を目的とする対抗要件を備えた譲渡担保の設定者が,その目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合,当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り,当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないとされています。

よって、本件譲渡担保権の設定後であっても、通常の営業の範囲に属する場合であれば、Bは甲倉庫内の在庫商品を処分する権限を有するとなります。

選択肢4. 甲倉庫内の在庫商品の中に、CがBに対して売却した家電製品丙(以下「丙」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丙の売買代金を支払わない場合、丙についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Cは丙について動産先取特権を行使することができない。

解説の冒頭より、構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができるとされています。

よって、甲倉庫内の在庫商品の中に、CがBに対して売却した家電製品丙(以下「丙」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丙の売買代金を支払わない場合、丙についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Cは丙について動産先取特権を行使することができないとなります。

選択肢5. 甲倉庫内の在庫商品の中に、DがBに対して所有権留保特約付きの売買契約によって売却した家電製品丁(以下「丁」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丁の売買代金をDに支払わないときにはDに所有権が留保される旨が定められていた場合でも、丁についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Aは、Dに対して本件譲渡担保権を当然に主張することができる。

解説の冒頭より、継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合にこれは売主が買主に上記契約の売買代金を支払うための資金を確保させる趣旨であると解されることなど判示の事情の下においては、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者は、売買代金が完済されていない商品につき売主に上記譲渡担保権を主張することができないとされています。

よって、甲倉庫内の在庫商品の中に、DがBに対して所有権留保特約付きの売買契約によって売却した家電製品丁(以下「丁」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丁の売買代金をDに支払わないときにはDに所有権が留保される旨が定められていた場合でも、丁についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Aは、Dに対して本件譲渡担保権を当然に主張することができないとなります。

まとめ

この問題で出てきた最判平30.12.7は初の出題で今後も出てくるかもしれないので、一度この判例を読んだ方が良いでしょう。

また、今回出てきた判例は度々行政書士試験に出てくるので、判例を見直した方が良いでしょう。

参考になった数6

02

民法の譲渡担保に関する問題です。

選択肢ごとに解説します。

選択肢1. 構成部分が変動する集合動産についても、その種類、場所および量的範囲が指定され、目的物の範囲が特定されている場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができ、当該集合物につき、AはBから占有改定の引渡しを受けることによって対抗要件が具備される。

妥当です。

構成部分が変動する集合動産でも、種類、所在場所、量の範囲を指定するなどの方法により、目的物の範囲が特定される場合には、ひとつの集合物として、譲渡担保の目的にできます(最判昭54.2.15)また、構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有改定により取得した場合、譲渡担保権者は、譲渡担保権の対抗要件を備え、その効力は、新たにその構成部分となった動産を含む集合物に及びます(最判昭62.11.10)。つまり、構成部分が変動する集合動産についても、その種類、場所および量的範囲が指定され、目的物の範囲が特定されている場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができ、当該集合物につき、AはBから占有改定の引渡しを受けることによって対抗要件が具備されます。

選択肢2. 本件譲渡担保権の設定後に、Bが新たな家電製品乙(以下「乙」という。)を営業用に仕入れて甲倉庫内に搬入した場合であっても、集合物としての同一性が損なわれていない限り、本件譲渡担保権の効力は乙に及ぶ。

妥当です。

債権者と債務者との間に、集合物を目的とする譲渡担保権設定契約が締結され、その際に債権者が占有改定の方法により現に存在する動産の占有を取得した場合には、債権者は、当該集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備したことになり、譲渡担保権の効力は、その後、構成部分(倉庫にある在庫商品)が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となった動産を包含する集合物について、譲渡担保の効力が及びます(最判昭62.11.10)。よって、本肢は妥当です。

選択肢3. 本件譲渡担保権の設定後であっても、通常の営業の範囲に属する場合であれば、Bは甲倉庫内の在庫商品を処分する権限を有する。

妥当です。

構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保においては、集合物の内容が譲渡担保設定者の営業活動を通じて当然に変動することが予定されているのであるから、譲渡担保設定者には、その通常の営業の範囲内で、譲渡担保の目的を構成する動産を処分する権限が付与されており、この権限内でされた処分の相手方は、当該動産について、譲渡担保の拘束を受けることなく確定的に所有権を取得することができます(最判平18.7.20)。つまり、倉庫にある在庫商品について、動産譲渡担保契約を締結したとしても、譲渡担保設定者Bは、目的物の商品を通常の営業の範囲内で第三者に売却する権限をもっており、Bは、通常の営業の範囲内なら甲倉庫内の商品を処分(売却)することができます。

選択肢4. 甲倉庫内の在庫商品の中に、CがBに対して売却した家電製品丙(以下「丙」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丙の売買代金を支払わない場合、丙についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Cは丙について動産先取特権を行使することができない。

妥当です。

まず、先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができなくなります(民法333条)。 そして、動産売買の先取特権の存在する動産(先取特権が付いた動産)が、譲渡担保権の目的である集合物の構成部分となった場合(倉庫に入れられた場合)、債権者は、「先取特権の付いた動産」についても引渡を受けたものとして譲渡担保権を主張することができ、特段の事情のない限り、民法333条の第三取得者に該当します(最判昭62.11.10)。よって、先取特権者Cは、丙(先取特権が付いた動産)について動産先取特権を行使することができません。よって、本肢は妥当です。

選択肢5. 甲倉庫内の在庫商品の中に、DがBに対して所有権留保特約付きの売買契約によって売却した家電製品丁(以下「丁」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丁の売買代金をDに支払わないときにはDに所有権が留保される旨が定められていた場合でも、丁についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Aは、Dに対して本件譲渡担保権を当然に主張することができる。

誤りです。

選択肢1の解説の通り、占有改定で占有権を取得した場合、譲渡担保権者は、譲渡担保権の対抗要件を備えます(最判昭62.11.10)。つまり、丁についてAが既に占有改定による引渡しを受ければ、Aは、第三者に対して譲渡担保権を主張することはできます。しかし、継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主Dに留保される旨が定められた場合に、売主Dは買主Bに動産の転売を包括的に承諾していたが、これは売主が買主に契約の売買代金を支払うための資金を確保させる趣旨であり、売買代金が完済されていない動産については、Aは、売主Dに譲渡担保権を主張することができません(最判平30.12.7)。よって、本肢は、「丁についてAが既に占有改定による引渡しを受けていても、Aは、Dに対して本件譲渡担保権を当然に主張することはできない」ので妥当ではありません。

まとめ

出題率の高い分野ですのでしっかり押さえておきましょう。

参考になった数2

03

 本問の場合に関する出題です。

選択肢1. 構成部分が変動する集合動産についても、その種類、場所および量的範囲が指定され、目的物の範囲が特定されている場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができ、当該集合物につき、AはBから占有改定の引渡しを受けることによって対抗要件が具備される。

 民法85条により、「この法律において物とは、有体物をいう。」とされ、同法176条により、「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。」とされ、同法178条により、「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。」とされ、同法181条により、「占有権は、代理人によって取得することができる。」とされ、同法183条により、「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。」とされ、同法333条により、「先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。」とされ、同法369条1項により、「抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」とされ、同条2項により、「地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、一定の規定を準用する。」とされ、最高裁判所判決昭和54年2月15日で、判事事項により、「①構成部分の変動する集合動産と譲渡担保の目的、➁構成部分の変動する集合動産の譲渡担保につき目的物の範囲が特定されているとはいえないとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「①構成部分の変動する集合動産であつても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる、➁甲が、継続的倉庫寄託契約に基づき丙に寄託中の食用乾燥ネギフレーク44トン余りのうち28トンを乙に対する債務の譲渡担保とすること、乙はこれを売却処分することができることを約し、在庫証明の趣旨で丙が作成した預り証を乙に交付したが、乙も在庫を確認したにとどまり、その後処分のため乙に引き渡された当該乾燥ネギフレークの大部分は甲の工場から乙に直送され、残部は甲が丙から受け出して乙に送付したものであるなど判示の事実関係のもとでは、甲が乙に寄託中の当該乾燥ネギフレークのうち28トンを特定して譲渡担保に供したものとはいえない。」とされ、最高裁判所判決昭和62年11月10日で、判事事項により、「①構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権と動産売買先取特権に基づいてされた動産競売の不許を求める第三者異議の訴え、③構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において目的物の範囲が特定されているとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「①構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は当該譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、当該対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶ、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができる、③構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において、目的動産の種類及び量的範囲が普通棒鋼、異形棒鋼等一切の在庫商品と、その所在場所が譲渡担保権設定者の倉庫内及び同敷地、ヤード内と指定されているときは、目的物の範囲が特定されているものというべきである。」とされ、最高裁判所判決平成18年7月20日で、判事事項により、「 ①動産譲渡担保が重複設定されている場合における後順位譲渡担保権者による私的実行の可否、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保の設定者が目的動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合における処分の相手方による承継取得の可否。」とされ、裁判要旨により、「①動産譲渡担保が同一の目的物に重複して設定されている場合、後順位譲渡担保権者は私的実行をすることができない、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする対抗要件を備えた譲渡担保の設定者が、その目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。」とされ、最高裁判所判決平成30年12月7日で、判事事項により、「金属スクラップ等の継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合に、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者が、売買代金が完済されていない金属スクラップ等につき売主に上記譲渡担保権を主張することができないとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「 金属スクラップ等の継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合に,上記契約では,毎月21日から翌月20日までを一つの期間として、期間ごとに納品された金属スクラップ等の売買代金の額が算定され、一つの期間に納品された金属スクラップ等の所有権は、当該期間の売買代金の完済まで売主に留保されることが定められ、これと異なる期間の売買代金の支払を確保するために売主に留保されるものではないこと、売主は買主に金属スクラップ等の転売を包括的に承諾していたが、これは売主が買主に上記契約の売買代金を支払うための資金を確保させる趣旨であると解されることなど判示の事情の下においては、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者は、売買代金が完済されていない金属スクラップ等につき売主に上記譲渡担保権を主張することができない。」とされるので、妥当です。

選択肢2. 本件譲渡担保権の設定後に、Bが新たな家電製品乙(以下「乙」という。)を営業用に仕入れて甲倉庫内に搬入した場合であっても、集合物としての同一性が損なわれていない限り、本件譲渡担保権の効力は乙に及ぶ。

 民法85条により、「この法律において物とは、有体物をいう。」とされ、同法176条により、「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。」とされ、同法178条により、「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。」とされ、同法181条により、「占有権は、代理人によって取得することができる。」とされ、同法183条により、「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。」とされ、同法333条により、「先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。」とされ、同法369条1項により、「抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」とされ、同条2項により、「地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、一定の規定を準用する。」とされ、最高裁判所判決昭和54年2月15日で、判事事項により、「①構成部分の変動する集合動産と譲渡担保の目的、➁構成部分の変動する集合動産の譲渡担保につき目的物の範囲が特定されているとはいえないとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「①構成部分の変動する集合動産であつても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる、➁甲が、継続的倉庫寄託契約に基づき丙に寄託中の食用乾燥ネギフレーク44トン余りのうち28トンを乙に対する債務の譲渡担保とすること、乙はこれを売却処分することができることを約し、在庫証明の趣旨で丙が作成した預り証を乙に交付したが、乙も在庫を確認したにとどまり、その後処分のため乙に引き渡された当該乾燥ネギフレークの大部分は甲の工場から乙に直送され、残部は甲が丙から受け出して乙に送付したものであるなど判示の事実関係のもとでは、甲が乙に寄託中の当該乾燥ネギフレークのうち28トンを特定して譲渡担保に供したものとはいえない。」とされ、最高裁判所判決昭和62年11月10日で、判事事項により、「①構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権と動産売買先取特権に基づいてされた動産競売の不許を求める第三者異議の訴え、③構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において目的物の範囲が特定されているとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「①構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は当該譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、当該対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶ、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができる、③構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において、目的動産の種類及び量的範囲が普通棒鋼、異形棒鋼等一切の在庫商品と、その所在場所が譲渡担保権設定者の倉庫内及び同敷地、ヤード内と指定されているときは、目的物の範囲が特定されているものというべきである。」とされ、最高裁判所判決平成18年7月20日で、判事事項により、「 ①動産譲渡担保が重複設定されている場合における後順位譲渡担保権者による私的実行の可否、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保の設定者が目的動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合における処分の相手方による承継取得の可否。」とされ、裁判要旨により、「①動産譲渡担保が同一の目的物に重複して設定されている場合、後順位譲渡担保権者は私的実行をすることができない、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする対抗要件を備えた譲渡担保の設定者が、その目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。」とされ、最高裁判所判決平成30年12月7日で、判事事項により、「金属スクラップ等の継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合に、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者が、売買代金が完済されていない金属スクラップ等につき売主に上記譲渡担保権を主張することができないとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「 金属スクラップ等の継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合に,上記契約では,毎月21日から翌月20日までを一つの期間として、期間ごとに納品された金属スクラップ等の売買代金の額が算定され、一つの期間に納品された金属スクラップ等の所有権は、当該期間の売買代金の完済まで売主に留保されることが定められ、これと異なる期間の売買代金の支払を確保するために売主に留保されるものではないこと、売主は買主に金属スクラップ等の転売を包括的に承諾していたが、これは売主が買主に上記契約の売買代金を支払うための資金を確保させる趣旨であると解されることなど判示の事情の下においては、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者は、売買代金が完済されていない金属スクラップ等につき売主に上記譲渡担保権を主張することができない。」とされるので、妥当です。

選択肢3. 本件譲渡担保権の設定後であっても、通常の営業の範囲に属する場合であれば、Bは甲倉庫内の在庫商品を処分する権限を有する。

 民法85条により、「この法律において物とは、有体物をいう。」とされ、同法176条により、「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。」とされ、同法178条により、「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。」とされ、同法181条により、「占有権は、代理人によって取得することができる。」とされ、同法183条により、「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。」とされ、同法333条により、「先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。」とされ、同法369条1項により、「抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」とされ、同条2項により、「地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、一定の規定を準用する。」とされ、最高裁判所判決昭和54年2月15日で、判事事項により、「①構成部分の変動する集合動産と譲渡担保の目的、➁構成部分の変動する集合動産の譲渡担保につき目的物の範囲が特定されているとはいえないとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「①構成部分の変動する集合動産であつても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる、➁甲が、継続的倉庫寄託契約に基づき丙に寄託中の食用乾燥ネギフレーク44トン余りのうち28トンを乙に対する債務の譲渡担保とすること、乙はこれを売却処分することができることを約し、在庫証明の趣旨で丙が作成した預り証を乙に交付したが、乙も在庫を確認したにとどまり、その後処分のため乙に引き渡された当該乾燥ネギフレークの大部分は甲の工場から乙に直送され、残部は甲が丙から受け出して乙に送付したものであるなど判示の事実関係のもとでは、甲が乙に寄託中の当該乾燥ネギフレークのうち28トンを特定して譲渡担保に供したものとはいえない。」とされ、最高裁判所判決昭和62年11月10日で、判事事項により、「①構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権と動産売買先取特権に基づいてされた動産競売の不許を求める第三者異議の訴え、③構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において目的物の範囲が特定されているとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「①構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は当該譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、当該対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶ、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができる、③構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において、目的動産の種類及び量的範囲が普通棒鋼、異形棒鋼等一切の在庫商品と、その所在場所が譲渡担保権設定者の倉庫内及び同敷地、ヤード内と指定されているときは、目的物の範囲が特定されているものというべきである。」とされ、最高裁判所判決平成18年7月20日で、判事事項により、「 ①動産譲渡担保が重複設定されている場合における後順位譲渡担保権者による私的実行の可否、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保の設定者が目的動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合における処分の相手方による承継取得の可否。」とされ、裁判要旨により、「①動産譲渡担保が同一の目的物に重複して設定されている場合、後順位譲渡担保権者は私的実行をすることができない、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする対抗要件を備えた譲渡担保の設定者が、その目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。」とされ、最高裁判所判決平成30年12月7日で、判事事項により、「金属スクラップ等の継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合に、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者が、売買代金が完済されていない金属スクラップ等につき売主に上記譲渡担保権を主張することができないとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「 金属スクラップ等の継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合に,上記契約では,毎月21日から翌月20日までを一つの期間として、期間ごとに納品された金属スクラップ等の売買代金の額が算定され、一つの期間に納品された金属スクラップ等の所有権は、当該期間の売買代金の完済まで売主に留保されることが定められ、これと異なる期間の売買代金の支払を確保するために売主に留保されるものではないこと、売主は買主に金属スクラップ等の転売を包括的に承諾していたが、これは売主が買主に上記契約の売買代金を支払うための資金を確保させる趣旨であると解されることなど判示の事情の下においては、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者は、売買代金が完済されていない金属スクラップ等につき売主に上記譲渡担保権を主張することができない。」とされるので、妥当です。

選択肢4. 甲倉庫内の在庫商品の中に、CがBに対して売却した家電製品丙(以下「丙」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丙の売買代金を支払わない場合、丙についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Cは丙について動産先取特権を行使することができない。

 民法85条により、「この法律において物とは、有体物をいう。」とされ、同法176条により、「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。」とされ、同法178条により、「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。」とされ、同法181条により、「占有権は、代理人によって取得することができる。」とされ、同法183条により、「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。」とされ、同法333条により、「先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。」とされ、同法369条1項により、「抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」とされ、同条2項により、「地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、一定の規定を準用する。」とされ、最高裁判所判決昭和54年2月15日で、判事事項により、「①構成部分の変動する集合動産と譲渡担保の目的、➁構成部分の変動する集合動産の譲渡担保につき目的物の範囲が特定されているとはいえないとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「①構成部分の変動する集合動産であつても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる、➁甲が、継続的倉庫寄託契約に基づき丙に寄託中の食用乾燥ネギフレーク44トン余りのうち28トンを乙に対する債務の譲渡担保とすること、乙はこれを売却処分することができることを約し、在庫証明の趣旨で丙が作成した預り証を乙に交付したが、乙も在庫を確認したにとどまり、その後処分のため乙に引き渡された当該乾燥ネギフレークの大部分は甲の工場から乙に直送され、残部は甲が丙から受け出して乙に送付したものであるなど判示の事実関係のもとでは、甲が乙に寄託中の当該乾燥ネギフレークのうち28トンを特定して譲渡担保に供したものとはいえない。」とされ、最高裁判所判決昭和62年11月10日で、判事事項により、「①構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権と動産売買先取特権に基づいてされた動産競売の不許を求める第三者異議の訴え、③構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において目的物の範囲が特定されているとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「①構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は当該譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、当該対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶ、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができる、③構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において、目的動産の種類及び量的範囲が普通棒鋼、異形棒鋼等一切の在庫商品と、その所在場所が譲渡担保権設定者の倉庫内及び同敷地、ヤード内と指定されているときは、目的物の範囲が特定されているものというべきである。」とされ、最高裁判所判決平成18年7月20日で、判事事項により、「 ①動産譲渡担保が重複設定されている場合における後順位譲渡担保権者による私的実行の可否、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保の設定者が目的動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合における処分の相手方による承継取得の可否。」とされ、裁判要旨により、「①動産譲渡担保が同一の目的物に重複して設定されている場合、後順位譲渡担保権者は私的実行をすることができない、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする対抗要件を備えた譲渡担保の設定者が、その目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。」とされ、最高裁判所判決平成30年12月7日で、判事事項により、「金属スクラップ等の継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合に、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者が、売買代金が完済されていない金属スクラップ等につき売主に上記譲渡担保権を主張することができないとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「 金属スクラップ等の継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合に,上記契約では,毎月21日から翌月20日までを一つの期間として、期間ごとに納品された金属スクラップ等の売買代金の額が算定され、一つの期間に納品された金属スクラップ等の所有権は、当該期間の売買代金の完済まで売主に留保されることが定められ、これと異なる期間の売買代金の支払を確保するために売主に留保されるものではないこと、売主は買主に金属スクラップ等の転売を包括的に承諾していたが、これは売主が買主に上記契約の売買代金を支払うための資金を確保させる趣旨であると解されることなど判示の事情の下においては、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者は、売買代金が完済されていない金属スクラップ等につき売主に上記譲渡担保権を主張することができない。」とされるので、妥当です。

選択肢5. 甲倉庫内の在庫商品の中に、DがBに対して所有権留保特約付きの売買契約によって売却した家電製品丁(以下「丁」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丁の売買代金をDに支払わないときにはDに所有権が留保される旨が定められていた場合でも、丁についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Aは、Dに対して本件譲渡担保権を当然に主張することができる。

 民法85条により、「この法律において物とは、有体物をいう。」とされ、同法176条により、「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。」とされ、同法178条により、「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。」とされ、同法181条により、「占有権は、代理人によって取得することができる。」とされ、同法183条により、「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。」とされ、同法333条により、「先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。」とされ、同法369条1項により、「抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」とされ、同条2項により、「地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、一定の規定を準用する。」とされ、最高裁判所判決昭和54年2月15日で、判事事項により、「①構成部分の変動する集合動産と譲渡担保の目的、➁構成部分の変動する集合動産の譲渡担保につき目的物の範囲が特定されているとはいえないとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「①構成部分の変動する集合動産であつても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる、➁甲が、継続的倉庫寄託契約に基づき丙に寄託中の食用乾燥ネギフレーク44トン余りのうち28トンを乙に対する債務の譲渡担保とすること、乙はこれを売却処分することができることを約し、在庫証明の趣旨で丙が作成した預り証を乙に交付したが、乙も在庫を確認したにとどまり、その後処分のため乙に引き渡された当該乾燥ネギフレークの大部分は甲の工場から乙に直送され、残部は甲が丙から受け出して乙に送付したものであるなど判示の事実関係のもとでは、甲が乙に寄託中の当該乾燥ネギフレークのうち28トンを特定して譲渡担保に供したものとはいえない。」とされ、最高裁判所判決昭和62年11月10日で、判事事項により、「①構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権と動産売買先取特権に基づいてされた動産競売の不許を求める第三者異議の訴え、③構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において目的物の範囲が特定されているとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「①構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は当該譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、当該対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶ、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができる、③構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において、目的動産の種類及び量的範囲が普通棒鋼、異形棒鋼等一切の在庫商品と、その所在場所が譲渡担保権設定者の倉庫内及び同敷地、ヤード内と指定されているときは、目的物の範囲が特定されているものというべきである。」とされ、最高裁判所判決平成18年7月20日で、判事事項により、「 ①動産譲渡担保が重複設定されている場合における後順位譲渡担保権者による私的実行の可否、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保の設定者が目的動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合における処分の相手方による承継取得の可否。」とされ、裁判要旨により、「①動産譲渡担保が同一の目的物に重複して設定されている場合、後順位譲渡担保権者は私的実行をすることができない、➁構成部分の変動する集合動産を目的とする対抗要件を備えた譲渡担保の設定者が、その目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。」とされ、最高裁判所判決平成30年12月7日で、判事事項により、「金属スクラップ等の継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合に、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者が、売買代金が完済されていない金属スクラップ等につき売主に上記譲渡担保権を主張することができないとされた事例。」とされ、裁判要旨により、「 金属スクラップ等の継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合に,上記契約では,毎月21日から翌月20日までを一つの期間として、期間ごとに納品された金属スクラップ等の売買代金の額が算定され、一つの期間に納品された金属スクラップ等の所有権は、当該期間の売買代金の完済まで売主に留保されることが定められ、これと異なる期間の売買代金の支払を確保するために売主に留保されるものではないこと、売主は買主に金属スクラップ等の転売を包括的に承諾していたが、これは売主が買主に上記契約の売買代金を支払うための資金を確保させる趣旨であると解されることなど判示の事情の下においては、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者は、売買代金が完済されていない金属スクラップ等につき売主に上記譲渡担保権を主張することができない。」とされます。

 つまり、「Bが履行期日までに丁の売買代金をDに支払わないときにはDに所有権が留保される旨が定められていた場合でも、丁についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Aは、Dに対して本件譲渡担保権を当然に主張することができる」という部分が、妥当ではありません。

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