行政書士の過去問
令和5年度
法令等 問41_1

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問題

行政書士試験 令和5年度 法令等 問41_1 (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章の空欄( ア )に当てはまる語句を、以下の選択肢(1〜20)から選びなさい。

表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、( ア )の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって、表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ( イ )な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない。
出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであって、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが( ウ )に関する事項であるということができ、前示のような憲法21条1項の趣旨(略)に照らし、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら( エ )を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、・・・(中略)・・・例外的に事前差止めが許されるものというべきであ〔る〕(以下略)。
(最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁)
  • 名誉毀損
  • 公正な論評
  • 公共の安全
  • 私的自治
  • 公務の遂行
  • 公の批判
  • 実質的
  • 公益
  • 営利
  • 公正
  • 出版者の収益
  • 事実の摘示
  • 公共の利害
  • 国民の自己統治
  • 公権力の行使
  • 個別的
  • 合理的
  • 明確
  • 著者の自己実現
  • 公共の福祉

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題のポイントは、最大判昭61.6.11民集40巻4号872頁の内容の理解です。

この内容は以下の通りです。

表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現 物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させ る途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、公の批判の機会を減少さ せるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざる をえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、 実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであつて、表現行 為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法二一条の趣旨に照- 3 らし、厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければな らない。 出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであつて、 とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行 為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが公共の利害に関 する事項であるということができ、前示のような憲法二一条一項の趣旨(前記(二) 参照)に照らし、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に 保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、 原則として許されないものといわなければならない。ただ、右のような場合におい ても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないこ とが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があ るときは、当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかである うえ、有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから、かかる実体 的要件を具備するときに限つて、例外的に事前差止めが許されるものというべきで あり、このように解しても上来説示にかかる憲法の趣旨に反するものとはいえないとされています。

 

以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。

 

選択肢6. 公の批判

解説の冒頭より、表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現 物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させ る途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、公の批判の機会を減少さ せるものでありとされています。

よって、アに該当するのは公の批判になります。

まとめ

この問題で出てきた判例は過去に出題実績がありますが、本設問は過去問われてきたよりも難易度の高い設問となっています。

行政書士試験対策として、今後は過去問で出題された判例をチェックし、より深く判例の読み直しをした方が良いでしょう。

参考になった数2

02

憲法・多肢選択の問題です。

 

ア・・・公の批判

要約は下記の通りです。
「表現行為に対する事前抑制は、出版物や放送などの表現物が公の場に出る前に、その内容を抑止したり遅延させたりして、読者や聴衆に届く機会を減少させ、[ ア ]の機会を失わせるものである。また、事前抑制は予測に基づくため広範囲で行われ、濫用の可能性があります。実際には事後制裁よりも効果が高いと考えられます。」

表現物が公の場に出る前に、その内容を抑止したり遅延させたりすると、「①何かの機会を失わせ」また「②濫用の恐れを減らせる」と言っています。①②はいずれも、世間にとってマイナスとなることを失くしたり、減らすことができるということが分かります。すると、アは「公の批判」になります。

 

イ・・・明確

上記文章を要約すると下記の通りです。
「表現行為に対する事前抑制は、出版物や放送などが公に出る前にその内容を抑止し、読者や聴衆に届く機会を減少させ、批判も減らせるものです。事前抑制は予測に基づくため広範囲で行われ、濫用の可能性があります。実際には事後制裁よりも効果が高いと考えられ、

表現行為に対する事前抑制は、憲法21条の表現の自由を保障し検閲を禁止する趣旨に照らして、厳格かつ[ イ ]な要件の下でのみ許容される。」

つまり、事前抑制は事後制裁よりも効果が高いので、その分、制限が厳しいということです。そのため、事前抑制ができる要件は、厳格かつ[ イ ]でなければならず、厳格かつ[ イ ]な要件を満たす場合にのみ事前抑制は可能、と言っています。すると、イには「明確」が入ります。制限の効果が高いため、要件は、明確で、かつ、厳しくしないといけないです。

 

ウ・・・公共の利害

上記文章を要約すると下記の通りです。
「出版物の頒布等の事前差止めは、特に公務員や公職選挙の候補者に関する評価や批判などの表現に対するものであれば、一般的には[ ウ ]に関する事項であると見なされる。」

公務員等は、「公共サービス」を提供し、行政業務を遂行を行います。そのため公務員などに関する評価や批判などの表現自体が公共の利害にも影響します。そのため、ウは「公共の利害」となります。

 

エ・・・公益

どういった場合に、例外的に事前差止めが許されるのかを考えると
「表現内容」が「真実ではない」または「公益目的ではない」ことが明白であって、「被害者が回復困難な損害を被る可能性が高い場合」、事前差止めが例外的にできる、とすると妥当な文章になります。よって、エには「公益」が入ります。

 

 

まとめ

出題率の高い分野ですのでしっかり押さえておきましょう。

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