行政書士 過去問
令和6年度
問15 (法令等 問15)

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問題

行政書士試験 令和6年度 問15(法令等 問15) (訂正依頼・報告はこちら)

行政不服審査法(以下「行審法」という。)に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
  • 納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、または金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分については、行審法の規定は適用されない。
  • 行審法が審査請求の対象とする「行政庁の不作為」には、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がされていない場合も含まれる。
  • 地方公共団体の機関がする処分でその根拠となる規定が条例または規則に置かれているものについては、行審法の規定は適用されない。
  • 地方公共団体またはその機関に対する処分で、当該団体または機関がその固有の資格において処分の相手方となるものについては、行審法の規定は適用されない。
  • 行審法は、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める審査請求で、自己の法律上の利益にかかわらない資格でするものについても規定している。

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この過去問の解説 (2件)

01

行政不服審査法の適用除外事項(行政不服審査法7条各号)及び審査請求の対象たる行政行為に当たるか否か(処分性が認められるか)に関する問題です。

審査請求をするには、

1,法定の除外事項に当たらず

かつ、

2,審査請求で争うべき行政機関の行為か「行政庁の処分その他公権力の行使」に当たる事が求められます。

選択肢1. 納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、または金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分については、行審法の規定は適用されない。

×

原則として税を決定する処分は適用除外処分となります(行政不服審査法7条1項7号)。

しかし、一定額の納税を命ずる前提となる納税告知については行政庁の処分その他公権力の行使に当たるとした判例(最判45・12・14)があります。

つまり違法の評価を受ける可能性があり、審査請求の対象となり得ます。

選択肢2. 行審法が審査請求の対象とする「行政庁の不作為」には、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がされていない場合も含まれる。

×

行政不服審査法3条における不作為とは法令に基づく処分の申請を行ったにもかかわらず、相当の期間内に処分がされない事をいいます。

前提となる処分の申請を欠くので誤りとなります。

選択肢3. 地方公共団体の機関がする処分でその根拠となる規定が条例または規則に置かれているものについては、行審法の規定は適用されない。

×

行政不服審査法には本肢のような除外事由はありません(行政不服審査法7条)。

行政手続法には本肢のような除外事由があるため混同に注意してください(行政手続法3条3項)。

選択肢4. 地方公共団体またはその機関に対する処分で、当該団体または機関がその固有の資格において処分の相手方となるものについては、行審法の規定は適用されない。

「地方公共団体またはその機関に対する処分で、当該団体または機関がその固有の資格において処分の相手方となるもの」は行政不服審査法7条2項の除外事由に当たります。


 

選択肢5. 行審法は、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める審査請求で、自己の法律上の利益にかかわらない資格でするものについても規定している。

×

行政不服審査法にはそのような規定はありません。

行政不服審査法における審査請求は具体的な権利・利益に対する「処分」、及び申請に対する「不作為」についてその是正を求めるものです。

※行政事件訴訟法にはそのような訴訟類型が規定されています(行政事件訴訟法5条 民衆訴訟)。

まとめ

行政行為が行政不服審査法2条の「処分」に該当するかは行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使」同様に解することができます。

つまり取消訴訟の判例が参考になります。

行政不服審査法7条の除外事由も一読されることをお勧めします。

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02

本問は、行政不服審査法の適用不適用について、条文知識を問う問題です。


行政手続法の規定の文言でもっともらしい肢を用意して惑わしてるだけです。

行政不服審査法は、処分等に対する行政庁への不服申立ての原則となる一般法であり、概括主義により、原則としてすべての処分等に対して行政不服審査法による不服申し立てができます。

 

例外は第7条に規定するもので、概ねざっくりまとめると、

行政権以外が絡む行為
会計検査院の行為
民事訴訟又は刑事訴訟で争うべきもの
税又は金融商取引等に関する処分
学校又は刑務所等の教育又は矯正の機関の処分
外国人の入出国等
試験又は検定
行政不服審査法自体による処分
機関による機関に対する処分等

です。
 

行政不服審査には馴染まないだろうというものと専門性、技術性が高くて特別法による手当の方がよさそうなものが多いですね。
行審法自体による処分については、同じ手続きの繰り返しになるだけなので行政訴訟でけりを付けるということでしょう。

選択肢1. 納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、または金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分については、行審法の規定は適用されない。

妥当ではありません

 

行政不服審査法が適用されない処分及び不作為は、行政不服審査法第7条第1項各号に列挙されています。

 

行政不服審査法第7条第1項「次に掲げる処分及びその不作為については、第二条及び第三条の規定は、適用しない。

一 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分
二 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
三 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分
四 検査官会議で決すべきものとされている処分
五 当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの
六 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分
七 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、国税庁、国税局若しくは税務署の当該職員、税関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び金融商品取引の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて証券取引等監視委員会、その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。)、財務局長又は財務支局長がする処分
八 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分
九 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院又は少年鑑別所において、収容の目的を達成するためにされる処分
十 外国人の出入国又は帰化に関する処分
十一 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分
十二 この法律に基づく処分(第五章第一節第一款の規定に基づく処分を除く。)」

 

この中に、「納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、または金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分」はないので、当該処分に対して行政不服審査法は適用されます。


なお、この表現が出てくるのは、行政手続法第13条第2項第4号であり、同条第1項に定める意見陳述の手続を義務付ける規定の適用が除外されるものの一つです。

選択肢2. 行審法が審査請求の対象とする「行政庁の不作為」には、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がされていない場合も含まれる。

妥当ではありません

 

行政不服審査法により審査請求のできる「行政庁の不作為」は、法令に基づいて行政庁に処分の申請をしてから相当の期間経過したにもかかわらず何らの処分もない場合であり、法令に違反する事実が存在するにもかかわらず是正の措置が何ら執られない場合ではありません。

あくまでも何らかの申請をした人が、その申請に対する無応答について審査請求できるだけです。

 

行政不服審査法第3条「法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、次条の定めるところにより、当該不作為についての審査請求をすることができる。」

 


なお、「法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がされていない」という表現は、行政手続法第36条の3第1項の表現を一部改変したものです。

 

行政手続法第36条の3第1項「何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる。」
 

選択肢3. 地方公共団体の機関がする処分でその根拠となる規定が条例または規則に置かれているものについては、行審法の規定は適用されない。

妥当ではありません

 

行政不服審査法が適用されない処分及び不作為は、行政不服審査法第7条第1項各号に列挙されています。

 

行政不服審査法第7条第1項「次に掲げる処分及びその不作為については、第二条及び第三条の規定は、適用しない。

一 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分
二 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
三 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分
四 検査官会議で決すべきものとされている処分
五 当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの
六 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分
七 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、国税庁、国税局若しくは税務署の当該職員、税関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び金融商品取引の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて証券取引等監視委員会、その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。)、財務局長又は財務支局長がする処分
八 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分
九 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院又は少年鑑別所において、収容の目的を達成するためにされる処分
十 外国人の出入国又は帰化に関する処分
十一 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分
十二 この法律に基づく処分(第五章第一節第一款の規定に基づく処分を除く。)」

 

この中に、「地方公共団体の機関がする処分でその根拠となる規定が条例または規則に置かれているもの」はありませんから、当該処分には行政不服審査法が適用されます。

 


なお、この表現が出てくるのは、行政手続法第3条第3項であり、行政手続法のほとんどの規定の適用が除外される事由です。
 

選択肢4. 地方公共団体またはその機関に対する処分で、当該団体または機関がその固有の資格において処分の相手方となるものについては、行審法の規定は適用されない。

妥当です。よってこの肢が正解です。

 

行政不服審査法はあくまでも、国民の権利利益の回復を第一の目的とするものなので、機関に対する処分は対象外です。

 

同法第7条第2項「国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。」

 

行政不服審査法第1条第1項「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」

選択肢5. 行審法は、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める審査請求で、自己の法律上の利益にかかわらない資格でするものについても規定している。

妥当ではありません

 

行政不服審査は、あくまでも簡易迅速な手続きで、国民の権利利益の早期救済を図るものであり、行政の適正な運営の確保はあくまでもその限度で実現されるものに過ぎません。
そこで、行政事件訴訟法の民衆訴訟のような当事者の利益にかかわらない事案の処理は想定していません

 

行政不服審査法第1項第1項「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」

 

同法第2条「行政庁の処分に不服がある者は、第4条及び第5条第2項の定めるところにより、審査請求をすることができる。」

 

ここで言う「処分に不服がある者」とは、不服申立適格(当事者適格)のある者を意味します。

 

最判昭和53年3月14日(主婦連ジュース事件)裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan
「景表法の右条項にいう「第1項……の規定による公正取引委員会の処分について不服があるもの」とは、一般の行政処分についての不服申立の場合(行政不服審査法等による不服申立てのこと。筆者註)と同様に、当該処分について不服申立をする法律上の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう、と解すべきである」

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