行政書士 過去問
令和6年度
問24 (法令等 問24)
問題文
普通地方公共団体の条例または規則に関する次の記述のうち、地方自治法の定めに照らし、妥当なものはどれか。
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問題
行政書士試験 令和6年度 問24(法令等 問24) (訂正依頼・報告はこちら)
普通地方公共団体の条例または規則に関する次の記述のうち、地方自治法の定めに照らし、妥当なものはどれか。
- 普通地方公共団体の長が規則を定めるのは、法律または条例による個別の委任がある場合に限られる。
- 普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて条例を定めることができるが、条例において罰則を定めるためには、その旨を委任する個別の法令の定めが必要である。
- 普通地方公共団体は、特定の者のためにする事務につき手数料を徴収することができるが、この手数料については、法律またはこれに基づく政令に定めるものを除いて、長の定める規則によらなければならない。
- 普通地方公共団体の委員会は、個別の法律の定めるところにより、法令等に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を定めることができる。
- 普通地方公共団体は条例で罰則を設けることができるが、その内容は禁錮、罰金、科料などの行政刑罰に限られ、行政上の秩序罰である過料については、長が定める規則によらなければならない。
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この過去問の解説 (2件)
01
条例および規則制定権
普通地方公共団体には憲法上保障された条例制定権があります。
「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」(憲法94条)
また、委員会や長の規則制定権は法律により認められています。(地方自治法15条1項、138条の4 第2項)
×
「普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。」(地方自治法15条1項)
法律に抵触しない事は必要ですが、法律の委任は不要です。
×
「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」(地方自治法14条3項)
つまり法定の除外事項がない限り、上記の範囲での罰則を設けることができます。
×
「分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項については、条例でこれを定めなければならない。」(地方自治法228条)
長の規則で定めなければならないとしているので本肢は誤りとなります。
〇
普通地方公共団体の委員会は、法律の定めるところにより、法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができる。(地方自治法138条の4 第2項)
×
秩序罰とは軽微な義務違反に対し秩序維持のために過料という制裁をするものです。
長は規則で5万円以下の過料を科すことができます。
しかし「条例に違反した者に対し・・・5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」(地方自治法14条3項)とあるように条例で過料を科すこともできます。
条例は住民の代表者による地方議会により議決されて制定される民主的立法ではあるので、条例で権利を制限する場合の法律の委任の程度も「相当程度に具体的で限定」されていれば足ります。
(政令は行政立法である為、民主的基盤がありません。したがって、法律による「個別具体的な委任」を要します)
なお、法律の委任なしに条例で財産権を制限できます。(奈良県ため池条例事件 最判昭38・6・26)
憲法で法律と条令が抵触した際の処理も学習することをお勧めします。
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02
本問は地方公共団体の条例等について基本的な知識を問う問題です。
条文ほぼそのままの記述で、半分は常識でも正誤が判断できる問題です。
ところで本問は記述に問題があり、ありていに言って悪問です。
妥当ではありません。
法令に違反しない限り、普通地方公共団体の長は規則を定めることができます。
地方自治法第15条第1項「普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。」
常識的に考えて、行政規則の制定すべてに法令の委任が必要だとすると、硬直的過ぎで仕事にならないのは明らかでしょう。
妥当ではありません。
普通地方公共団体には条例制定権がありますが、地方自治法により、条例に罰則を設けることもある程度包括的に認められています。「個別の」法令による定めは必要ありません。
地方自治法第14条第3項「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」
ここから先は教養です。
条例による罰則の制定については憲法学上、議論があります。
まず、可能であることには争いがありません。
次に、法律による授権が必要でもそれが個別授権である必要はないということも争いがありません。
判例は、法律の授権が必要であるが、その内容は「相当に具体的」で「限定」されていれば良いとしています。これは理論上は、比較的許容範囲が狭い説です。罪刑法定主義との関係で、憲法第31条違反でないという結論を導くには一番都合がよいからかもしれません。
最大判昭和37年5月30日裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan
「憲法31条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものでなく、法律の授権によつてそれ以下の法令によつて定めることもできると解すべき……ただ、法律の授権が不特定な一般的の白紙委任的なものであつてはならない」
「条例によつて刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当」
妥当ではありません。
前段は妥当です。
普通地方公共団体が住民に対して行う特定の役務のための対価を徴収することは可能です。実際に役所に言って何か証明書等を取得しする際に手数料が必要なのは普通のことです。ただでやってもらえると思う方がどうかしています。
地方自治法第227条「普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体の事務で特定の者のためにするものにつき、手数料を徴収することができる。」
しかし、後段が妥当ではありません。
手数料は、一般論として条例で定めるのが基本です。
地方自治法第228条第1項前段「……手数料に関する事項については、条例でこれを定めなければならない。」
住民に負担させる金銭は基本的に議会が決めろというのは、まあ納得できるところでしょう。
なお、全国的に統一すべき手数料については、政令で定める金額を標準とすべきとされています。
同項後段「手数料について全国的に統一して定めることが特に必要と認められるものとして政令で定める事務(以下本項において「標準事務」という。)について手数料を徴収する場合においては、当該標準事務に係る事務のうち政令で定めるものにつき、政令で定める金額の手数料を徴収することを標準として条例を定めなければならない。」
なんでも好き勝手に決められるわけではないということです。
参考ですが、租税は法令の規定によることが必要です(租税法律主義。憲法第84条)。
手数料等が「固有の意義の租税」でないことは判例も指摘しているところですが、憲法第84条の「租税」に含まれるのかは憲法上、議論があります。
大雑把に言えば、手数料にもよるが、事実上強制されるようなものは、理論的には含まれることがありますし、判例的には、含まれないとしても憲法第84条の趣旨が及びます。
妥当とは言い切れないのですが、他の肢が明らかに妥当でないので一応妥当です。よってこの肢が正解とせざるを得ません。
地方自治法第138条の4第2項「普通地方公共団体の委員会は、法律の定めるところにより、法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができる。」
まず、「個別の法律の定めるところにより」とは条文には書いてありません。つまり、少なくとも法律上は、必ずしも「個別」である必要はありません。
次に、こちらこそが大問題なのですが、実は地方公共団体に設置される「委員会」は2種類あります。
一つは、地方自治法第109条により議会に設置することができる委員会で、国会の議院に設置される委員会と類似のものです。
もう一つは、地方自治法第138条の4第1項により「設置しなければならない」「執行機関としての委員会」、つまり行政委員会です。
本肢の記述は、地方自治法第138条の4第2項ほぼそのままなので、「委員会」とは同条第1項に定める「執行機関として」の委員会、すなわち行政委員会のことであると解すればいいのですが、もし仮に第109条の議会に「置くことができる」委員会だとすれば、少なくとも地方自治法に規則制定権の明確な規定はありません。
第138条の4第2項の「委員会」が第1項の「委員会」だけでなく第109条の「委員会」も含むという話は、聞いたことがありません。
その記述がほぼ条文の丸写しだとしても、その記述が当該条文についてのみの出題であると読まなければならない論理的根拠はありません。
この点特に、この肢は疑問があります。
妥当ではありません。
普通地方公共団体は条例で刑事罰だけでなく過料も定めることができます。
地方自治法第14条第3項「普通地方公共団体は、……その条例中に、条例に違反した者に対し、……刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」
同法第228条第2項「分担金、使用料、加入金及び手数料の徴収に関しては、……、条例で五万円以下の過料を科する規定を設けることができる。」
同条第3項「詐欺その他不正の行為により、分担金、使用料、加入金又は手数料の徴収を免れた者については、条例でその徴収を免れた金額の五倍に相当する金額(当該五倍に相当する金額が五万円を超えないときは、五万円とする。)以下の過料を科する規定を設けることができる。」
なお、普通地方公共団体の長も規則において過料を定めることができます。
地方自治法第15条第2項「普通地方公共団体の長は、……普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」
参考
科料と過料
科料とは、罰金刑と同じく刑事罰(財産刑)の一種であり、1000円以上1万円未満の金銭罰です。過料とは、刑事罰ではなく、「過料」という名をもって科される金銭罰です。過料の法的性質は、様々であり、条例、規則に定められる過料は、一般に秩序罰です。その他にも執行罰、懲戒罰としての過料があります。
科料も過料も、金銭的負担という意味では変わりはありませんが、法律上の扱いは明確に違います。
特に、過料は刑罰ではないので刑法総則、刑事訴訟法の適用がありません。非訟事件手続法と地方自治法が過料を科す一般的な手続規程になりますが、その他個別法令に定めがあります。
また、いわゆる前科にもなりません。
ただし、罪刑法定主義は過料においても適用されます。
なお、どちらも正式な読み方は「かりょう」で音では区別がつかないので、法律業界では「科(とが)料」「過(あやまち)料」と、いわゆる業界読みで区別することがあります。
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