行政書士 過去問
令和6年度
問25 (法令等 問25)

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問題

行政書士試験 令和6年度 問25(法令等 問25) (訂正依頼・報告はこちら)

公立学校をめぐる裁判に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア  公立高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分または退学処分を行った場合、裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきである。
イ  教育委員会が、公立学校の教頭で勧奨退職に応じた者を校長に任命した上で同日退職を承認する処分をした場合において、当該処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものといえないときは、校長としての退職手当の支出決定は財務会計法規上の義務に違反する違法なものには当たらない。
ウ  公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、当該施設の管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障がない場合であっても、学校施設の目的及び用途と当該使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により許可をしないこともできる。
エ  公立高等学校等の教職員に対し、卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令がなされた場合において、当該職務命令への違反を理由とする懲戒処分の差止めを求める訴えについて、仮に懲戒処分が反復継続的・累積加重的にされる危険があるとしても、訴えの要件である「重大な損害を生ずるおそれ」があるとは認められない。
オ  市立学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に転任させる処分を受けた場合において、当該処分が客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものであるとしても、当該教諭には転任処分の取消しを求める訴えの利益が認められる余地はない
  • ア・イ
  • ア・オ
  • イ・ウ
  • ウ・エ
  • エ・オ

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この過去問の解説 (1件)

01

公立学校をめぐる裁判

公立学校の教師や生徒についての裁判について問う問題です。

憲法から行政事件訴訟法まで広い範囲の知識が必要です。

 

選択肢1. ア・イ

ア ×

「裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべ きであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、 軽重等を論ずべきものではなく、校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである」(最判平8・3・8)

 

イ 〇

「本件昇格処分及び本件退職承認処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものとは解し得ないから、被上告人としては、東京都教育委員会が行った本件昇格処分及び本件退職承認処分を前提として、これに伴う所要の財務会計上の措置を採るべき義務があるものというべきであり、したがって、 被上告人のした本件支出決定が、その職務上負担する財務会計法規上の義務に違反してされた違法なものということはできない。」(最判4・12・15)

 

選択肢2. ア・オ

ア ×

「裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべ きであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、 軽重等を論ずべきものではなく、校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである」(最判平8・3・8)

 

オ ×

判例(最判昭61・10・23)は、「被上告人らの身分、俸給等に異動を生ぜしめるものでないことはもとより、客観的また実際的見地からみても、被上告人らの勤務場所、勤務内容等においてなんらの不利益を伴うものでないこと」および原状回復の不可能を理由に上告を破棄しています。

したがって当該処分が客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものである場合には訴えの利益が認められる余地があります。

 

選択肢3. イ・ウ

イ 〇

「本件昇格処分及び本件退職承認処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものとは解し得ないから、被上告人としては、東京都教育委員会が行った本件昇格処分及び本件退職承認処分を前提として、これに伴う所要の財務会計上の措置を採るべき義務があるものというべきであり、したがって、 被上告人のした本件支出決定が、その職務上負担する財務会計法規上の義務に違反してされた違法なものということはできない。」(最判4・12・15)

 

ウ 〇

「学校施設の目的外使用を許可するか否かは,原則として, 管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。」

「学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが,そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく,行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的,態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。」(最判平18・2・7)

選択肢4. ウ・エ

ウ 〇

「学校施設の目的外使用を許可するか否かは,原則として, 管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。」

「学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが,そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく,行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的,態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。」(最判平18・2・7)

 

エ ×

判例(最判平24・2・9)は仮に懲戒処分が反復継続的・累積加重的にされる危険がある場合について「累積する給与上の不利益や職務上の不利益は多大なものとなり,事後的な処分取消訴訟ではとても対応しきれない程度に達するものといえ,まさに回復が著しく困難な程度に至るといわざるを得ないものである。」とし、行訴法37条の4(差止めの訴え)の「重大な損害を生ずるおそれ」を認めました。

 

 

選択肢5. エ・オ

エ ×

判例(最判平24・2・9)は仮に懲戒処分が反復継続的・累積加重的にされる危険がある場合について「累積する給与上の不利益や職務上の不利益は多大なものとなり,事後的な処分取消訴訟ではとても対応しきれない程度に達するものといえ,まさに回復が著しく困難な程度に至るといわざるを得ないものである。」とし、行訴法37条の4(差止めの訴え)の「重大な損害を生ずるおそれ」を認めました。

 

オ ×

判例(最判昭61・10・23)は、「被上告人らの身分、俸給等に異動を生ぜしめるものでないことはもとより、客観的また実際的見地からみても、被上告人らの勤務場所、勤務内容等においてなんらの不利益を伴うものでないこと」および原状回復の不可能を理由に上告を破棄しています。

したがって当該処分が客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものである場合には訴えの利益が認められる余地があります。

 

まとめ

中々に難易度が高い問題ですが、個々の判例をケーススタディで学習することをお勧めします。

 

他の重要判例としては

・麹町中学校内申書事件

公立中学校長の作成にかかる調査書(いわゆる内申書)に特定団体の集会やビラ配りなどに参加した旨の記載がされ、生徒の思想・両親の自由が侵害されたとして争われた事件。

調査書の「行動及び性格の記録」欄は単なる事実の記載であって、これにより個人の思想・信条を了知することはできず、憲法19条を侵すものではないとしました。

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