管理栄養士の過去問
第31回
応用力問題 問190

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問題

第31回 管理栄養士国家試験 応用力問題 問190 (訂正依頼・報告はこちら)

次の文を読み問いに答えよ。

K病院に勤務する管理栄養士である。消化器内科病棟を担当して、入院患者の栄養管理を行っている。
患者は、19歳、男性。3年前にクローン病を発症して治療を受けたあとは寛解が続いていた。しかし、一週間前より腹痛と下痢が続くようになり、このたび下血が認められたため再入院となった。
身長172cm、体重60kg。空腹時血液検査値は、赤血球数370×104/mm3、ヘモグロビン10.2g/dL、ヘマトクリット36.0%、総たんぱく質6.6g/dL、アルブミン3.4g/dL、尿素窒素24mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、CRP2.5mg/dL。

この患者に対して、薬物治療とともに、経腸栄養剤を用いて栄養管理を行うことになった。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
  • 免疫賦活を目的とした栄養剤
  • 分枝アミノ酸(BCAA)が多い栄養剤
  • たんぱく質を制限した栄養剤
  • 窒素源がアミノ酸である栄養剤

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この過去問の解説 (3件)

01

クローン病は20歳前後の若者に多く、根治することは難しいが栄養療法が有効で、これにより再燃を防ぐことができます。
検査結果や症状などから、症状の悪化する再燃期であるとわかります。

1:炎症により体の代謝が更新するため、低栄養になりやすいクローン病では、高エネルギーの食事が基本です。
そのため免疫賦活の栄養剤は不適切です。

2:分岐鎖アミノ酸の多い栄養剤は肝硬変や肝不全で用いられる栄養剤です。

3:アルブミン低値であることからもタンパク質は不十分であり、補給が必要です。
クローン病では消化管の炎症により栄養素の吸収の妨げになり、貧血や低タンパク質が起こりやすいのです。

◎正解4:クローン病の再燃期の栄養は基本成分栄養剤でおこなわれます。
成分栄養剤はタンパク質(窒素源)はアミノ酸やペプチド、炭水化物はデキストリン、脂質はトリグリセリドが中心です。

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02

1.×
 免疫賦活を目的とした栄養剤とは、アルギニンやグルタミン、n-3系脂肪酸、核酸などの特殊栄養成分を複合配合した免疫増強栄養剤(IED)で、手術や外傷等侵襲を受けた患者に対して、免疫力の増強による感染症の発症予防や創傷治癒の促進等により予後を改善させることを目的としています。
 クローン病は自己免疫疾患の一つであると考えられており、免疫調製剤を用いた薬物療法をすることがあります。

2.×
 分枝アミノ酸とは、バリン、ロイシン、イソロイシンのことです。
 肝不全・肝硬変などに分枝アミノ酸が含まれる栄養剤を用います。

3.×
 この患者のアルブミン値は3.4g/㎗で、基準より低くなっています(基準値3.8~5.3g/㎗)。
 そのため、たんぱく質を制限した栄養剤は用いません。

4.○
 クローン病の活動期には、成分栄養剤を用います。
 成分栄養剤とは、経腸栄養剤の1種で、窒素源がアミノ酸のみから組成されたもので、消化管からの吸収が容易です。

参考になった数2

03

クローン病は、消化管全てに炎症がおこり、10代後半から20代前半の若年者に多く、根治が難しく再燃と寛解を繰り返す疾患です。

この問題の男性は、寛解後に腹痛と下痢が続くようになっているため再燃してしまったと考えられます。

1.×
免疫賦活栄養剤とは、免疫機能を活発化させるものです。しかし、クローン病では炎症によって代謝が亢進している状態のため、薬物療法として免疫抑制剤が使用されます。

2.×
分岐鎖アミノ酸(BCAA)ではなく成分栄養剤が望ましいとされています。クローン病では、吸収障害によって体重の減少や貧血、低たんぱく血症などになりやすくなっています。そのため、十分なエネルギーが必要になってきます。

成分栄養剤は、糖質を中心としてアミノ酸・ビタミン・ミネラルなどの栄養素がバランス良く体内で吸収されやすいかたちで含まれているため、クローン病に適した栄養剤だと言われています。

3.×
2.でも示した通り、クローン病では低たんぱく血症が起こります。よって、たんぱく質を制限した栄養剤は適していません。

4.〇
2.でも示した通り、成分栄養剤では窒素源(たんぱく源)が体内で吸収されやすいアミノ酸のかたちで含まれています。

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