管理栄養士の過去問
第37回
午前の部 問28

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

第37回 管理栄養士国家試験 午前の部 問28 (訂正依頼・報告はこちら)

肝疾患の検査に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
  • アルコール性肝炎では、血清γ−GT値は低下する。
  • ウイルス性慢性肝炎は、B型肝炎ウイルスによるものが最も多い。
  • 肝硬変では、血清コリンエステラーゼ値は上昇する。
  • 非代償期の肝硬変では、血液中のBCAA値が上昇する。
  • NASHの確定診断には、肝生検が必要である。

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

肝臓は物質代謝、ビリルビン代謝、薬物代謝など、生命にとって重要な活動を多くしています。

そのため、肝機能が低下した場合、血液生化学検査で異常所見として認められることが多いです。

どのような検査項目でどのような数値が出るのか理解しておくことが大切です。

選択肢1. アルコール性肝炎では、血清γ−GT値は低下する。

アルコール性肝炎では、血清γ−GT値は上昇します。

また、アルコールを飲まない場合でも肥満による脂肪肝などで高値になることがあります。

選択肢2. ウイルス性慢性肝炎は、B型肝炎ウイルスによるものが最も多い。

ウイルス性慢性肝炎は、C型肝炎ウイルスによるものが最も多いです。

C型肝炎ウイルスは輸血や血液を介した接触で感染します。

C型肝炎に罹った70%が慢性肝炎になるといわれています。

一方、B型肝炎ウイルスでは10%程度が慢性肝炎に進むとされています。

A型肝炎、E型肝炎ウイルスは慢性肝炎には移行しません。

選択肢3. 肝硬変では、血清コリンエステラーゼ値は上昇する。

肝硬変では、血清コリンエステラーゼ値は低下します。

コリンエステラーゼはアセチルコリンなどのコリンエステルをコリンと有機酸に加水分解する酵素で、肝臓、膵臓、血液、筋肉、神経などに多く存在します。

コリンエステラーゼは肝臓で合成されるため、合成能をみることは肝機能の評価に役立ちます。

また、脂肪代謝との関連もあるため、高コレステロール血症で高値になります。

選択肢4. 非代償期の肝硬変では、血液中のBCAA値が上昇する。

非代償期の肝硬変では、血液中のBCAA値は低下します。

肝臓の機能が代償維持されているものを代償期肝硬変、肝機能の代償維持ができなくなった状態のものを非代償期肝硬変といいます。

BCAAとは分岐鎖アミノ酸であり、肝機能が低下した代わりに筋肉でアンモニアが処理されますが、その時にBCAAが利用されます。

選択肢5. NASHの確定診断には、肝生検が必要である。

正しいです。

NASHとは非アルコール性脂肪肝炎のことです。

まとめ

肝疾患はさまざまな種類があるため、それぞれの特徴を理解しておく必要があります。

参考になった数29

02

肝臓栄養素の合成と貯蔵分解と解毒などの作用を持ちます。

働きが多いため疾患を引き起こす原因が多く、また及ぼす影響も様々です。

検査値や身体所見から肝臓不調の原因をきちんと理解することで解答を選ぶことができます。

選択肢1. アルコール性肝炎では、血清γ−GT値は低下する。

アルコール性肝炎ではγ₋GT(GPT)値は上昇します。

γ₋GTはたんぱく質を分解しアミノ酸を合成する酵素の一つで、飲酒量が多いときなどに値が上昇します。

選択肢2. ウイルス性慢性肝炎は、B型肝炎ウイルスによるものが最も多い。

ウイルス性慢性肝炎になりやすいのはC型肝炎ウイルスです。

C型肝炎は感染していても自覚症状が出にくく、そのまま自然完治する場合もあります。

しかし一方で症状が出ないまま慢性化し、肝硬変や肝がんに移行する場合もあります。

選択肢3. 肝硬変では、血清コリンエステラーゼ値は上昇する。

肝硬変ではコリンエステラーゼ値は低下します。

コリンエステラーゼは肝臓で作られる酵素の一つで、肝機能や脂肪代謝に関わっています。

肝臓で生成されるため、肝機能が低下するとコリンエステラーゼ値も低下します。

反対に、栄養過多による脂質異常症などでは血清コリンエステラーゼ値は上昇します。

選択肢4. 非代償期の肝硬変では、血液中のBCAA値が上昇する。

肝硬変非代償期では血中BCAA値は低下します。

肝硬変では、まだ症状が出ていない状態を代償期、症状が出てきた状態を非代償期と呼びます。

非代償期になると肝臓機能が低下するため、他の臓器で補うようになります。

そのうちアンモニア解毒処理は筋肉で行われるようになります。

BCAAは筋肉で代謝され、アンモニア解毒時にも消費されます。

そのため血中BCAA値は低下します。

選択肢5. NASHの確定診断には、肝生検が必要である。

正しいです。

NASH確定診断には肝生検が用いられます

肝生検とは肝臓組織の一部を取り出し、肝臓の状態や病気の状態を判断する医療手段です。

この肝生検で病理的に特徴的な所見を確認します。

まとめ

肝臓は特に働きが多い臓器です。

肝臓の働きは重要なものが多く、全て押さえておくことが重要になります。

参考になった数10

03

肝疾患についての問題です。

肝臓の機能や形態、血液検査値など覚えておきましょう。

選択肢1. アルコール性肝炎では、血清γ−GT値は低下する。

×

アルコール性肝炎では、血清γ-GT値は上昇します。

飲酒していない場合でも、一部の薬剤、脂肪肝、肝硬変などでも高値になります。

選択肢2. ウイルス性慢性肝炎は、B型肝炎ウイルスによるものが最も多い。

×

ウイルス性慢性肝炎は、C型肝炎ウイルスによるものが最も多く、70~80%を占めます。

B型肝炎ウイルスによるものは15~20%程度です。

選択肢3. 肝硬変では、血清コリンエステラーゼ値は上昇する。

×

肝硬変では、血清コリンエステラーゼ値は低下します。

低栄養状態でもコリンエステラーゼ値が低下し、肝機能の働きを示す指標となっています。

選択肢4. 非代償期の肝硬変では、血液中のBCAA値が上昇する。

×

非代償性肝硬変ではフィッシャー比が低下するため、血液中のBCAA値は低下します。

代償性肝硬変によるたんぱく質アミノ酸代謝異常により、筋肉のBCAA分解が進み

フィッシャー比が1.0以下(健常人3~4)となります。

選択肢5. NASHの確定診断には、肝生検が必要である。

NASHの確定診断には、肝生検が必要です。

まとめ

肝臓の機能は、代謝、栄養素の貯蔵、胆汁生成・排泄、解毒、生体防御があります。

肝硬変と肝炎、血液検査項目についても頻出なのでまとめておきましょう。

参考になった数2