管理栄養士の過去問
第37回
午後の部 問6
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問題
第37回 管理栄養士国家試験 午後の部 問6 (訂正依頼・報告はこちら)
飲酒量を減らすことを目的とした、中年男性への栄養教育である。支援内容と行動変容技法の組合せとして、最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 会社の飲み会で、飲酒量が多い人の隣には座らないように提案する。 ――――――――――――――――― ソーシャルスキルトレーニング
- お酒を飲みたくなったら、喉が渇いているだけだと自分に言い聞かせることを提案する。 ―――――――― 自己強化
- お酒を飲みに行く以外に、同僚とのコミュニケーションを図る方法を考えてもらう。 ―――――――――― 結果期待
- 週1回の休肝日にお酒を飲んだら、次の休肝日まで趣味のオンラインゲームをやらないことを提案する。 ― オペラント強化
- お酒を飲まないデメリットと、お酒を飲むデメリットを比べてもらう。 ―――――――――――――――― ストレスマネジメント
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この過去問の解説 (3件)
01
行動変容技法についての問題です。
刺激統制法にあたります。
「飲酒量が多い人」という刺激を遠ざけることで、飲酒という望ましくない行動を減らす効果が期待されます。
認知再構成にあたります。
ここでは「お酒を飲みたい」という不適切な認識を、「喉が渇いている」という認識に改めています。
ソーシャルスキルトレーニングにあたります。
円滑な人間関係を維持する技能(コミュニケーション方法など)を身につけることで、行動の頻度を調整する方法です。
ここではお酒を飲みに行く以外の方法でのコミュニケーション方法を考えることで、飲酒の機会を減らすことをねらっています。
正しい組合せです。
自らの行動後の刺激によって、その行動の頻度が変化することをいいます。
休肝日に飲酒をする(望ましくない行動)→趣味のオンラインゲームができない(負の刺激)→休肝日に飲酒をする行動が減る(望ましくない行動の抑制)という負の強化の例です。
ヘルスビリーフモデルの「罹患性/重大性の認知」「障害性の認知」にあたります。
・お酒を飲まないデメリット=障害性の認知
例:お酒を飲まないとストレスが解消できない
・お酒を飲むデメリット=罹患性の認知、重大性の認知
例:お酒を飲み続けていると、肝臓の病気になるかもしれない。肝臓の病気になったら大変なことになる。
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02
行動変容技法と、その支援内容について確認していきましょう。
この支援内容は、「刺激統制」という行動変容技法になります。
「刺激統制」とは、行動の刺激となる「先行刺激」をコントロールすることで、その後の行動を変える方法です。
今回は、「飲酒量を増やす行動」の刺激となる「飲酒量が多い人(先行刺激)」を、「隣に座らない」という方法でコントロールすることで、「飲酒量を増やす行動」を抑える、という提案をしています。
この支援内容は、「認知再構成」という行動変容技法になります。
「認知再構成」とは、現在抱いている認識を、望ましい認識にに改める方法です。
今回は、「お酒が飲みたい」という認識を、「喉が渇いている」という認識に改めています。
例えば、以下の方法も「認知再構成」となります。
・「1カ月お酒を我慢しましたが、寝つきが悪いと感じたため3日前からまた飲むようになってしまった」と話す患者に、「1カ月お酒を我慢できたのですね」とほめたり、飲まなくても眠れた日があったことを思い出させる
この支援内容は、「ソーシャルスキルトレーニング」という行動変容技法になります。
ソーシャルスキルとは、対人関係や集団行動を円滑に行うために必要な技能(スキル)のことです。
このソーシャルスキルを身につける訓練を「ソーシャルスキルトレーニング」といいます。
今回は、このスキルを活かして「飲酒量を減らす」目的を達成する、という提案を行っています。
正しい組合せです。
この支援内容は、「オペラント強化」という行動変容技法になります。
「オペラント強化」とは、行動直後の刺激を変化させることで、その行動をコントロールする方法です。
例えば、「運動をする」という行動の直後に、「ほめる」という刺激を加えると、その行動(運動をする)が増える、という例が挙げられます。
今回は、休肝日にお酒を飲む、という行動の直後に、「ゲームをやらない」という刺激を加え、その行動(休肝日にお酒を飲む)を減らす、という活用方法を提案しています。
この支援内容は、「ヘルスビリーフモデル」を活用したものになります。
ヘルスビリーフモデルとは、代表的な健康行動理論の一つです。
人が健康によい行動を行う可能性を高める要因として、以下の2つを挙げています。
①脅威の認識
このままだと、自分が病気や合併症になる可能性が高いと危機感を感じること
自分が病気や合併症になると、健康面・経済面・社会面などで重大だと感じること
②メリットとデメリットのバランス
健康によい行動を行うメリットとデメリット考えた時に、メリットの方が自分にとって大きいと感じること
今回は、まずお酒を飲むデメリットを考えることで、病気や合併症になる可能性が高いという①脅威の認識が可能となります。
そして、お酒を飲まないデメリットと比べることで、お酒を飲む方がよいか、お酒を飲まない方がよいか、どちらが自分にとって大きいか考えることとなり(②メリットとデメリットのバランス)、健康によい行動を行う可能性を高めることができます。
まとめ
行動変容技法には、多くの種類があります。
具体例を知ることで理解が進んでいくので、過去問の正答を具体例としてしっかり確認していきましょう。
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03
行動変容技法のそれぞれの特徴について理解しておきましょう。
ソーシャルスキルトレーニングは、社会技術訓練ともいい、対人交流における自己主張の不適切性を解消するために行います。
食行動変容を成功させるために、人から体に悪い料理や酒を勧められたときの穏やかな断り方を訓練しておくなどのことです。
会社の飲み会で、飲酒量が多い人の隣には座らないように提案することは刺激統制にあたります。
これは、行動に関わる先行刺激の状況を変えて目標行動を実行しやすくするよう環境的条件を整えることです。
自己強化とは、オペラント強化のひとつであり、目標達成の得点化、自分にご褒美を与えることなどにより、自分の行動を強めたり, 維持したりすることです。
お酒を飲みたくなったら、喉が渇いているだけだと自分に言い聞かせることを提案することは認知再構成にあたります。
これは、不都合な考えを変えるために、励ましの言葉を伝えたり、マイナスのイメージをプラスに捉えるようにすることをいいます。
結果期待とは、自分の行動から生まれる結果への期待であり、結果期待が高いほど実行に移しやすくなります。
お酒を飲みに行く以外に、同僚とのコミュニケーションを図る方法を考えてもらうことはソーシャルスキルトレーニングにあたります。
正しい組合せです。
オペラント強化とは刺激を行動の直後に起こさせ、その刺激を繰り返すなどによって行動の学習をすることです。
刺激を繰り返すことによりよって、行動の出現頻度が多くなるようにすることを「正の強化」、刺激を変化させて行動の出現頻度を低下させることを「負の強化」といます。
強化には「物理的強化」「社会的強化」「心理的強化」「自己強化」があります。
ストレスマネジメントとは、行動変容に伴うストレスに対して、前向きな気持ちを維持させるためにそのストレスを軽減させる訓練をすることです。
お酒を飲まないデメリットと、お酒を飲むデメリットを比べてもらうことはヘルスビリーフモデル(健康信念モデル)を活用したものです。
ヘルスビリーフモデル(健康信念モデル)とは、自分の健康状態、疾病をどのように思っているかという信念に着目し、それが行動に影響しているとする理論です。
罹患性(このままだと病気にかかる可能性が高いという信念)
重大性・重症性(病気や合併症になるとその結果重大・重症になるという信念)
障害(予防行動に対する信念)、有益性(予防行動の利益に対する信念)
を指標として行動変容の支援をしていきます。
お酒を飲まないデメリット→障害性
お酒を飲むデメリット→罹患性、重大性・重症性 にあたります。
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