管理栄養士の過去問
第37回
午後の部 問22

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問題

第37回 管理栄養士国家試験 午後の部 問22 (訂正依頼・報告はこちら)

糖尿病治療薬の主作用に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
  • SGLT 2阻害薬は、腎臓でのグルコースの再吸収を促進する。
  • チアゾリジン薬は、インスリン抵抗性を改善する。
  • ビグアナイド薬は、インスリン分泌を促進する。
  • GLP−1受容体作動薬は、インクレチン分解を促進する。
  • スルホニル尿素(SU)薬は、腸管でのグルコースの吸収を抑制する。

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この過去問の解説 (3件)

01

糖尿病の薬はいくつかあり、それぞれ作用が異なります。

どの部分に作用するのかを理解しておく必要があります。

選択肢1. SGLT 2阻害薬は、腎臓でのグルコースの再吸収を促進する。

SGLT2阻害薬はSGLT2の働きを抑制し、尿細管での糖の再吸収を抑制し、尿として糖を排泄します。

インスリンに関係なく血糖値を下げる働きをします。

選択肢2. チアゾリジン薬は、インスリン抵抗性を改善する。

正しいです。

チアゾリシン薬はインスリン感受性(抵抗性)改善薬ともいわれます。

インスリンの分泌を増やす作用はありませんが、インスリン抵抗性がある場合に、肝臓、筋肉、脂肪組織などのインスリンの感受性を高めます。

選択肢3. ビグアナイド薬は、インスリン分泌を促進する。

ビグアナイト薬は、主に肝臓でグリコーゲンからブドウ糖への糖新生を抑制します。

また、腸管からの糖吸収抑制、末梢組織でのブドウ糖取り込み抑制効果もあり、血糖値を下げます。

選択肢4. GLP−1受容体作動薬は、インクレチン分解を促進する。

GLP−1受容体作動薬は、GLP−1(インクレチン)を補います

インクレチンは食後に小腸から分泌されるホルモンで、インスリン分泌促進作用、グルカゴン分泌抑制作用があります。

インクレチン分解を抑制する薬には、DPP−4阻害薬があります。

選択肢5. スルホニル尿素(SU)薬は、腸管でのグルコースの吸収を抑制する。

スルホニル尿素(SU)薬は、膵臓のβ細胞を刺激して、インスリン分泌を促進させます。

組織細胞のインスリン受容体の数を増加させる作用もあります。

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02

糖尿病治療薬には、さまざまな作用があります。

まずは、「インスリン分泌を促進」するのか、「インスリン抵抗性を改善」させるのか、という部分に注目してみましょう。

そしてその後は、薬ごとの作用について確認していきましょう。

選択肢1. SGLT 2阻害薬は、腎臓でのグルコースの再吸収を促進する。

SGLT2阻害薬は、腎臓でのグルコースの再吸収を阻害することで、血糖値を降下させます。

腎臓にある尿細管では、尿中のグルコースを再吸収し、血糖を調節することができます。

そして、その再吸収されたグルコースを尿細管から血管内へ運ぶのが「SGLT2(ナトリウム・グルコース共役輸送体)」というタンパク質です。

SGLT2阻害薬はSGLT2のはたらきを阻害し、グルコースの再吸収を抑制して、グルコースの尿排出を促進させることで血糖を降下させます。

多くの糖尿病治療薬はインスリン作用を上げて血糖を降下させますが、SGLT2阻害薬は血糖を下げることにより、インスリン作用の回復を期待する薬です。

選択肢2. チアゾリジン薬は、インスリン抵抗性を改善する。

正しいです。

チアゾリジン薬は、インスリン抵抗性を改善させることで、血糖値を降下させます。

そのため、インスリン分泌の高い肥満型の糖尿病患者に良い効果があります。

インスリン抵抗性とは、「インスリンの効き具合」を表します。

膵臓からインスリンが血中に分泌されているにも関わらず、標的臓器(肝臓、骨格筋、脂肪組織)のインスリンに対する感受性が低下しているために、血糖を下げるはたらきが十分に発揮されない状態です。

チアゾリジン薬は、以下の機序でインスリン抵抗性を改善させます。

・筋肉組織や脂肪組織での糖の取り込みを促進する

・肥大化した脂肪細胞に作用し、小型の脂肪細胞に変化させる

(肥大化した脂肪細胞は、インスリン抵抗性を誘導する悪玉アディポサイトカインを産生するため)

選択肢3. ビグアナイド薬は、インスリン分泌を促進する。

ビグアナイド薬は、インスリン分泌は促進せず、以下のような複数の作用で血糖値を降下させます。

・肝臓での糖新生を抑制する

・インスリンレセプターを活性化して、インスリン抵抗性を改善させる

・小腸での糖の吸収を抑制させる

選択肢4. GLP−1受容体作動薬は、インクレチン分解を促進する。

GLP−1受容体作動薬は、インスリン分泌を促進します。

GLP-1とは、インクレチン(インスリン分泌作用を持つホルモン)のひとつです。

食事によって消化管に食べ物が入ると、小腸からGLP−1が分泌され、血液を介して膵臓に運ばれます。

そして、膵臓にあるGLP−1受容体と結合してインスリン分泌を促進させ、血糖を降下させます。

GLP−1受容体作動薬とは、体外からこのGLP−1を補う糖尿病治療薬です。

選択肢5. スルホニル尿素(SU)薬は、腸管でのグルコースの吸収を抑制する。

スルホニル尿素(SU)薬は、インスリン分泌を促進します。

インスリンを分泌するのは、膵臓のランゲルハンス島という組織にあるβ細胞です。

このβ細胞には、スルホニルウレア受容体(SU受容体)というものがあり、この受容体がインスリン分泌に関わっています。

スルホニル尿素(SU)薬はSU骨格の構造を持ち、β細胞のSU受容体に結合することでインスリン分泌を促し、血糖値を下げる作用をあらわします。

まとめ

解説中に「悪玉アディポサイトカイン」という言葉も出てきました。

アディポサイトカインは、種類やインスリン抵抗性との関係について出題されることもあるため、プラスアルファで復習しておきましょう。

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03

糖尿病治療薬の作用機序や特徴、起こりやすい副作用などを覚えておきましょう。

選択肢1. SGLT 2阻害薬は、腎臓でのグルコースの再吸収を促進する。

SGLT2阻害薬は、腎臓でのグルコースの排泄を促進し、血糖値を下げる薬です。

副作用には低血糖や、尿路感染症、脱水などがあります。

選択肢2. チアゾリジン薬は、インスリン抵抗性を改善する。

正しいです。

チアゾリジン薬は、筋肉や肝臓、脂肪細胞のインスリン感受性を高める薬です。

単独では低血糖のリスクは少ないですが、他の血糖降下薬との併用で注意が必要です。

選択肢3. ビグアナイド薬は、インスリン分泌を促進する。

ビグアナイド薬は、糖新生を抑制したり、インスリン抵抗性を改善する効果がある薬です。

主な副作用には消化器症状があります。

選択肢4. GLP−1受容体作動薬は、インクレチン分解を促進する。

GLP−1は、インクレチンというホルモンの一種です。

GLP-1は、通常DPP-4という酵素によってすぐに分解されてしまいますが、この分解を受けにくくしたのがGLP-1受容体作動薬です。

GLP-1が長く作用することによって、膵β細胞にはたらいてインスリン分泌を促進させたり、消化管の蠕動運動を遅くし食欲を抑制する効果があります。

副作用としては胃腸障害、急性すい炎、SU薬と併用すると低血糖のリスク増加などが挙げられます。

選択肢5. スルホニル尿素(SU)薬は、腸管でのグルコースの吸収を抑制する。

スルホニル尿素(SU)薬は、膵臓でのインスリン分泌を促進させる薬です。

低血糖を起こしやすく、多剤との併用には注意が必要です。

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