精神保健福祉士の過去問
第18回(平成27年度)
精神保健福祉相談援助の基盤 問33

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

第18回(平成27年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉相談援助の基盤 問33 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。

〔事 例〕
N市にある相談支援事業所のF精神保健福祉士は、地域相談支援に携わっている。担当している統合失調症のGさん(55歳、男性)は、退院して2か月がたち、一軒家の自宅での生活に慣れ始めたところである。自宅を残してくれた両親は既に亡くなっており、一人暮らしである。
ある日、Gさんから「近所との関係で困っている」と電話があった。F精神保健福祉士が早速訪問したところ、Gさんはつい先ほど隣家の住民から「ごみを勝手に持ち帰るな」と怒鳴り込まれたと訴えた。F精神保健福祉士は前回に立ち寄ったときと比較して、敷地内の乱雑ぶりに驚いた。あらゆる所にごみが積み上げられ、聞けば「近所に放置されていたから、家まで持ってきた」という。Gさんは「どれも大切なものであり、ごみではない」と言い張り、「危険もあるので処分しましょうよ」というF精神保健福祉士の発言に激高した。(※1)

その後、F精神保健福祉士は何度も訪問を重ね、Gさんの訴えを傾聴し続けた結果、Gさんはようやく家の片付けを受け入れた。Gさんは自分で片付けると言ったが、F精神保健福祉士は、量が多いので何回かに分けて一緒に片付けるなど工夫を試みた。(※2)

Gさん宅の片付けが無事に終わった後、F精神保健福祉士は定期的に訪問を続けている。隣家との関係は改善されていないものの、今のところGさんが再びごみを収集することはない。
F精神保健福祉士がN市自立支援協議会でこの件に関連して報告すると、同様のケースが発生しているということが分かり、市内の関係機関を対象に、実態調査を次年度に行うことになった。調査の意義に理解を示したN市が予算を確保し、調査に携わるメンバーが集められた。現在、それぞれのメンバーがお互いに信頼し合い、協力しながら作業を進めている。(※3)


次のうち、この(※1)時点でF精神保健福祉士が配慮すべきであった倫理事項として、最も適切なものを1つ選びなさい。
  • クライエントの批判に対する責務
  • 個別化
  • 自己決定の尊重
  • 秘密保持
  • 地位利用の禁止

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

正解は3です。

1:クライエントの批判に対する責務は、精神保健福祉士が業務を遂行するにあたり、クライエントからの批判・評価を謙虚に受け止めて改善に努める点にあります。このことは、日本精神保健福祉士協会倫理綱領に明記されています。
事例では、Gさんが近所から持ち込んだゴミ(Gさんにとっては大切なもの)を処分することを提案したF精神保健福祉士の発言にGさんは激高してはいますが、Gさんが批判をしているとの記述はありませんので、不適切です。

2:個別化は、クライエントを唯一無二の存在として捉え、それぞれのケースに応じて個別的に支援していくことです。バイステックの「ケースワークの原則」の中の7原則の1つです。クライエントの状況に応じて個別的に対応する配慮は大切な事ですが、事例では、F精神保健福祉士に個別化に対する配慮がなかったとの記述はありませんので不適切です。

3:自己決定の尊重は、クライエントの意思を尊重し、クライエントの望む自己実現に向けて支援することです。このことは、日本精神保健福祉士協会倫理綱領に記載されています。事例では、Gさんにとっては大切なものをF精神保健福祉士の判断から処分するものとしてしまったところにGさんの自己決定への配慮がなく、F精神保健福祉士の価値観の押し付けとなっていたと言えます。Gさんの言い分によく耳を傾け、Gさんの意思を尊重し、Gさんの思いに寄り添いながら、共に問題解決しようとする姿勢が大切です。

4:秘密保持は、精神保健福祉士法の第40条に義務として規定されていますし、バイステックの7原則の1つでもある重要な倫理です。精神保健福祉士法の第40条では、精神保健福祉士は、その業務を通して知り得た秘密を正当な理由なくして漏らしてはならない。精神保健福祉士でなくなった後でも同様であるとされています。事例では秘密保持の規定を守っていない記述はありませんので、不適切です。

5:地位利用の禁止は、日本精神保健福祉士協会倫理綱領に責務として記載されています。精神保健福祉士が職務を遂行するにあたっては、クライエントの利益を最優先し、精神保健福祉士個人の利益のためにその地位を利用してはならないと規定されています。事例では、地位利用の禁止に反したことは記述されていませんので、不適切です。

参考になった数27

02

正解は3です。

1.クライエントの批判に対する責務とは、クライエントの批判・評価を謙虚に受けとめ、改善することをいいます。Gさんが激高した事例の後に求められる配慮であり、激高した後にどのように対処したかは事例から読み取れないため、適切な回答とはいえません。

2.個別化は、不特定多数の中の一人ではなく、特定の一人の人間として対応することをいいます。事例で激高させた背景に、一人の人間としての行動を理解していなかったと考えることもできますが、個別ケースとして対応を行っており、他により適切な回答があることからも、最も適切な回答とはいえません。

3.自己決定の尊重は、クライエントが自ら選択して決定することの自由と権利を認め、尊重することです。Gさんの決定を尊重する観点で最も適切な回答といえます。

4.秘密保持は、クライエントの情報を正当な理由なく漏らさないことです。事例からそのような内容は読み取れません。

5.地位利用の禁止は、地位を不正に利用しないことです。事例からそのような内容は読み取れません。

参考になった数9

03

 正解は3です。

1.クライエントの批判に対する責務とは、クライエントの批判・評価を謙虚に受けとめ、改善することをいいます。

2.ここでGさんを個人として捉えることが焦点ではありません。

3.物事を決定するのはクライエント本人です。

4.秘密保持は、クライエントの情報を正当な理由なく漏らさないことです。

5.地位利用の禁止は、精神保健福祉士個人の利益のためにその地位を利用してはならないと規定されています。

参考になった数6