精神保健福祉士の過去問
第18回（平成27年度）
現代社会と福祉 問102

正解は1です。

福祉国家とは、経済的に弱い立場にある人々のために、国が社会保障制度などの政策を整備、維持することで、国民の生活を幅広くフォローする仕組みを備えた国家のことを言います。エスピン-アンデルセンは、福祉国家を「脱商品化」と「社会的階層化」の2つの指標を用いて、3つに分類しました。3つの分類は、「社会民主主義レジーム」「保守主義レジーム」「自由主義レジーム」です。「レジーム」とは政治形態や制度のことです。

1：「社会的階層化」とは福祉国家が国民の間の職業、階級、身分、性別などによる地位や権利の格差を固定化し階層を作ることです。福祉国家は、国民の生活を安定させるために、各階層に応じて社会保障などの給付を行います。よって、福祉国家は、社会的階層化のパターン形成における重要な役割を演じると言えます。

2：「脱商品化」とは、労働者が病気や怪我などで労働できなくなっても（労働力を商品化できなくなっても）国家からの給付や支援のみで生活できるかどうかの指標のことです。労働者が労働能力を喪失することではありませんので、誤りです。

3：「脱家族化」とは、政府の政策や民間のサービスなどを利用して、家族へ依存していた育児や介護などのケアをどれだけ軽減できるかの指標のことです。単身世帯の増加のことではありませんので、誤りです。

4：「福祉レジーム概念」は、福祉レジームの違いによる類型のことです。福祉国家の否定から生まれたのではなく、福祉国家の研究から生まれたものですので、誤りです。

5：雇用・労働市場も福祉国家の在り方に大きな影響を与えますので誤りです。

エスピン-アンデルセンの3つの福祉国家レジームについて簡単にまとめます。

「社会民主主義レジーム」→スウェーデンやフィンランドに代表されるレジームです。すべての国民への高福祉給付を提供しています。労働力の脱商品化が促進されていて完全雇用ですが、税金が高いです。労働力の脱商品化は高く社会的階層化は低いです。

「保守主義レジーム」→ドイツやフランスに代表されるレジームです。社会保障は、職業別、地位別に設定されていて給付の不平等があります。労働力の脱商品化、社会的階層化は共に中間です。

「自由主義レジーム」→アメリカやカナダに代表されるレジームです。低所得者を対象とした福祉の給付です。労働力の脱商品化は低く社会的階層化は高いです。

正解は１です。

エスピン－アンデルセンは、脱商品化と社会的階層化の指標を用いて、福祉国家を3つのレジームに類型化しました。

１．エスピン－アンデルセンは、福祉国家が社会的階層化のパターン形成に重要な役割を演じるとしました。

２．脱商品化とは、労働者が労働能力を喪失することではなく、労働が商品化されないように、必要な時に仕事や所得を失うことなく労働から離脱できるかどうかを表したものです。

３．脱家族化とは、単身世帯かどうかに関わらず、家族に頼らず生活できるかどうかを表したものです。

４．福祉レジームの概念は福祉国家を分類したもので、福祉国家を否定したものではありません。

５．福祉レジームの在り方によって、給与格差や完全雇用などの考え方が異なるため、雇用・労働市場は異なる影響を受けます。

アンデルセンの「レジーム論」は、福祉国家が多様化し新たな概念として、福祉レジーム論と提起したもので、社会保障政策の特徴を政治や経済レジームとの関連とで研究をしました。
それは、脱商品化と階層化という指標を用いて集団化し、自由主義的福祉国家、保守主義的福祉国家、社会民主主義的福祉国家に分類しました。


１、階層化とは、政策において、生活保障のために社会階層や職種に応じた給付が行われ、階層が固定されるという側面があります。

２、脱商品化とは、病気やけがなどによって『労働力を商品化』できなくなっても、社会保障制度によって生活していかれるかどうかを表す指標のことです。

３、脱家族化とは、制度によって育児や介護をどの程度減らせるかを指します。

４、レジーム論は、福祉国家の発展型であることから、福祉国家を否定しません。

５、福祉レジーム論は、政治・経済に関連するものとして提唱されたものです。


以上のことから、正解は１です。