精神保健福祉士の過去問
第19回(平成28年度)
権利擁護と成年後見制度 問163

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問題

第19回(平成28年度) 精神保健福祉士国家試験 権利擁護と成年後見制度 問163 (訂正依頼・報告はこちら)

事例を読んで、関係当事者の民事責任の説明に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事例〕
V社会福祉法人が設置したグループホーム内で、利用者Lが他の利用者Mを突き飛ばしてケガを負わせた。ホームの職員Aは、Lに腹を立て、事実関係も確認せず、その場にLを長時間正座させ、他の利用者らの面前でLを叱り続けた。これが原因で、Lは体調を大きく崩して、長期の入院加療を余儀なくされた。
  • Lが認知症であれば民法713条が定める責任無能力者として免責されることになるので、LのMに対する不法行為責任は成立しない。
  • LのMに対する不法行為責任が認容される場合には、Vに民法714条の法定監督義務者責任を理由とする不法行為責任は成立しない。
  • LがAに不法行為責任に基づく損害賠償請求をする場合に、Vに民法715条の使用者責任に基づく損害賠償請求を併せて行うことはできない。
  • LがVに債務不履行責任に基づく損害賠償請求をする場合に、Vに民法715条の使用者責任に基づく損害賠償請求を併せて行うことはできない。
  • VがAの使用者責任に基づきLに損害賠償を支払った場合でも、VがAに求償することはできない。

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この過去問の解説 (4件)

01

正解は2です。

1.利用者Lが認知症であったとしても、故意や過失によって一時的にその状態を招いたと判断される場合には、責任無能力者として免責されることにはなりません。

2.利用者Lの利用者Mに対する法的な責任が認められる場合には、V法人に法廷監督義務者責任は生じません。V法人への法廷監督義務者責任は、利用者Lが責任無能力者として免責されることになった場合に発生します。

3.利用者Lが職員Aに不法行為責任に基づく損害賠償請求をする場合に、併せてV法人に対して使用者責任に基づく損害賠償請求を行うことができます。

4.利用者LがV法人に債務不履行責任に基づく損害賠償請求をする場合に、併せて使用者責任に基づく損害賠償請求も行うことができます。

5.V法人が職員Aの使用者責任に基づき利用者Lに損害賠償を支払った場合に、V法人が職員Aに求償することができます。

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02

この事例問題で理解しておくポイントは、民法の第713条~715条となります。
713条では、精神障害者が自己行為の責任能力が欠かれた場合の賠償責任が生じなくなることを規定していますが、故意・過失のある場合には、この限りでないと規定されています。不法行為責任が発生しない一例についての規定となります。

責任能力については712条で規定されていて、未成年者における責任能力の有無を規定していて、通例では同条項をは11~12歳以下に適応するとされています。

714条では責任無能力者の監督義務責任について規定しています。
責任無能力者が起こした不法行為に対して、監督義務者(法的な監督責任を持つもの)および監督義務者の代わりに監督するものが責任をおう事となっています。

715条では使用者責任について規定しています。
これは不法行為を起こした被用者が、民法709条に基づく不法行為を行った場合に、使用者としての責任があることを規定しています。

今回の問題では、V社会法人は、Aに対しての使用者責任を持つ状態であるという事になります。
そしてLに対しては、ケースによっては監督責任が生じる可能性があるという問題となります。

×1 Lが認知症であれば民法713条が定める責任無能力者として免責されることになるので、LのMに対する不法行為責任は成立しない。
→利用者Lが認知症の場合に、賠償責任が生じなくなる可能性がありますが、認知症患者が必ず責任無能力者とは限りません。
故意・過失があり、自己行為の責任能力が欠かれないと判定される可能性においては免責されないので、本選択肢は×となります。

◎2 LのMに対する不法行為責任が認容される場合には、Vに民法714条の法定監督義務者責任を理由とする不法行為責任は成立しない。
→Lの不法行為責任が任用される場合は、V法人には法定監督義務者責任は生じません。利用者が責任無能力者であると判定され、不法行為が免責される場合にのみ、監督義務責任が発生するためです。そのため、この選択肢が正解となります。

×3 LがAに不法行為責任に基づく損害賠償請求をする場合に、Vに民法715条の使用者責任に基づく損害賠償請求を併せて行うことはできない。
×4 LがVに債務不履行責任に基づく損害賠償請求をする場合に、Vに民法715条の使用者責任に基づく損害賠償請求を併せて行うことはできない。
→利用者であるLがV法人の職員Aに対して、不法行為責任・債務不履行責任に基づいて損害賠償請求を行う場合、あわせてV法人に対しても損害賠償請求を行うことができます。そのため、3と4の選択肢は×となります。

×5 VがAの使用者責任に基づき、Lに損害賠償を支払った場合でも、VがAに求償することはできない。
→使用者責任に基づいた賠償をLに払った場合は、V法人は職員Aに対して求償する事が可能です。
 職員AとV法人が不真正連帯債務にあるとされるためです。
 715条3項に基づいて、使用者が被用者の不法行為により、賠償した場合は求償することができるとなっています。

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03

社会福祉法人が運営するグループホームで、利用者間トラブルがあった際、職員がとった行動によって、さらに利用者へ被害を与えたというケースです。

1.×です。第713条(責任弁識能力を欠く者の責任)に関する問題です。
精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。とありますが、Lが判断能力を著しく書く状態かどうかが確定できません。713条には、「ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。」とありますので、必ずLは免除とはなりません。

2.〇です。LがMにしたことに責任が取れる、と判断されたら、わざわざ法人が責任を負う必要はありません。Lが自分で反省しないといけません、という解釈になります。

3.×です。Lが体調を崩す原因となった職員Aの強要について、法人に損害賠償ができるでしょうか?という内容です。出来ます。

4.×です。Lは法人に対して、債務不履行責任(やるべきことをやっていない)、損害賠償請求(損害を受けたので雇主として保証してほしい)という二つの請求ができます。

5.×です。民法第713号第3項では「使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。」とあります。つまり従業員が損害を賠償したときには、その従業者に対して、償いを求めることが出来る、ということになります。

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04

正答【2】

1.誤答
民法713条は、「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない」と定めています。
しかし、Lが認知症だからといって責任無能者であるとは限らないので必ずしも不法行為責任は成立しないとは言えません。


2.正答
LのMに対する不法行為責任が認容される場合には、Vに法定監督義務者責任を理由とする不法行為責任は成立しません。


3.誤答
LはAに対して損害賠償請求をする場合に、Vに対して使用者責任に基づく損害賠償請求を併せて行うことができます。


4.誤答
LはVに損害賠償請求と合わせて使用者責任に基づく損害賠償請求を併せて行うことができます。


5.誤答
VがAの使用者責任に基づきLに損害賠償を支払った場合でも、VがAに求償することができます。

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