精神保健福祉士の過去問
第21回(平成30年度)
精神保健福祉相談援助の基盤 問114

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問題

第21回(平成30年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉相談援助の基盤 問114 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。

〔事例〕
来日した留学生Bさん(24歳、男性)は、日本語学校に入学し、生活習慣の違いに不安を抱えながらも新生活を始めた。居住している留学生会館があるN地区は、外国籍の労働者や留学生が多く、国際結婚をした家族も多数居住している。Bさんは、同じ日本語学校の留学生Cさんたちともすぐに仲良くなり、当初あった不安も減り孤独を感じることなく、慌ただしいながらも暮らしに馴染んでいった。

来日して3か月が過ぎた頃から、Bさんは気分が落ち込み、仲間たちとも次第に距離をとるようになっていった。その様子を心配したCさんが、Bさんに付き添い日本語学校の保健室を訪れると、留学生支援で実績があるN地区のUクリニックを紹介された。
Uクリニックの医師は、Bさんに薬物療法の必要性を伝え、定期的な通院を勧めた。インテークを担当したD精神保健福祉士は、言語や生活習慣の違いを特に注意しながら、Bさんと面接を行った。(※2)

Bさんは、D精神保健福祉士との面接を通じて、二人にサッカーという共通の趣味があることも分かり、徐々に打ち解けていった。その後、Bさんは、自分の不調をうまく言葉に表すことができず苦しかったことや、日本での手続が複雑で困ったこと、日常生活で困惑したことなどを話すようになり、元気を取り戻していった。
ところがある日、BさんはD精神保健福祉士に、「留学生同士でも違う」、「みんな一緒にするな」と語気を荒げた。そして、普段はあまり使わない母国語も交え、「この地区では同じ国の出身者と集まることが多い」、「留学生同士でも仲間に入れない人や、孤立している人がいる」と続け、これまで感じていた違和感や疎外感について訴え、肩を落とし、やがて沈黙し涙を浮かべた。

Bさんは通院を継続し、半年後には落ち着いて仲間たちとも付き合えるようになった。最近の面接では、「趣味のサッカーをいかし、地域で交流を深められないか」と前向きな発言が聞けるようになってきている。

次のうち、D精神保健福祉士がBさんとの面接(※2)に当たり、念頭に置く内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。
  • コミュニティオーガニゼーション
  • エビデンス・ベースド・プラクティス
  • ソーシャルアクション
  • ソーシャルエクスクルージョン
  • カルチュラル・コンピテンス

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は5です。
カルチュラル・コンピテンスとは、多様な文化的背景をもつクライエントの文化的・言語的ニーズに対応する能力のことを指します。

2.エビデンス・ベースド・プラクティスとは、科学的根拠に基づいたより効果的な支援を検討し、行う実践のことを指します。

3.ソーシャルアクションとは、福祉サービスの向上を目的に、公共政策に対する働きかけを行う間接的な社会福祉援助技術を指します。

4.ソーシャルエクスクルージョンとは、社会的排除のことです。こうした社会的排除が行われず、社会的弱者が社会の中に成員として包摂されることを、ソーシャルインクルージョンといいます。

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02

正解は5です。

1.コミュニティオーガニゼーションとは、地域住民のニーズを充足させるために、組織化・統合化を図る社会福祉技術のことです。地域社会が協力や団結をする過程は重要ですが、D精神保健福祉士が個別面接において用いる技術として最も適するものとはいえません。

2.エビデンス・ベースド・プラクティスとは、科学的根拠に基づいた実践のことです。ソーシャルワークにおいて重要な要素ではありますが、インテークの段階では、D精神保健福祉士はBさんとのラポールを形成し、ニーズを把握することが重要です。

3.ソーシャルアクションとは、地域住民やクライエントのニーズを充足させるために、サービスや制度の新たな創出や改善を目指す組織的活動のことです。Bさんへの支援において必要になる可能性はありますが、インテークの段階でD精神保健福祉士が念頭に置く内容として、最も適する解答とはいえません。

4.ソーシャルエクスクルージョンとは、社会的排除のことです。様々な要因によって社会との関係から排除されている状態を指します。

5.カルチュラル・コンピテンスとは、クライエントの様々な文化的背景を尊重することです。留学生であるBさんの言語や生活習慣を尊重する姿勢は、インテークの段階から重要です。

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03

正解は、 です。

1 コミュニティオーガニゼーションとは、地域に潜在する課題の解決に向けて地域を組織化するなどして解決する援助方法です。コミュニティソーシャルワーク(地域福祉活動)の場面で活用されます。事例では、D精神保健福祉士とBさんとの面接場面での関わりについて問われていますので、不適切です。

2 エビデンス・ベースド・プラクティスとは、科学的根拠に基づく実践のことです。事例では特にそのような場面は出てきていないので不適切です。

3 ソーシャルアクションとは、現場での実践を通して気づいた障害者や高齢者などにとって足りない社会資源を解消・解決できるよう社会に働きかける活動のことを指します。事例ではそのような場面は出てきていないので不適切です。

4 ソーシャルエクスクルージョンとは、社会的排除と訳されます。現在は、その反対語であるソーシャルインクルージョン(社会的包摂)の考え方が一般的です。

5 カルチュラルコンピテンスとは、当事者の文化や言語ニーズを理解し、対応する能力のことです。事例でD精神保健福祉士は、言語や生活習慣の違いを特に注意しながら面接をしていますので、適切です。

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