精神保健福祉士の過去問
第21回(平成30年度)
精神保健福祉相談援助の基盤 問115

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問題

第21回(平成30年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉相談援助の基盤 問115 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。

〔事例〕
来日した留学生Bさん(24歳、男性)は、日本語学校に入学し、生活習慣の違いに不安を抱えながらも新生活を始めた。居住している留学生会館があるN地区は、外国籍の労働者や留学生が多く、国際結婚をした家族も多数居住している。Bさんは、同じ日本語学校の留学生Cさんたちともすぐに仲良くなり、当初あった不安も減り孤独を感じることなく、慌ただしいながらも暮らしに馴染んでいった。

来日して3か月が過ぎた頃から、Bさんは気分が落ち込み、仲間たちとも次第に距離をとるようになっていった。その様子を心配したCさんが、Bさんに付き添い日本語学校の保健室を訪れると、留学生支援で実績があるN地区のUクリニックを紹介された。
Uクリニックの医師は、Bさんに薬物療法の必要性を伝え、定期的な通院を勧めた。インテークを担当したD精神保健福祉士は、言語や生活習慣の違いを特に注意しながら、Bさんと面接を行った。

Bさんは、D精神保健福祉士との面接を通じて、二人にサッカーという共通の趣味があることも分かり、徐々に打ち解けていった。その後、Bさんは、自分の不調をうまく言葉に表すことができず苦しかったことや、日本での手続が複雑で困ったこと、日常生活で困惑したことなどを話すようになり、元気を取り戻していった。
ところがある日、BさんはD精神保健福祉士に、「留学生同士でも違う」、「みんな一緒にするな」と語気を荒げた。そして、普段はあまり使わない母国語も交え、「この地区では同じ国の出身者と集まることが多い」、「留学生同士でも仲間に入れない人や、孤立している人がいる」と続け、これまで感じていた違和感や疎外感について訴え、肩を落とし、やがて沈黙し涙を浮かべた。(※3)

Bさんは通院を継続し、半年後には落ち着いて仲間たちとも付き合えるようになった。最近の面接では、「趣味のサッカーをいかし、地域で交流を深められないか」と前向きな発言が聞けるようになってきている。

次の記述のうち、(※3)の場面におけるD精神保健福祉士の発言として、最も適切なものを1つ選びなさい。
  • 「留学生同士のまとまりをより深めてみましょう」
  • 「他地域の様子を参考にしてみてはどうでしょう」
  • 「私も疎外感を覚えたときがありましたよ」
  • 「地域の人々と交流したいのですね」
  • 「今、孤独を感じているのですね」

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は5です。

1.Bさんは、「留学生同士でも違う」などの発言もしており、この段階で留学生同士のまとまりを提案するのは時期尚早であると考えられます。この段階では適切な発言とはいえません。

2.他の地域を参考にすることも重要ですが、この段階での発言として最も適切とはいえません。また、クライエントは感情表出しているのであり、地域課題としてD精神保健福祉士に相談をしているわけではありません。

3.この選択肢のコミュニケーション技法は、自己開示といいます。自己開示とは、ワーカーが感情や体験を開示し、クライエントと分かち合う技法で、ラポールの形成などに役立ちますが、この段階ではこれまでに出てこなかったBさんの感じている課題や孤独感が表出しており、それらを受容する発言の方がより適切といえます。

4.Bさんは語気を荒げ、現状を訴えた後、肩を落として沈黙し、涙を流したという記述があるように、感情表出をしており、この段階ではBさんの感情を受容し、明確にすることが重要です。

5.この選択肢のコミュニケーション技法は、感情の反映といいます。クライエントによって表出された感情をワーカーが言葉にして提示することです。この段階では、Bさんの感情を汲み取り、明確にしていくことが必要なため、最も適切な解答といえます。

参考になった数24

02

正解は5です。
クライエントの気持ちを支援者が適切に理解し、その理解をクライエントにフィードバックすることは、クライエントと支援者との間の良好な治療関係につながります。このような、治療者に気持ちを理解してもらえているという、心理的に安全が守られた治療関係の中で、クライエントは自身のことを考える作業に専念することができるようになります。
また、クライエント自身が意識していなかった感情について、支援者が言語化することによって、クライエントの洞察が深まる場合があります。

1. Bさんは、留学生同士の中でも疎外感を感じることを訴えています。「留学生同士のまとまりが深まらない」事がBさん一人ではどうにもならないからこそ相談に来ているわけであり、こうした発言は問題の解決にあまり意味があるとは言えません。

2. Bさんの感情表出がどういった意味を持つものであるのかという見立てや、その見立てが的を得ているのかという確かめを行う前に、こうした具体的な対策案を出すのは時期尚早でしょう。対策案が的外れな可能性も大いにありますし、クライエントが自身の気持ちを理解してもらえていないと感じる可能性があります。

3. 適切な自己開示による率直なコミュニケーションはラポールの形成に役立つことがあります。一方で、今回Bさんが表出している感情は、問題の核心につながるような重要なものであると考えられます。このような場合に「支援者も同じ経験がある」といった自己開示をしたところで、Bさん自身の問題解決には役立たないと考えられます。またBさんが、自身の疎外感が支援者の疎外感と同等のものであるという見解を押し付けられ、支援者に適切な理解してもらえなかったと感じる可能性もあります。

4. Bさんはこの場面において、留学生同士の中での疎外感を口にしています。Bさんが「地域の人々と交流したい」と感じていると考えるのは、やや的外れでしょう。

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03

正解は、 です。

1 Bさんが抱えている疎外感等について具体的に話してくれた場面です。新たな提案をするのではなく、まずはBさんの考えていることの傾聴に努めることが適切です。

2 Bさん自身が課題解決をするためには、Bさん自身の精神状態が安定することが必要です。また、Bさんが具体的に話してくれるようになったところですので、Bさんに今提案することは不適切です。

3 Bさんに共感しているという面では信頼関係の構築に適切かもしれませんが、現段階ではBさんが具体的に話してくれている場面ですのでBさん自身の話を傾聴する姿勢が大切です。また、文化や言語など立場が違うD精神保健福祉士が共感することがBさんにとって悪い印象を与える可能性も考慮しなければいけませんので、不適切です。

4 現段階でBさんは、自分の思いを表出しているのみでこれからの生活の意向については何も話していません。Bさんの意向を推察することも大切ですが、この段階で具体的なBさんの意向を推察して聴くことは時期尚早と言えるでしょう。

5 Bさんが語気を荒げたり、沈黙し涙を浮かべたりなど、さまざまな感情が押し寄せてきている場面です。D精神保健福祉士としては、新たな提案などをするのではなく、Bさんの発言や表情を受容し、信頼関係を築いていくことが大切です。また、それがBさん自身が思いを整理していくことにもつながります。

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