精神保健福祉士の過去問
第21回(平成30年度)
精神保健福祉相談援助の基盤 問118

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

第21回(平成30年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉相談援助の基盤 問118 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。

〔事例〕
Eさん(27歳、男性)は菓子職人として働いていたが、度重なる残業がストレスとなり、23歳の時に不眠が生じ、また幻聴も始まったため精神科病院を受診した。統合失調症と診断され3か月の入院の後、精神科デイケアに通院して4年が経過している。
ある日、Eさんは、デイケアの仲間が働き始めたことに刺激を受け、「自分もどうしても働きたい」と担当の精神保健福祉士に相談した。そこで、公共職業安定所(ハローワーク)の精神障害者雇用トータルサポーターであるF精神保健福祉士を紹介され、面談することとなった。
「調子がいい時と悪い時がある。病気のことは内緒にして働いたこともあったが、うまくいかなかった」と話したEさんは、F精神保健福祉士から将来について聞かれ、「子どもの頃から物作りが好きだった。菓子職人になったけど、思うとおりにはならなかった。今はデザインの仕事をして人を幸せにしたい」と語った。F精神保健福祉士は、就職への強い希望と意欲がEさんの強みだと感じた。

F精神保健福祉士は、Eさんの症状は安定していないが、多職種で協力し一般就労に結び付けたいと考えた。そこでEさんの了承の下、主治医、担当の精神保健福祉士、Eさんが最近利用するようになった地域活動支援センターの職員と連絡を取り、1週間後に本人同席の上で今後の就労支援の方向性を話し合うための会議を開催した。

話合いでは、デザイン関連につながる仕事を探すこと、障害年金の受給と合わせることで短時間労働でも経済的な自立を目指せることなどが確認された。F精神保健福祉士はこれらの条件に合う企業をいくつか訪問し、Eさんのことを紹介した。すると、就職後もF精神保健福祉士を中心としたチームが職場訪問すること、困り事などの相談や調整を継続することを条件に受入れを承諾してくれる企業を見付けることができた。働き方についてもEさんと会社、さらにF精神保健福祉士が話し合い、週3日、1日4時間から働くことになった。Eさんは職場の理解の下、継続して半年間働いている。今では週4日に日数を増やすことも考えている。(※3)

次のうち、F精神保健福祉士が行った支援(※3)として、正しいものを1つ選びなさい。
  • 職場適応援助者(ジョブコーチ)支援
  • IPS
  • 職業準備支援
  • 職場適応訓練
  • 従業員支援プログラム(EAP)

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

正解は2です。
IPSは、個別就労支援プログラムを指します。IPSでは対象者の希望をもとにした個別の職業紹介と、OJT(現場トレーニング)の考えに基づく援助付き雇用を行います。IPSはリカバリーの概念に基づいており、障害の有無にかかわらず対象者本人の希望を重視し、また一般就労における継続的な援助も目標としています。

1. ジョブコーチは、障害者の職場適応と定着を目的とし、障害特性を踏まえた直接的で専門的な支援を行う専門家です。ジョブコーチには、地域障害者職業センターに配置される「配置型ジョブコーチ」、研修修了の上で社会福祉法人等に雇用される「訪問型ジョブコーチ」、研修修了の上で企業に雇用される「企業在籍型ジョブコーチ」の3種類に分けられますが、本事例ではF精神保健福祉士がこのどれかに該当するという記述は特に見られません。

3. 職業準備支援は、実際の就労の前に主に地域障害者職業センターで行われる、職業上の課題の改善を目的とした支援を指します。本事例のようなIPSにおける支援では、OJT(現場トレーニング)の考えに基づく雇用先での援助を重視します。

4. 職場適応訓練は、作業環境への適応を目的として、実際の職場で作業について訓練を行うことであり、訓練終了後の雇用の期待により実施されます。本事例では、雇用前に職場適応訓練を行ったという記述はありません。

5. 従業員支援プログラム(EAP)は、企業における従業員のメンタルヘルスを支援、引いては企業全体のパフォーマンスの向上を目的とする支援プログラムを指します。EAPには、企業内部に設置される内部EAPと、企業外部のEAPサービス機関が提供する外部EAPがありますが、F精神保健福祉士がこのどちらかに所属するという記述はありません。

参考になった数39

02

正解は2です。

1.職場適応援助者(ジョブコーチ)とは、障害者が職場に適応できるよう支援を行う専門家のことです。障害者本人への支援のほか、事業所や障害者の家族も支援対象です。

2.IPSとは、就労支援、医療支援、生活支援など、各々の専門家チームが協働し、精神障害者の就労を包括的に支援するプログラムのことです。就労には治療効果があるという考えに基づいていることや、医療者がチームにいること、短時間でも企業への就労を目指すことなどが挙げられます。

3.職場準備支援とは、就労前の準備に重点を置いた支援のことをいいます。職業に関する知識の習得や、コミュニケーション能力の向上、簡易作業体験など、就労するために必要な準備を行います。なお、職場準備支援終了後は、ジョブコーチ支援や、ハローワークでの職業紹介などに繋げていきます。

4.職場適応訓練とは、実際の職場で作業の訓練を行うことです。作業環境に適応しやすくする目的で実施され、訓練終了後には、作業を実際に行った事業所での雇用を期待して実施されます。なお、訓練を行った事業主には訓練費、訓練を受けた者には訓練手当が支給されます。

5.従業員支援プログラム(EAP)とは、メンタルヘルス支援のひとつで、心の病による求職者の復職支援やキャリアカウンセリングなどが該当します。このプログラムは、アルコール依存症や薬物依存症などを解決する目的で、企業に導入されたことが原点です。

参考になった数16

03

正解は、 です。

1 職場適応援助者(ジョブコーチ)支援では、障害者の職場に必要に応じて、ジョブコーチが行き、専門的な支援を行うことによって障害者の職場適応を目指します。事例では、F精神保健福祉士が職場に行って支援を行なったという内容は読み取れませんので、不適切です。

2 IPS(Individual Placement and Support)とは、個別の就労活動と職場定着支援を中心としたプログラムのことです。事例のような短期間、短時間でも企業の就労を目指すなどの特徴があります。そのため、この支援に適切であると言えます。

3 職業準備支援とは、高齢者や障害者が知識やコミュニケションなどのスキルを身につけ、働くことを目的とした支援のことです。事例では、Eさんは既に企業で働いているので不適切です。

4 職場適応訓練とは、障害者の能力に適した作業について実際の職場で訓練を行うことによって、その職場環境に適応し、訓練終了後は事業所に引き続き雇用されることを目的としています。Eさんは、この訓練をしていることが事例から読み取れませんので不適切です。

5 従業員支援プログラム(EAP)は、組織におけるメンタルヘルス(心の健康状態)不調の健康保持増進をすることを目的としています。事例では、F精神保健福祉士は、Eさんの就労支援を行なっている場面ですので、不適切です。

参考になった数10