精神保健福祉士の過去問
第21回(平成30年度)
精神保健福祉の理論と相談援助の展開 問134

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問題

第21回(平成30年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉の理論と相談援助の展開 問134 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。

〔事例〕
Cさん(50歳、女性)は精神科病院に入院している。Cさんは、専門学校在学中に統合失調症を発症し、退院後に中退した。その後は就職をせずに実家で家事手伝いをしながら、同居する姉夫婦の子どもの面倒を見ていた。両親は既に亡くなっている。これまでCさんは何度か入退院を繰り返しており、今回の入院は3年間となっている。現在の症状は安定している。
Cさんの病棟に新たにD精神保健福祉士が配置された。D精神保健福祉士は、早速Cさんと面接を行った。担当看護師からCさんは退院に否定的ではないと聞いていたが、面接でCさんは退院したくないと言うばかりであった。
不思議に思ったD精神保健福祉士は、姉夫婦と面談したところ、来月には姉の長男が結婚して同居することになっているとのことであった。そのことを外泊時にCさんが知り、それから外泊もしなくなったという。姉夫婦も家族構成の変化や家が狭いことを考えると、Cさんとの同居はできれば避けたいとの意向であった。翌日、D精神保健福祉士は病棟での多職種チームによるカンファレンスに臨み、Cさんへの援助内容について提案した。

多職種チームの援助によって退院したCさんは、デイケアに週3日通い始めた。通所当初はメンバーとの交流も少なく、プログラム参加も消極的であった。ある日、就職した元メンバーがデイケアに顔を出し、働く生活について生き生きと話していた。それを聞いたCさんはとても驚き、担当のE精神保健福祉士に、「私なんかなんにもできていないし、とてもあんな人にはなれない」とポツリとつぶやいた。

その後、Cさんは少しずつプログラムに参加するようになり、メンバーとの交流も増えていった。処理能力の低さや緩慢な動作がありながらも、6か月後にはミーティングの司会を担当するまでになった。ある時、E精神保健福祉士との面接でCさんは、「この歳だけど、私も一度でいいから会社勤めをしてみたいんです」と語り、就職の意欲を示した。(※3)

次の記述のうち、(※3)の時にE精神保健福祉士がCさんに話した内容として、適切なものを1つ選びなさい。
  • 「プログラムに袋詰め作業を取り入れて、作業スピードの向上を図りましょう」
  • 「就労継続支援B型事業所なら働けるので、来週見学に行きましょうか」
  • 「同じ障害があっても働いている方から、困難を乗り越えた経験を聞きましょう」
  • 「服薬が自己管理できるようになったら、仕事を考えましょう」
  • 「就職して再発する方がたくさんいます。今の生活を楽しみませんか」

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は3です。
Cさんはプログラムを通して、自己効力感が回復し、「会社勤めをしたい」という意欲が出てきたと考えられます。Cさんの意欲や希望を尊重し、またCさんが回復過程にある当事者の姿を見ることは、病気そのものの改善にとどまらない、「リカバリー」に対する支援として有効な方法であると考えられます。

1. Cさんに「会社勤め」をしたいという意欲が出てきたのに対し、軽作業のスピード向上を求めるのは、Cさんの希望や自己決定を尊重しているとは言えません。

2. 就労継続支援B型事業所での活動も将来の就職には役に立つ方法の一つとは考えられますが、雇用契約を結ばない形での働き方になることや、B型事業所のみを勧めていることから、Cさんの自己決定がしっかりと尊重されているとは言えません。まずは、会社勤めをしたいというCさんの意欲を尊重して受け止め、その上でB型事業所も含めた様々な方法をCさんと共に探っていくことが望ましいと考えられます。

4. 服薬管理も就労に向けて大事なポイントではありますが、そうした改善が必要な部分の前に、まずは就業の意欲が出てきたという肯定的な側面を重視し、就業がCさんの中で現実的なものとなるような働きかけをしていくことが、Cさんの自己効力感を高め、今後の「リカバリー」にも大きく役立つと考えられます。

5. 精神障害の再発を防ぐために、Cさんの希望である就職の機会が失われることは、「リカバリー」の概念に大きく反するものです。障害はあくまで個人の一部であり、障害があったとしても自己決定を行いながら、人生における希望を叶えていくための支援を行うことが重要であると考えられます。

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02

正解は3です。

1.Cさんは会社勤めをしてみたいと話しており、袋詰め作業を取り入れ、作業スピードの向上を図ることの必要性は読み取れません。Cさんの希望を尊重した支援が必要となります。

2.就労継続支援B型事業所とは、一般就労に結びつかなかった障害者を対象に、就労の機会や生産活動の機会を提供する事業所のことです。Cさんは会社勤めをしてみたいと話しており、就労継続支援B型事業所の見学に行くことは、Cさんの自己決定を尊重しているとは言えません。

3.同じような立場から困難を乗り越え、働いている人の話を聞くことは、具体的なイメージを描き、就労の準備に繋がるため、有効な支援と言えます。会社勤めをしたいと話すCさんの自己決定を尊重する支援でもあり、適切と言えます。

4.服薬管理は重要ですが、Cさんが服薬管理ができていないという記述はありません。また、就労の意欲が出てきたCさんに対して、選択肢のような発言をすることは、Cさんの就労意欲を削ぐ可能性があります。まずはCさんの肯定的な側面を重視し、支援を行うことが大切です。

5.選択肢のような発言は、会社勤めをしたいというCさんの意思に反するものであり、Cさんの自己決定が尊重されていません。まずはCさんの就労に対する意欲を尊重することが大切です。

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03

正解は、 です。

1 Cさんが徐々に回復し、「会社勤めをしてみたい」と意欲を示した場面です。Cさんの意向を踏まえ、現在の作業スピードの向上よりも、今後の展開を考えていく必要があります。

2 「会社勤めをしてみたい」と話すCさんに対して、「就労継続支援B型事業所」のみに絞って見学に行くことを勧めることは適切ではありません。具体的に、Cさんがどのような仕事や働き方をしたいかなどをアセスメントし、情報提供していくことも必要です。

3 Cさんが働くことに対して意欲が出てきたところですので、まずはCさんと同じように障害を持ちながら働いている方の話を聞くことは適切です。話を聞いてみた後に、再度Cさんの意向を確認し、次のステップに進んでいきましょう。

4 Cさんが働くことに対して意欲が出てきたところですので、服薬管理が自己管理できるようになったらと先延ばしすることは適切ではありません。

5 Cさんの意向を尊重していない支援であると言えます。E精神保健福祉士には、Cさんの意向を尊重すること、どのようにすれば再発を防ぐことができるかなどをCさんと一緒に考えることなどが求められます。

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