精神保健福祉士の過去問
第21回(平成30年度)
精神障害者の生活支援システム 問162

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

第21回(平成30年度) 精神保健福祉士国家試験 精神障害者の生活支援システム 問162 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。

〔事例〕
Cさん(25歳、男性)は、18歳(大学1年生)の時に駅の階段から転落し、脳挫傷による高次脳機能障害と診断された。

Cさんは、大学で障害学生支援のサポートを受け、無事に卒業し地元企業に就職した。ところが、頼まれたことをすぐに忘れたり、作業の手際が悪かったりすることから、上司に注意されることが続いた。Cさんは、就職後、半年で出社できなくなり退職した。Cさんは家に引き籠り、「あの時死んでおけばよかった」と母親に訴えるようになった。母親から相談を受けたV病院の医師は、同病院の職員で「障害者総合支援法」に基づく高次脳機能障害者の社会復帰のために専門的相談支援を行うD支援コーディネーター(精神保健福祉士)を紹介した。(※2)

母親の強い勧めで、V病院に出向いたCさんは、D支援コーディネーターと話をするなかで、以前は簡単にできたことがうまくできないいらだちや、就労に挑戦したいという気持ちを打ち明けるようになった。仕事に対して意欲的になったCさんは、W事業所を利用し、一般企業での就職を果たした。
しかし、Cさんは、新しい職場になかなか馴染めず孤立してしまい、家でも母親に向かって大声で怒鳴るようになった。Cさんの支援を行っていたW事業所の職員は、Cさんの自宅や会社を訪問し連絡調整を図った。これらの働き掛けもあり、上司や同僚もCさんの障害への理解を深め、Cさんも会社に少しずつ馴染んでいった。Cさんは、両親とも穏やかな時間を持てるようになった。

次のうち、D支援コーディネーターの業務が位置づけられる事業(※2)として、最も適切なものを1つ選びなさい。
  • 就労移行支援事業
  • 日常生活自立支援事業
  • 自立相談支援事業
  • 就労準備支援事業
  • 地域生活支援事業

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

正解は5です。

1.就労移行支援事業とは、障害者総合支援法の訓練等給付に位置づけられ、就労を希望する障害者で、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者に対して、生産活動や職場体験などの活動の機会の提供などの訓練、求職活動に関する支援などを行います。対象者は原則65歳未満ですが、2018年4月から、65歳以上の者も要件を満たせば利用可能となりました。利用期間は原則2年間ですが、必要性が認められた場合に限り、最大1年間の更新が可能です。この事業に配置されるのは、生活支援員や就労支援員などであり、支援コーディネーターではありません。

2.日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者のうち判断能力が不十分な者が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助や苦情解決制度の利用援助などを行うものです。この事業に配置されるのは、専門員と生活支援員であり、支援コーディネーターではありません。

3.自立相談支援事業とは、生活困窮者自立支援法における必須事業であり、就労その他の自立に関する相談支援や、事業利用のためにプランの作成などを行います。この事業に配置されるのは、主任相談支援員や、相談支援員、就労支援員であり、支援コーディネーターではありません。

4.就労準備支援事業とは、生活困窮者自立支援法における任意事業(ただし努力義務)であり、就労に必要な訓練を行うものです。この事業では、支援コーディネーターは配置されていません。

5.障害者総合支援法には、自立支援給付と地域生活支援事業があります。地域生活支援事業は、実施主体により市町村地域生活支援事業と、都道府県地域生活支援事業に分けられます。都道府県地域生活支援事業の中には、専門性の高い相談支援のひとつである「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業」があり、この事業には、支援コーディネーターが配置されます。

参考になった数61

02

障害者総合支援法に基づく高次脳機能障害者の社会復帰に関する問題です。

1.×です。就労を希望する障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれるものにつき、生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談その他の必要な支援を行います。この事業には支援コーディネーターは配置されません。

2.×です。日常生活自立支援事業は、認知症や知的障害などで、判断能力が低下した人が、日常生活の財産管理や契約行為を、都道府県社会福祉協議会が実施主体となって、個別計画に基づき支援する事業です。事例のケースには該当せず、支援コーディネーターの配置もありません。

3.×です。自立相談支援事業は、生活に困窮している相談者に対して、課題やニーズを整理し、個別の計画に基づいて支援をおこなう事業です。生活困窮者支援制度に位置づけられており、主に救貧対策事業となります。支援コーディネーターの配置はありません。

4.×です。就労準備支援事業は、就労に向けた準備が整っていない人を対象に、従事するための準備能力を個別に計画、訓練して、基礎的な段階の支援を集中的に行います。就労準備支援担当者が配置されていますが、事例には当てはまりません。

5.○です。地域生活支援事業は、市町村と都道府県それぞれで実施されています。都道府県地域生活支援事業は専門性の高い相談支援事業となり、具体的には発達障害、高次脳機能障害に関するものなどについて、必要な情報提供等を行います。そこに配置される支援コーディネーターは、地域ネットワークを構築しながら、利用者の自立した生活のために活動しています。

参考になった数22

03

 Cさんは家に引きこもり、「あの時死んでおけばよかった」と母親に訴えるようになりました。母親から相談を受けたV病院の医師は、同病院の職員で「障害者総合支援法」に基づく高次脳機能障害者の社会復帰のために専門的相談支援を行うD支援コーディネーター(精神保健福祉士)を紹介しました。
このD支援コーディネーターの業務は、都道府県地域生活支援事業の中の高次脳機能障害支援普及事業にあたるため、正解は5となります。

1.×
 就労移行支援事業は、一般就労を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労などが見込まれる障害者が対象となります。一般就労等への移行に向けて、事業所内での作業などを通じた就労に必要な訓練、適性に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援などを行います。通所によるサービスを原則としつつ、個別支援計画の進捗状況に応じ、職場実習などによるサービスを組み合わせた支援を行います。主な人員としてサービス管理者、職業指導員、生活支援員、就労支援員などが配置されます。

2.×
 日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などのうち判断能力が不十分な者に対して、福祉サービスの利用援助や日常的金銭管理サービス、書類等の預かりサービスを行い、地域で安心した生活を継続していけるように支援する事業のことです。判断能力が不十分な者とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むために必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な者のことで、社会福祉施設入所者や入院患者も含まれます。主な人員として、専門員(原則として社会福祉士、精神保健福祉士などであって、一定の研修を受けたもの)、生活支援員などが配置されます。

3.×
 自立相談支援事業は、生活困窮者に対し、就労その他の自立に関する相談支援、事業利用のためのプラン作成などの支援を行う必須事業です。福祉事務所設置自治体のほか、社会福祉協議会や社会福祉法人、NPO法人などへの委託も可能となっています。生活困窮者とは、現在生活保護を受給していないが、生活保護に至る可能性のある者で、自立が見込まれる者をいいます。主な人員として、主任相談支援員、相談支援員、就労支援員等が配置されます。

4.×
 就労準備支援事業は、直ちに一般就労への移行が困難な生活困窮者に対し、一般就労に従事する準備としての基礎能力の形成を、計画的かつ一貫して支援する任意事業です。常勤換算法により、支援対象者の数を15で除した数以上の就労準備支援担当者を配置します。事業実施中は責任者を常駐させる必要があるため、そのうち1人以上は常勤としています。

5.○
 地域生活支援事業は、市町村地域生活支援事業と都道府県地域生活支援事業があります。都道府県地域生活支援事業では、専門性の高い相談支援や広域的な対応が必要な事業を行っており、その中に高次脳機能障害支援普及事業も含まれます。支援拠点機関(リハビリテーションセンター、大学病院、県立病院等)に相談支援コーディネーター(社会福祉士、保健師、作業療法士等、高次脳機能障害に対する専門的相談支援を行う者)を配置し専門的な相談支援、関係機関との連携、調整を行っています。

参考になった数20