精神保健福祉士の過去問
第22回(令和元年度)
心理学理論と心理的支援 問10
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問題
第22回(令和元年度) 精神保健福祉士国家試験 心理学理論と心理的支援 問10 (訂正依頼・報告はこちら)
愛着理論に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
- 乳幼児期の愛着の形成により獲得される内的ワーキングモデルが、後の対人関係パターンに影響することは稀(まれ)である。
- ストレンジ・シチュエーション法では、虐待など不適切な養育と関係のある愛着のタイプを見いだすことは難しい。
- 愛着のタイプに影響を及ぼす要因には、養育者の子どもに対する養育態度だけでなく、子ども自身の気質もある。
- 子どもの後追い行動は、愛着の形成を妨げる要因になる。
- 乳幼児期の子どもの愛着対象は、母親に限定されている。
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この過去問の解説 (3件)
01
ボウルビーが提唱した愛着形成(アタッチメント)には、「安定型」「回避型」「アンビバレント型」「無秩序型」の大きく分けて4つのタイプがあります。
どの愛着のタイプになるのかは養育者のかかわり方も大きな影響を与えますが、選択肢にあるように、赤ちゃん自身の気質も少なからず影響を与えます。
愛着形成はその後の人生にも大きく関わります(例えば、パーソナリティ障害の人の多くは愛着に問題があるといわれています)ので、社会福祉士を志す者として、確実に学習したい内容です。
各選択肢については、以下の通りです。
1.内的ワーキングモデル(内的作業モデル)とは、乳幼児期に愛着対象者との相互作用によって形成されるものです。
乳幼児期に愛着対象者(母親などの主たる養育者)と応答的なコミュニケーションなどを通じ、赤ちゃんは安心感や信頼感を覚え、愛着を形成していきます。
その際に赤ちゃんは、自分は守られている・他者は自分を助けてくれる、といった自己や他者への認識を覚えていきます。
内的ワーキングモデルを分かりやすくいうと、これらの心の中に植えられる他者や自己への価値観のことをいいます。
この内的ワーキングモデルが不適切であると「自分は価値のない人間だ」「大人は誰も助けてくれない」といった価値観に育ち、当然ながら将来になっても影響を及ぼすのです。
2.ストレンジ・シチュエーション法とは、エインズワースが開発した愛着形成のタイプを測るための実験法です。
実験の流れとしては、実験室に乳児と母親を入室させ遊ばせます。その後、母親が退出し代わりに見知らぬ女性を入室させます。最後に、見知らぬ女性が退出し、再び母親が入室するというものです。
この実験で、乳児が母親や見知らぬ女性に対しどのような反応を見せるのかで、愛着のタイプが分かります。
4.後追い行動は、愛着形成に繋がります。
5.愛着の対象は母親に限定されません。
母親でなくとも、父親などの親族、乳児院や児童養護施設の職員など、主たる養育者との間に形成されていきます。
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02
愛着理論とは、人間の発達において「愛着」は重要な概念であるとBowlby,Jhon(ボウルビィ)が提唱した理論です。
愛着は、「特定の対象との情緒的な結びつきを指し、乳幼児が母親との情緒的な相互作用を通して形成される、母親と確固たる絆である」とされます。
乳幼児期における愛着の形成は、子どもの人間に対する基本的信頼感をはぐくみ、その後の心の発達、人間関係・社会関係に大きく影響を与えるものと言われています。
1.誤答
乳幼児期の内的ワーキングモデルは、後の対人関係パターンに影響します。
内的ワーキングモデルとは、「母親との愛着が内在化し、他者との関係の取り方として機能するモデル」のことをさします。内的ワーキングモデルは、加齢とともに安定性を増し、社会的行動・対人関係の基礎となります。
2.誤答
ストレンジ・シチュエーション法(SSP)は、エインズワースが考案した愛着の測定法です。
ストレンジ・シチュエーション法では、虐待など不適切な養育と関係のある愛着のタイプを見出すことができます。
愛着には、回避型(Aタイプ)、安定型(Bタイプ)、葛藤型/アンビバレント型(Cタイプ)、無秩序型(Dタイプ)の4つに類型化しています。虐待などの不適切な養育と関係あるのは、無秩序型(Dタイプ)として現れます。
3.正答
愛着のタイプに影響を及ぼす要因には、もちろん第一養育者が子どもに対する養育態度が大きいですが、子ども自身の気質(早産や障害など)によっても愛着のタイプに影響を及ぼす要因となります。
4.誤答
子どもの後追い行動は、愛着行動の一つで、ストレスのある状況で特定の対象への親密さを求めるために行っていると考えらえれる行動です。子どもの後追い行動は、愛着が形成されている段階と言えます。
5.誤答
乳幼児期の愛着の対象は第一養育者です。多くは第一養育者は母親になりますが、父親や祖父母など必ずしも母親に限定されたものではありません。
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03
愛着の形成には養育者の子どもに対する態度だけでなく、扱いやすい・引っ込み思案・気難しいといった子ども自身の気質も関係します。
その他の選択肢の解説は以下のとおりです。
1→乳幼児期に養育者との間に形成される内的ワーキングモデルは、後の対人関係パターンにも影響を及ぼします。
例えば愛着対象である養育者が子どもの要求にうまく応じない・無視する・罰を与えるといったことが続けば、後に子ども自身の認知や感情、対人関係におけるプロセスなどにも影響を及ぼすと言われています。
2→ストレンジ・シチュエーション法は、アメリカの心理学者・エインズワースらが開発した実験観察法のひとつです。
プレイルームに子どもと母親が入室した後、赤の他人が入室。母親だけが退出し、プレイルームに戻ってくるまでの子どもの様子を観察してタイプ分けするというものです。
そのタイプは安定型・回避型・葛藤型に分類され、母親や見知らぬ人に目もくれず一人遊びを続ける「回避型」、母親が入室すると泣き続けたり暴れたりする「葛藤型」では、何らかの理由による母親との間の愛着未形成や子どもとの不適切な関わりが考えられます。
さらに、後に追加された「無秩序型」の子どもは母親に対しての反応が安定せず、虐待や母親の精神疾患が考えられます。
4→養育者の姿が見えなくなると泣き出したり探し回ったりする、後追い行動。養育者を安心できる特別な存在だと認識している証であり、愛着行動のひとつです。
5→乳幼児期の愛着対象は母親に限定されず、環境によって父親や祖父母、その周囲の人にもなり得ます。
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