精神保健福祉士の過去問
第23回(令和2年度)
精神保健福祉相談援助の基盤 問113
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問題
第23回(令和2年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉相談援助の基盤 問113 (訂正依頼・報告はこちら)
次の事例を読んで、問題について答えなさい。
〔事例〕
D精神保健福祉士は、処方薬への依存のためにU精神科病院の薬物依存症外来に通うEさん( 26歳、女性)が減薬を目的に入院したことを契機に担当となった。主治医から話を聞いたり電子カルテの情報を確認したりしたD精神保健福祉士は、Eさんが、幼少期の実母による過酷な虐待や、思春期における性的被害の経験を有していることを把握した。そこで、薬物問題に加え、過去の逆境体験に対する理解や、その体験が現在に及ぼす影響をも視野に入れた支援が必要であると考えた。(※ 1 )
入院時のEさんは挑発的態度を繰り返しており、病棟スタッフとの信頼関係を築けずにいた。D精神保健福祉士は、過去の体験に基づく強い人間不信や自己否定感が根底にあることを読み取り、温かく落ち着いた関わりを続けた。その結果、Eさんは、主治医とD精神保健福祉士には心を許すようになり、「死にたい」と苦しい胸の内を打ち明けるようにもなった。
Eさんは、病棟内のプログラム参加には消極的で、ルール違反ばかり繰り返していた。スタッフに注意されると、暴言を吐いたり自殺をほのめかしたりするので、スタッフの間にはEさんに対するネガティブな感情や不全感が蓄積され、いつしか病棟チーム全体が機能不全に陥りつつあった。そこで、D精神保健福祉士はケアカンファレンスでEさんを取り上げることを提案した。その中で病状や治療方針を共有したり、スタッフがEさんとの関わりの中で受けた傷つきや恐れの気持ちを表出できるよう働きかけたりした。また、相互の役割を確認し、日々の苦労をスタッフ間でねぎらい合えるようにした。その結果、病棟チームにあった刺々しい雰囲気が薄れ、Eさんの言動も徐々に落ち着きをみせるようになった。
D精神保健福祉士は、Eさんの退院後の安全な生活を重視するとともに、過去に植え付けられた無力感や自己否定感から解放されることを目標とした。そして、もう一度自分の人生に対するコントロール感を取り戻すために、ストレングスに着目した支援を大切にしたいと考えていた。
次のうち、(※ 1 )でD精神保健福祉士が意識したEさんに対するアプローチとして、適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
D精神保健福祉士は、処方薬への依存のためにU精神科病院の薬物依存症外来に通うEさん( 26歳、女性)が減薬を目的に入院したことを契機に担当となった。主治医から話を聞いたり電子カルテの情報を確認したりしたD精神保健福祉士は、Eさんが、幼少期の実母による過酷な虐待や、思春期における性的被害の経験を有していることを把握した。そこで、薬物問題に加え、過去の逆境体験に対する理解や、その体験が現在に及ぼす影響をも視野に入れた支援が必要であると考えた。(※ 1 )
入院時のEさんは挑発的態度を繰り返しており、病棟スタッフとの信頼関係を築けずにいた。D精神保健福祉士は、過去の体験に基づく強い人間不信や自己否定感が根底にあることを読み取り、温かく落ち着いた関わりを続けた。その結果、Eさんは、主治医とD精神保健福祉士には心を許すようになり、「死にたい」と苦しい胸の内を打ち明けるようにもなった。
Eさんは、病棟内のプログラム参加には消極的で、ルール違反ばかり繰り返していた。スタッフに注意されると、暴言を吐いたり自殺をほのめかしたりするので、スタッフの間にはEさんに対するネガティブな感情や不全感が蓄積され、いつしか病棟チーム全体が機能不全に陥りつつあった。そこで、D精神保健福祉士はケアカンファレンスでEさんを取り上げることを提案した。その中で病状や治療方針を共有したり、スタッフがEさんとの関わりの中で受けた傷つきや恐れの気持ちを表出できるよう働きかけたりした。また、相互の役割を確認し、日々の苦労をスタッフ間でねぎらい合えるようにした。その結果、病棟チームにあった刺々しい雰囲気が薄れ、Eさんの言動も徐々に落ち着きをみせるようになった。
D精神保健福祉士は、Eさんの退院後の安全な生活を重視するとともに、過去に植え付けられた無力感や自己否定感から解放されることを目標とした。そして、もう一度自分の人生に対するコントロール感を取り戻すために、ストレングスに着目した支援を大切にしたいと考えていた。
次のうち、(※ 1 )でD精神保健福祉士が意識したEさんに対するアプローチとして、適切なものを1つ選びなさい。
- フェミニストアプローチ
- 課題中心アプローチ
- ナラティブアプローチ
- トラウマインフォームドアプローチ
- 解決志向アプローチ
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この過去問の解説 (3件)
01
1.×です。フェミニストアプローチとは、1980年代頃に生まれ、ドミネリやマクリードらによって提唱されました。内容としては、女性の体験を社会的及び政治的に位置づけ、女性の社会的抑圧からの解放に焦点を当て、社会の変革を意図していくことが挙げられます。
2.×です。課題中心アプローチとは、1970年代頃に生まれ、リードやエプスタインらによって提唱されました。これは長期援助への批判から、短期の計画的援助として体系化された背景があります。利用者の生活上の具体的課題に焦点を当てて、利用者と共に問題解決をしていくアプローチです。
3.×です。ナラティブアプローチとは1990年代頃に生まれ、ホワイトやエプストンらによって提唱されました。社会構成主義の概念を受けて、体系化された背景があります。利用者が語る主観的な物語を重視していき、援助者と一緒に新しい意味の世界を創り、問題解決をしていくアプローチです。
4.○です。事例文章に書かれてある通り、過去に経験した出来事からトラウマを抱いている可能性があります。この設問のアプローチはトラウマがある事を視野に入れて、支援をしていきます。
5.×です。解決志向アプローチとは1980年代頃に生まれ、バーグやシェザーらによって提唱されました。これは問題の原因や結果ではなく、利用者が持つ具体的な解決イメージを重視し、問題が解決した状態を短期間で実現していきます。
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02
1、✕ フェミニストアプローチとは「女性である」という事が理由で行われる性的差別や性的抑圧からの解放を目指し、差別や抑圧をされている女性の持つ力を伸ばす支援の事を言います。Eさんは性的被害を含めた虐待を過去に受けており、それらの経験が現在に及ぼす影響が強いと考えられ、このアプローチ方法は適切とは言えません。
2、✕ 課題中心アプローチは、クライエントが自覚している課題を、短期間で解決できるよう支援を行うアプローチ方法です。現時点でEさんが明確に自分自身の課題を自覚しているという内容は書かれていないため、適切なアプローチ方法とは言えません。
3、✕ ナラティブアプローチとは、クライエントが自分が置かれている状況をクライエント自身の言葉で語ってもらい、クライエント自身の抱えている問題を外在化するアプローチ方法です。その上でその問題の捉え方を変容させる事によって、その問題に対する新たな視点を見出していく事に繋げていくアプローチです。過去の逆境体験やそれが現在に及ぼす事に対する理解は不可欠ですが、その体験を語ってもらう事はD精神保健福祉士とEさんの間に信頼関係が必要と考えられるため、適切なアプローチ方法とは言えません。
4、〇 トラウマインフォームドアプローチとは、過去に恐怖体験など精神的なショックを受けた事により、クライエント自身にトラウマがあるのではないかと考え、その体験により生じたトラウマを理解し、それに対する支援を行う事を言います。本事例ではEさんが過去に受けた虐待などによりトラウマが生じている可能性が考えられるため、適切なアプローチであると言えます。
5、✕ 解決志向アプローチとは、クライエント自身の問題が解決した後の未来のイメージに焦点を当て、その未来に向けてクライエント自身が力を発揮できるよう、短期間で支援する事を言います。現時点ではEさんの抱える問題を時間をかけて理解する段階であり、短期間で結果を出す事を目的とする解決志向アプローチを用いる事は適切とは言えません。
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03
正解は、 4 です。
1.✕
フェミニストアプローチは、性役割の開放を目指すアプローチです。設問では、虐待体験というトラウマの影響を考えたアプローチが必要です。
2.✕
課題中心アプローチは、課題に対してクライエントとともに計画を立てて解決に向かっていくアプローチです。設問の状況でこのアプローチを使用する段階ではないと考えます。
3.✕
ナラティブアプローチは、クライエントが現状を捉えている見方が一つの物語として語られることによって、それが変容していくことを目指すアプローチです。設問の状況でこのアプローチを使用する段階ではないと考えます。
4.〇
選択肢の通りです。Eさんのトラウマ体験やその影響について支援することが大事です。
5.✕
解決志向アプローチは、クライエントの強さや能力を活かして問題に取り組むことを目指すアプローチです。過去の逆境体験に対する理解をするために、設問の状況でこのアプローチを使うのは適切ではないと考えます。
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