精神保健福祉士の過去問
第23回(令和2年度)
精神保健福祉相談援助の基盤 問117
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問題
第23回(令和2年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉相談援助の基盤 問117 (訂正依頼・報告はこちら)
スーパービジョンに向け、自分の関わりを振り返った精神保健福祉士( 34歳、女性)の記録(事例)を読んで、問題について答えなさい。
〔事例〕
Fさん( 32歳、女性)は、私が勤務する精神科病院に18歳から統合失調症で入院していた。私が担当になったのはFさんが22歳の春だった。入院中のFさんは年配者と過ごすことが多かったため、ロールモデルにできる人がおらず自分の将来像を描けないでいた。そのため、同世代である私は会うたびに話しかけ、Fさんの将来について語ってもらった。このことに刺激を受けたFさんは、次第に自分自身の存在を認め、退院を考えるようになった。
Fさんが退院したのは28歳の時だった。Fさんは受診時には必ず相談室に顔を見せ、これからの夢を語っていった。私はFさんとの関わりを通し、信頼関係の構築を実感できるようになった。この頃Fさんは、経済的自立をするために働きたいと話していた。私は夢の実現への第一歩として、障害者就業・生活支援センターを紹介し、同行訪問することにした。面接の際Fさんは、「仕事がしたい」と伝えることはできたが、具体的な業種などの説明ができなかった。
Fさんは希望する業種の説明ができず落ち込んでいたが、普段は説明できていることや、夢や希望を持ち頑張れていることを伝えた。そして、働きたいという意欲を持っていることはFさんの強みであり、それが自己実現につながることをFさんに説明した。(※ 2 )
Fさんとの出会いから10年が過ぎ、私は病院から地域活動支援センターに異動し、Fさんと会う機会も減っていた。ある日のこと、Fさんから手紙が届いた。そこには、仕事も生活も順調であること。また、「結婚を前提に付き合っている人がいるが、もし子どもができたらどうすればいいか」と悩みが記されていた。その内容は、結婚や子どもができるかもしれないという将来への希望と、病気を抱えながら育てることへの不安、服薬による胎児への影響を心配しているものであると理解できた。
次のうち、(※ 2 )のFさんと「私」の関係について、適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Fさん( 32歳、女性)は、私が勤務する精神科病院に18歳から統合失調症で入院していた。私が担当になったのはFさんが22歳の春だった。入院中のFさんは年配者と過ごすことが多かったため、ロールモデルにできる人がおらず自分の将来像を描けないでいた。そのため、同世代である私は会うたびに話しかけ、Fさんの将来について語ってもらった。このことに刺激を受けたFさんは、次第に自分自身の存在を認め、退院を考えるようになった。
Fさんが退院したのは28歳の時だった。Fさんは受診時には必ず相談室に顔を見せ、これからの夢を語っていった。私はFさんとの関わりを通し、信頼関係の構築を実感できるようになった。この頃Fさんは、経済的自立をするために働きたいと話していた。私は夢の実現への第一歩として、障害者就業・生活支援センターを紹介し、同行訪問することにした。面接の際Fさんは、「仕事がしたい」と伝えることはできたが、具体的な業種などの説明ができなかった。
Fさんは希望する業種の説明ができず落ち込んでいたが、普段は説明できていることや、夢や希望を持ち頑張れていることを伝えた。そして、働きたいという意欲を持っていることはFさんの強みであり、それが自己実現につながることをFさんに説明した。(※ 2 )
Fさんとの出会いから10年が過ぎ、私は病院から地域活動支援センターに異動し、Fさんと会う機会も減っていた。ある日のこと、Fさんから手紙が届いた。そこには、仕事も生活も順調であること。また、「結婚を前提に付き合っている人がいるが、もし子どもができたらどうすればいいか」と悩みが記されていた。その内容は、結婚や子どもができるかもしれないという将来への希望と、病気を抱えながら育てることへの不安、服薬による胎児への影響を心配しているものであると理解できた。
次のうち、(※ 2 )のFさんと「私」の関係について、適切なものを1つ選びなさい。
- アドボカシー
- ヘルパー・セラピー原則
- パターナリズム
- パートナーシップ
- コンフリクト
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この過去問の解説 (3件)
01
正解は、 4 です。
5つの選択肢のなかで、Fさんと精神保健福祉士のやり取りの関係をみると、選択肢 4.が適切であると考えます。
1.「アドボカシー」とは、ソーシャルワーカーが相談者の生活と権利を擁護するために、支援する過程で積極的に代弁を行っていく方法です。やり取りをみると、精神保健福祉士は代弁をしていません。
2.「ヘルパー・セラピー原則」とは、援助する人が援助される人よりもっと多くのものを得るという考え方で、セルフヘルプ関係で活性化できるとされています。この考え方は、セルフヘルプグループ(病気や障がいなどの生活上の困難を、共通の困難さを抱えて生きる人たちと出会い、対話や関わりを通じて、自分でその困難を対処したり、相互に支援を行うために組織されたグループ)の活動において用いられる考え方の一つです。Fさんと精神保健福祉士の関係は、セルフヘルプグループの関係ではありません。
3.「パターナリズム」とは、医学的な見方から相談者の利益や保護を優先させるため、相談者の自由意志や自己決定を排除した方向で支援を進めたり、過保護にかかわったりすることをいいます。やり取りでは、Fさんが落ち込んでいましたが、精神保健福祉士がFさんの強み(ストレングス)を説明して元気づける内容であり、「パターナリズム」の関係ではありません。精神保健福祉士は、パワーレスの状態にあるFさんを元気づけることによって、自由意志や自己決定ができるように働きかけているとみることができます。
4.「パートナーシップ」とは、相談者と援助者が相互の信頼関係(ラポール)に基づいた対等な関係のことをいいます。やり取りでは、相談者と援助者がお互いの思い・考えを話すことができ、対等な関係を作ることができているとみることができます。
5.「コンフリクト」とは、個人の内面に、2つ以上の共存できない思い・考えなどが同時にあり、そのどちらを選択するかに困惑する心的な葛藤のことをいいます。やり取りでは、そのような「コンフリクト」はみられません。
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02
1、✕ アドボカシーは「権利擁護」と訳され、自分の意思を他者にうまく伝えられない人の権利や意思を他者が代弁し、その権利を擁護する事を言います。本事例においては、Fさんは障害者就業・支援センターの職員に対して「仕事がしたい」という意思を伝える事は出来ましたが、具体的な業種などの説明が出来なかった事に対して落ち込んでいるという記載があります。その事を障害者就業・支援センターの職員に伝えているという記述はなく、他者にFさんの意思を伝えるという行動はしていないため、選択肢の内容は当てはまりません。
2、✕ ヘルパー・セラピー原則とは、リースマンが提唱した「援助を与えるものが最も援助を受ける」というものです。この原則において支援者が得るものとは、クライエントからの感謝の言葉や善行を行った事に対する満足感などが当てはまりますが、Fさんとのやりとりの間にそのような様子は見られていません。
3、✕ パターナリズムとは、クライエントの意思にかかわらず、支援者がクライエントの利益になると考える行動を実行する事を指します。本事例において精神保健福祉士はFさんの行動を支持しており、Fさんの意思や行動を否定する内容はありません。
4、〇 パートナーシップとはクライエントと支援者の間に築かれた信頼関係を基に、協働して目標を達成するよう共に取り組んでいく事を指します。本事例では「仕事がしたい」というFさんの目標を達成するため、自信を喪失しているFさんに寄り添い、その行動を支持している精神保健福祉士の行動が見られていますので、選択肢の内容は適切であると考えられます。
5、✕ コンフリクトとは「衝突・対立」などと訳されます。本事例においてFさんと精神保健福祉士が対立している場面は見られておらず、不適切な内容です。
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03
正解は、4 です。
1 「アドボカシー」とは、「権利擁護」を意味します。ここでは、精神保健福祉士がFさんの思いを代弁しているといった記述は見られないため、不適切です。
2 「ヘルパー・セラピー原則」とは、支援される側のみではなく支援者も支援することによって得ているものがあるという考え方です。この場面ではそのような記述はありませんので、不適切です。
3 「パターナリズム」とは、強い立場にある人が本人の利益のために、行動や意思決定に干渉することです。精神保健福祉士は、Fさんの意思決定をしているわけではありませんので、不適切です。
4 「パートナーシップ」とは、信頼関係を基本とし、共通の目的に向かって協力し合う関係のことを言います。ここで、Fさんは自分の悩みを話し、精神保健福祉士はそれを受け止め、Fさんの強みを返していることからパートナーシップは築けていると考えることができます。
5 「コンフリクト」とは、衝突を意味します。ここで衝突している様子は見られませんので、不適切です。
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