精神保健福祉士の過去問
第25回(令和4年度)
権利擁護と成年後見制度 問7

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問題

第25回(令和4年度) 精神保健福祉士国家試験 権利擁護と成年後見制度 問7 (訂正依頼・報告はこちら)

事例を読んで、消費者被害に関する次の記述のうち、X地域包括支援センターのC社会福祉士の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Dさん(70歳)は、認知症の影響で判断能力が低下しているが、その低下の程度ははっきりしていない。宝石の販売業者Yは、Dさんが以前の購入を忘れていることに乗じ、2年にわたって繰り返し店舗で40回、同じ商品を現金で購入させ、その合計額は1,000万円に及んでいた。E訪問介護員がこの事態を把握し、X地域包括支援センターに所属するC社会福祉士に相談した。
  • Dさんのこれまでの判断を尊重し、Dさんに対し、今後の購入に当たっての注意喚起を行う。
  • Dさんの意向にかかわりなく、宝石の販売業者Yと連絡を取り、Dさんへの宝飾品の販売に当たり、今後は十分な説明を尽くすように求める。
  • Dさんの判断能力が著しく不十分であった場合、C社会福祉士自ら保佐開始の審判の申立てを行う。
  • クーリング・オフにより、Dさん本人にその購入の契約を解除させる。
  • これらの購入につき、消費者契約法に基づく契約の取消しが可能かを検討するため、Dさんのプライバシーに配慮して、消費生活センターに問い合わせる。

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この過去問の解説 (3件)

01

地域包括支援センターの業務の一つとして、高齢者の権利擁護に関する業務が含まれています。地域包括支援センターに配置されている3職種のうち、主に社会福祉士が取り組む業務とされています。

選択肢1. Dさんのこれまでの判断を尊重し、Dさんに対し、今後の購入に当たっての注意喚起を行う。

✕ Dさんの判断能力の低下がどの程度かが現時点では不明ですが、同じ商品を40回、1000万円分購入する事がDさんの本意であったかどうかは疑問となります。Dさんの判断能力について確認した上で、Dさんへの注意喚起だけではなく適切な制度へ繋ぐ事も必要であると考えられます。

選択肢2. Dさんの意向にかかわりなく、宝石の販売業者Yと連絡を取り、Dさんへの宝飾品の販売に当たり、今後は十分な説明を尽くすように求める。

✕ 現状Dさんの判断能力の低下がどの程度かは分かりません。しかし、Dさんの意思を無視して販売業者に連絡を取り説明をするよう求める事は、Dさんの自己決定を阻害する可能性もあります。Dさんに説明しながら、Dさんに不利益となる事を防げるよう関わる必要があると考えられます。

選択肢3. Dさんの判断能力が著しく不十分であった場合、C社会福祉士自ら保佐開始の審判の申立てを行う。

✕ 成年後見制度において、申立が出来る人は限られています。本人や配偶者、四親等内の親族等やDさんの住民票の住所地等を管轄する市町村長などがそれにあたりますが、その中に地域包括支援センターの社会福祉士は含まれていません。そのためC社会福祉士は保佐開始の審判を申し立てる事はできません。

選択肢4. クーリング・オフにより、Dさん本人にその購入の契約を解除させる。

✕ クーリング・オフとは、いったん売買契約を締結した後でも、文書等で申し出る事により一定期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約の解除が出来るという制度の事を言います。本事例の場合はクーリング・オフは契約後8日間の間に申出を行えば契約が解除できると思われますが、最初の契約から2年ほど経過しているため、ほとんどの契約は解除できないと考えられ、適切な対応とは言えません。

選択肢5. これらの購入につき、消費者契約法に基づく契約の取消しが可能かを検討するため、Dさんのプライバシーに配慮して、消費生活センターに問い合わせる。

〇 適切な内容です。消費者契約法では、契約の取消しを求める事が出来る項目が定められています。Dさんの契約内容がそれに該当していれば、契約を取り消す事ができるため、Dさんのプライバシーに配慮しながら消費生活センターへ繋ぐ事は適切な支援内容と言えます。

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02

地域包括支援センターは、介護・医療・保健・福祉などの課題について高齢者をサポートする総合相談窓口です。

選択肢1. Dさんのこれまでの判断を尊重し、Dさんに対し、今後の購入に当たっての注意喚起を行う。

Dさんは認知症によって判断能力が低下しているので、注意喚起しても同様なことが起きる可能性が高いです。

選択肢2. Dさんの意向にかかわりなく、宝石の販売業者Yと連絡を取り、Dさんへの宝飾品の販売に当たり、今後は十分な説明を尽くすように求める。

宝石の販売業者Yと連絡を取るには、Dさんの意向を確認する必要があります。

選択肢3. Dさんの判断能力が著しく不十分であった場合、C社会福祉士自ら保佐開始の審判の申立てを行う。

C社会福祉士が保佐開始の審判の申立することは、配偶者、四親等以内の親族、検察官等ではないので出来ません。

選択肢4. クーリング・オフにより、Dさん本人にその購入の契約を解除させる。

クーリング・オフができるのは通常8日以内の契約です。Dさんの被害は2年にわたっているのでクーリング・オフで契約を解除できないものが多いと思われます。

選択肢5. これらの購入につき、消費者契約法に基づく契約の取消しが可能かを検討するため、Dさんのプライバシーに配慮して、消費生活センターに問い合わせる。

消費者トラブルの専門家である消費生活センターに問い合わせると、トラブルのあっせんなど対応をしてくれることがあります。

参考になった数3

03

認知症の方が消費者被害に遭うことは少なくありません。社会福祉士としては、本人の意向や現状を把握し、他機関と連携することが求められます。

選択肢1. Dさんのこれまでの判断を尊重し、Dさんに対し、今後の購入に当たっての注意喚起を行う。

不適切です。事例に、Dさんは「認知症の影響で判断能力が低下している」とありますので、注意喚起を行っても忘れてしまう可能性が高いと考えられます。そのため、物事の解決にはならないです。

選択肢2. Dさんの意向にかかわりなく、宝石の販売業者Yと連絡を取り、Dさんへの宝飾品の販売に当たり、今後は十分な説明を尽くすように求める。

不適切です。「Dさんの意向にかかわりなく」ではなく、Dさんの意向も確認する必要があります。

選択肢3. Dさんの判断能力が著しく不十分であった場合、C社会福祉士自ら保佐開始の審判の申立てを行う。

不適切です。保佐開始の審判にあたっては、Dさんの意向の確認や親族との相談も重要です。また、C社会福祉士が保佐開始の申立人になることはできません。

選択肢4. クーリング・オフにより、Dさん本人にその購入の契約を解除させる。

不適切です。クーリング・オフを利用するためには、一定の期間内に申し出を行うことが必要です。事例には「2年にわたって」とありますので、難しいと考えることができます。

選択肢5. これらの購入につき、消費者契約法に基づく契約の取消しが可能かを検討するため、Dさんのプライバシーに配慮して、消費生活センターに問い合わせる。

適切です。消費生活センターへ現状と対応について相談することは適切です。また、「Dさんのプライバシーに配慮して」ということもポイントです。

参考になった数3