精神保健福祉士の過去問
第25回(令和4年度)
精神保健福祉相談援助の基盤 問12
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問題
第25回(令和4年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉相談援助の基盤 問12 (訂正依頼・報告はこちら)
次の事例を読んで、問題について答えなさい。
〔事例〕
Fさん(41歳、女性)は、会社員として働いていた25歳の時にW精神科病院を受診し、うつ病と診断された。その後、幾つか通院先を変え、1年前からV精神科クリニックに通っている。ある日、FさんはV精神科クリニックのG精神保健福祉士(以下「Gワーカー」という。)に障害年金の申請に関する相談をした。Fさんとの面接の中で、母親とH社会保険労務士(以下「H社労士」という。)が、申請の手続を進めようとしていることが分かったが、Fさんは、「申請が必要なのか悩んでいるんです」と語った。そこでGワーカーは、「Fさんとお母さんの考えを出し合ってよく話し合いましょう」と話しかけた。(※1)
その後、障害年金の申請について、主治医を交えて四者で面談するために、FさんとH社労士が来院した。面談の中でH社労士は、経済的な基盤ができることが最重要ではないかと発言し、主治医は、継続的な受診が必要で、年金を受給できる状態であると述べた。面談の間、Fさんは押し黙ったままであり、GワーカーはFさんの受給に対する意向や考えを明確にすることが大切だと考え、「Fさんはどう思いますか」と尋ねたところ、「ずっと、迷っています」とつぶやいた。そこでGワーカーは、「Fさんの障害年金に対する思いを皆で詳しく聞いてみませんか」と提案した。(※2)
四者での面談から2週間ほど経過した後、GワーカーはFさんに改めて意向を確認した。「母は今後の生活を考え申請を勧めてくるが、障害者として生きていくということですよね」と話し始め、病気にならなければ違った人生になったかもしれないという思いが語られた。そこでGワーカーは、Fさんに、同じ病気を経験した人と交流できる場を紹介した。交流の場に参加したFさんは、参加者が自分の人生を前向きに捉えており、その場での経験がFさんにとって、将来を考えるきっかけとなった。この体験を通しFさんは、障害年金の申請を自分の権利として積極的に捉えるようになった。この考え方の変化をGワーカーへ伝え、早速、H社労士にも連絡を取り、受診歴や初診時の年金加入条件等を調べてもらうことにした。(※3)
次のうち、事例を通してGワーカーが行ったFさんへの支援の焦点として、適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Fさん(41歳、女性)は、会社員として働いていた25歳の時にW精神科病院を受診し、うつ病と診断された。その後、幾つか通院先を変え、1年前からV精神科クリニックに通っている。ある日、FさんはV精神科クリニックのG精神保健福祉士(以下「Gワーカー」という。)に障害年金の申請に関する相談をした。Fさんとの面接の中で、母親とH社会保険労務士(以下「H社労士」という。)が、申請の手続を進めようとしていることが分かったが、Fさんは、「申請が必要なのか悩んでいるんです」と語った。そこでGワーカーは、「Fさんとお母さんの考えを出し合ってよく話し合いましょう」と話しかけた。(※1)
その後、障害年金の申請について、主治医を交えて四者で面談するために、FさんとH社労士が来院した。面談の中でH社労士は、経済的な基盤ができることが最重要ではないかと発言し、主治医は、継続的な受診が必要で、年金を受給できる状態であると述べた。面談の間、Fさんは押し黙ったままであり、GワーカーはFさんの受給に対する意向や考えを明確にすることが大切だと考え、「Fさんはどう思いますか」と尋ねたところ、「ずっと、迷っています」とつぶやいた。そこでGワーカーは、「Fさんの障害年金に対する思いを皆で詳しく聞いてみませんか」と提案した。(※2)
四者での面談から2週間ほど経過した後、GワーカーはFさんに改めて意向を確認した。「母は今後の生活を考え申請を勧めてくるが、障害者として生きていくということですよね」と話し始め、病気にならなければ違った人生になったかもしれないという思いが語られた。そこでGワーカーは、Fさんに、同じ病気を経験した人と交流できる場を紹介した。交流の場に参加したFさんは、参加者が自分の人生を前向きに捉えており、その場での経験がFさんにとって、将来を考えるきっかけとなった。この体験を通しFさんは、障害年金の申請を自分の権利として積極的に捉えるようになった。この考え方の変化をGワーカーへ伝え、早速、H社労士にも連絡を取り、受診歴や初診時の年金加入条件等を調べてもらうことにした。(※3)
次のうち、事例を通してGワーカーが行ったFさんへの支援の焦点として、適切なものを1つ選びなさい。
- 父権主義の尊重
- 障害の受容
- 社会的役割の確立
- 不正義の解消
- 社会的復権の実現
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この過去問の解説 (3件)
01
Fさんは、当事者同士の交流の場を通して、障害を受け入れ、自分の権利について考えることができています。このことをからGワーカーが行った支援がどのようなことだったかを選ぶことができます。
選択肢のような内容はどこにも見られません。
Fさんは障害年金を受給することを「障害者として生きていくということ」と捉え、悩んでいたという記述がありました。しかし、当事者同士の交流の場を通して、障害を受容していると言うことができます。
「障害年金の申請を自分の権利として捉える」ことは、社会的役割とは言えません。
選択肢のような内容はどこにも見られません。
事例では、「障害年金の受給」が大きなテーマとなっており、社会的復権についての記述はありません。
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02
障害年金の申請に対してためらいがある患者さんに対する精神保健福祉士の働きかけを問う問題です。本人の意思・自己決定、精神保健福祉士の働きかけの意図を意識しながら解答するようにしましょう。
適切ではありません。本人の申請意思の醸成を精神保健福祉士として丁寧に促しており、「障害年金は申請すべき」との価値観を、Fさんに提示・押しつけをしていないので、父権主義(パターナリズム)とはいえません。
適切です。障害年金の申請にためらいがあるFさんの気持ちを丁寧に聞き取り、当事者との交流を通じて、Fさんの自己決定を促したことから、障害受容のための働きかけといえます。「障害年金を受けたら障害者として生きなくてはいけない」という考えから「将来を考えるいいきっかけ」と感じるできたことで、Fさんの障害の受容を一歩進めたといえます。
適切ではありません。Fさんの社会的アイデンティティーの課題を事例から読み取ることはできません。
適切ではありません。障害年金を受給するかしないかはFさんの自由な選択にまかされる問題です。「受給すること」「受給しないこと」が正義に関わる問題にはなりません。
適切ではありません。障害年金を受給するかしないかはFさんの自由な選択にまかされる問題です。障害年金を受給しないとしても、そのことでFさんの社会的な権利が侵害されるわけではありません。
精神保健福祉士が患者に対する働きかけとして、どのような意図をもち行われているのか考える必要があります。
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03
Gワーカーは、障害年金の受給申請を行う事に対してネガティブなイメージを持っていたFさんの気持ちが、自分自身でポジティブな気持ちに変化させられるよう働きかけています。
本設問の正答にたどりつくためには、それぞれの選択肢の用語について理解しておく事も重要となります。
✕ 父権主義の尊重とは「パターナリズム」とも訳されます。パターナリズムとは、強い立場にある人が、弱い立場に置かれている人の利益になると判断した場合、たとえ弱い立場に置かれている人がその行動と別の行動をしたいと考えていても、その行動に無理やり介入し、行動を決定する事を言います。
この時点では障害年金の申請や受給に対して消極的なFさんの思いを知ったGワーカーが、Fさん自身の思いが積極的な方向に変わるように働きかけている事が読み取れるため、父権主義の尊重をしているとは言えません。
〇 障害の受容は、自分自身の障害を悲観するのでなく、ポジティブにその現状を受け入れられるようになった状態の事を言います。Fさんは当初、自身が病気になった事で、今後障害者として生きていく事に抵抗を感じ、障害年金の申請についても消極的でした。しかし、自分と同じ病気を経験した人と交流する事で、障害年金の申請を自身の権利として受け入れる事が出来ています。
障害の受容に焦点を当て、支援を行ったと言えます。
✕ 「社会的役割」とは、ある立場に立つ人が、周囲の人間からその立場においてふさわしいと期待される行動や言動の事を言います。本設問における障害年金の申請は、社会的役割とは異なるため、不適切です。
✕ 「不正義」とは、差別や暴力、環境破壊等の事を言い、それらの解消は重要な事と言えます。しかし、本設問におけるFさんの障害年金の申請についての気持ちを変化させる事に結びついた視点とは言えません。
✕ 社会的復権とは、病院からの退院のみに重点を置くのではなく、クライエントが地域において望む生活を当たり前に送る事が出来るようになる事を指します。本設問においては社会的復権の実現に焦点を当てた支援とは言えません。
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