精神保健福祉士 過去問
第26回(令和5年度)
問91 (精神疾患とその治療 問8)

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問題

精神保健福祉士国家試験 第26回(令和5年度) 問91(精神疾患とその治療 問8) (訂正依頼・報告はこちら)

Dさん(38歳、男性)は、不眠を主訴に精神科クリニックを受診した。医師が不眠の理由を尋ねると、「常に誰かに後を付けられている。道を行く全ての人が、自分のことを話している。自分を狙っている組織がある」と訴えた。診察の結果、Dさんは、統合失調症と診断され、薬物療法を含む治療が開始された。その後来院した時、Dさんは精神科クリニックのE精神保健福祉士に、「組織の人がそこに来ている気がする。どう思いますか」と心配そうに確認を求めてきた。
次の記述のうち、E精神保健福祉士から、Dさんに対する声かけとして、適切なものを2つ選びなさい。
  • 「あなたの考えは間違っています」と明確に指摘する。
  • 「大変ですね。おつらいですね」と共感を示す。
  • 「あなたの心配を担当の医師に伝えてみませんか」と促す。
  • 「どういう組織か詳しく教えてください」と説明を求める。
  • 「組織が攻撃してくることはあり得ません」と述べた上でその理由を論理的に説明する。

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この過去問の解説 (2件)

01

精神科クリニックに所属する精神保健福祉士(Eさん)が、統合失調症の患者さん(Dさん)から話しかけられた際の対応について問う問題です。

 

事例では、Dさんの会話の内容が妄想を含んだものと考えられ、日常会話という形ではとらえられないため、精神保健福祉士としてどのように対応すべきか、悩ましいところです。

 

統合失調症の陽性症状が色濃い患者さんに対しては

 

・幻覚・妄想・幻聴に否定も肯定もしない声かけ

・混乱する相手に対して落ち着かせる声かけ

否定・批判だけにならない声かけ

 

が重要だと思われます。

 

また、面談においては、バイスティックの7原則(①個別化、②意図的な感情表出、③統制された情緒的関与、④受容、⑤非審判的態度、⑥自己決定、⑦秘密保持)も参考になるのではないかと思われます。

選択肢1. 「あなたの考えは間違っています」と明確に指摘する。

適切ではありません。

 

明確な否定は事実としてはあっているのかもしれませんが、Dさんをいっそう混乱させてしまう可能性もあります

 

また、精神保健福祉士Eさんは、Dさんとの援助関係を形成するとの観点から、受容・非審判的態度などにも配慮すべきです。

選択肢2. 「大変ですね。おつらいですね」と共感を示す。

適切です。

 

「大変ですね。おつらいですね」との発言は、明確な否定や肯定をさけ、共感・受容を示す声かけと判断できます。

選択肢3. 「あなたの心配を担当の医師に伝えてみませんか」と促す。

適切です。

 

「あなたの心配を担当の医師に伝えてみませんか」との発言は、明確な否定や肯定をさけ、Dさんを落ち着かせる意図のある声かけと判断できます。

選択肢4. 「どういう組織か詳しく教えてください」と説明を求める。

適切とはいえません。

 

「どういう組織か詳しく教えてください」と説明を求める発言は、肯定や否定を含みませんが、Dさんの不安を落ち着かせる意図をあまり感じません。

 

また、事例では正式な診察や面談の場面と思われなかったので、妄想を深堀するのには不適切な場面であると判断し、適切とはいえない選択肢としました。

選択肢5. 「組織が攻撃してくることはあり得ません」と述べた上でその理由を論理的に説明する。

適切ではありません。

 

「組織が攻撃してくることはあり得ません」と述べた上でその理由を論理的に説明することは、Dさんの発言に対して明確な否定・批判があり、Dさんをいっそう混乱させてしまう可能性もあります

 

また、精神保健福祉士Eさんは、Dさんとの援助関係を形成するとの観点から、受容・非審判的態度などにも配慮すべきです。

参考になった数5

02

不眠を主訴として受診したDさんは、統合失調症と診断され妄想症状が出現しています。Dさんの思いを否定する事はせず、信頼関係を構築できるよう働きかける事が大切です。

選択肢1. 「あなたの考えは間違っています」と明確に指摘する。

✕ 他者にとっては事実ではないと思う事であっても、本人は事実として認識しています。それを否定してしまう事は、本人の思いを受け止められておらず、信頼関係の構築も出来なくなってしまうため、不適切です。

選択肢2. 「大変ですね。おつらいですね」と共感を示す。

〇 本人は不眠症状や誰かに狙われているという思いを強く持っており、それに対する辛さを訴えています。その気持ちを受け止め、共感する事は適切な対応です。

選択肢3. 「あなたの心配を担当の医師に伝えてみませんか」と促す。

〇 Dさんが感じている気持ちを受け止め、それを担当の医師に繋げる事はDさんの状態の改善に繋がるため、適切な支援と言えます。

選択肢4. 「どういう組織か詳しく教えてください」と説明を求める。

✕ Dさんが恐怖を感じている組織は実在しないものです。それについて詳しく尋ねる事は、Dさんの妄想を強めてしまう可能性が高まるため、適切な支援とは言えません。

選択肢5. 「組織が攻撃してくることはあり得ません」と述べた上でその理由を論理的に説明する。

✕ 選択肢の内容は、Dさんの思いを全否定してしまう言葉です。理由を論理的に説明したとしても、現状のDさんが受け入れられる可能性は低く、逆に信頼関係の構築が困難となってしまいます。適切な支援とは言えません。

参考になった数3