精神保健福祉士 過去問
第27回(令和6年度)
問124 (精神障害リハビリテーション論 問4)
問題文
〔事例〕
ある日、市役所の精神保健に関する相談窓口にAさん(43歳)が来庁し、担当のB精神保健福祉士に話をした。Aさんによると、会社員である夫(45歳)は、日頃の仕事のストレスに起因する過度の飲酒が原因で体調を崩し、身体疾患の治療のため入院をした。その後、退院を迎えるに当たり、Aさんと夫は、主治医から「体調は落ち着きましたが、アルコール依存症の可能性があるので、精神科の受診を勧めます」と提案を受けた。ところが、退院後、夫に精神科を受診するよう話したが全く聞こうとせず、激しく怒り出すようになった。また、夫が飲酒を再開してしまい、そのことについて、Aさんも夫に対し「なぜお酒を飲むの」と怒りの感情をぶつけたことから夫婦関係は悪化した。自分の力だけではどうにもならないと感じるようになり相談窓口を訪れたとのことであった。(※1)
Aさんの話からB精神保健福祉士は、精神保健福祉センターで実施されているプログラムを紹介した。それは、アルコール依存症が疑われる人が精神科を受診しようとしない時に、本人のキーパーソンとなる人に介入することで、本人を受診につなげるための包括的なプログラムである。その説明を受け、Aさんからはプログラムへの参加の意思が示された。(※2)
このプログラムに参加するようになり、しばらくして夫は精神科病院を受診することができた。夫は2か月休職し、入院治療を受けたことで自身の病状についての理解が進んだ。退院後間もなく、Aさんは夫と共に退院の報告を兼ねてB精神保健福祉士のもとを訪れた。夫は「いろいろありがとうございました。無事に退院したのですが、実は、ストレスがたまるとまた飲酒しそうで怖いです。どうしたら良いでしょうか」と語り、Aさんも「夫が飲酒を再開しないために、私も夫と一緒にやれることを探したいです」と述べた。B精神保健福祉士は、精神科の主治医に相談することも重要であることを説明しつつ、家族も参加できるアルコール依存症の患者本人を対象とした自助グループを紹介した。(※3)
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問題
精神保健福祉士試験 第27回(令和6年度) 問124(精神障害リハビリテーション論 問4) (訂正依頼・報告はこちら)
〔事例〕
ある日、市役所の精神保健に関する相談窓口にAさん(43歳)が来庁し、担当のB精神保健福祉士に話をした。Aさんによると、会社員である夫(45歳)は、日頃の仕事のストレスに起因する過度の飲酒が原因で体調を崩し、身体疾患の治療のため入院をした。その後、退院を迎えるに当たり、Aさんと夫は、主治医から「体調は落ち着きましたが、アルコール依存症の可能性があるので、精神科の受診を勧めます」と提案を受けた。ところが、退院後、夫に精神科を受診するよう話したが全く聞こうとせず、激しく怒り出すようになった。また、夫が飲酒を再開してしまい、そのことについて、Aさんも夫に対し「なぜお酒を飲むの」と怒りの感情をぶつけたことから夫婦関係は悪化した。自分の力だけではどうにもならないと感じるようになり相談窓口を訪れたとのことであった。(※1)
Aさんの話からB精神保健福祉士は、精神保健福祉センターで実施されているプログラムを紹介した。それは、アルコール依存症が疑われる人が精神科を受診しようとしない時に、本人のキーパーソンとなる人に介入することで、本人を受診につなげるための包括的なプログラムである。その説明を受け、Aさんからはプログラムへの参加の意思が示された。(※2)
このプログラムに参加するようになり、しばらくして夫は精神科病院を受診することができた。夫は2か月休職し、入院治療を受けたことで自身の病状についての理解が進んだ。退院後間もなく、Aさんは夫と共に退院の報告を兼ねてB精神保健福祉士のもとを訪れた。夫は「いろいろありがとうございました。無事に退院したのですが、実は、ストレスがたまるとまた飲酒しそうで怖いです。どうしたら良いでしょうか」と語り、Aさんも「夫が飲酒を再開しないために、私も夫と一緒にやれることを探したいです」と述べた。B精神保健福祉士は、精神科の主治医に相談することも重要であることを説明しつつ、家族も参加できるアルコール依存症の患者本人を対象とした自助グループを紹介した。(※3)
- 夫のケアを担うAさんの能力について評価を行う。
- Aさんの怒りの感情や無力感に対して肯定的に関わる。
- 夫の入院治療を強く勧める。
- 夫の客観的情報の収集を優先して行う。
- Aさんがイネイブラーとして夫を支える重要性を説明する。
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この過去問の解説 (2件)
01
Aさんは、夫の飲酒問題とそれによる夫婦関係の悪化について「自分の力だけではどうにもならないと感じるようになり」相談に来ています。
このような状況において、精神保健福祉士が最初にすべきことは、相談者であるAさんの現状と抱えている感情を理解し、安心感を提供することです。
性急に解決策を提示したり、特定の行動を促したりするのではなく、まずAさんのつらい気持ちに寄り添うことが、今後の支援関係を築く上で最も重要となります。
✕
Aさんの能力評価は今後の支援計画を立てる上で重要ですが、初回面談の時点で最も優先すべきことではありません。
まずAさんの抱えている感情に焦点を当て、その軽減を図ることが大切です。
◯
初回面談では、まずAさんが抱える夫の飲酒への怒りや無力感などの複雑な感情を受容し、共感的に傾聴することが最優先です。
Aさんの感情を肯定的に受け止めることで、Aさんは安心して自身の状況をさらに語ることができ、支援者との信頼関係がより深まります。
✕
状況からすると、一刻も早く精神科での治療を進めたいところですが、夫は精神科受診に拒否的であり、性急な介入は夫からの反発を招き、かえって支援を困難にする可能性があります。
Aさんへの初回相談の段階で夫の入院治療を強く勧めるのは適切ではないと考えます。
✕
初回面談で最優先に行うことは相談者であるAさんの抱えている苦痛や感情を受け止めることです。
夫の性格や飲酒量、健康状態、仕事の状況などの客観的な情報は今後の支援において必要ですが、現段階では優先することではありません。
✕
イネイブラーとは、アルコールなどの依存症患者に対し、症状の悪化を無意識に助長してしまい、本人の自立を阻む要因になってしまう家族などを指す言葉です。
依存症や問題行動を持つ人の問題を、本人に代わって解決したり、あれこれ世話を焼いたりすることで、その人が自立しなくても過ごしていける状態を作り出している場合があります。
初回の面談でAさんをイネイブラーと決めつけることや、夫の自立の妨げを容認することは不適切です。
夫のアルコール問題に悩むAさんへの初回面談において、B精神保健福祉士が最優先に行うべき対応は、Aさんが抱える怒りの感情や無力感を肯定的に受け止め、共感的に関わることです。
これによって、Aさんは自身のつらい状況が理解されたと感じ、精神保健福祉士との信頼関係が築かれ、今後の具体的な支援のための土台作りへとつながります。
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02
まずは、事例を整理しながら選択肢の対応を検討していきます。
・Aさんが市の精神保健の窓口に来所(対応 B精神保健福祉士)
・Aさんの夫は仕事のストレスから過度の飲酒、身体治療のため入院
・医師からアルコール依存症の疑いで精神科受診を勧められる
・Aさんの夫は飲酒を再開、Aさんの夫への怒り、受診の勧めも聞き入れられず「自分の力ではどうしもない」と感じる。
適切ではありません。
具体的なアセスメント・評価の前に、困り果てて来所したAさん自身への「ねぎらい」が必要な場面と考えます。
インテーク面接においても、過去の家族の苦労・不安をまずは受け止めて、信頼関係を築くことが重要です。
適切です。
「なんでお酒を飲むの!」という怒りや「もう自分にできることは何もない」との無力感は、Aさんの立場にとっては、ひどく当たり前のことであり、そうした感情や行動を特に否定的に解することなく、そのまま相談者として受け止めるのが重要だと考えます。
適切ではありません。
具体的なアセスメント・評価の前に、困り果てて来所したAさん自身への「ねぎらい」が必要な場面と考えます。
また充分なアセスメントにより、その後の支援は検討されるべきかと考えます。
適切ではありません。
具体的なアセスメント・評価の前に、困り果てて来所したAさん自身への「ねぎらい」が必要な場面と考えます。
Aさん自身への十分な配慮ののち、アセスメントに移ることが適当と判断します。
適切ではありません。
具体的なアセスメント・評価の前に、困り果てて来所したAさん自身への「ねぎらい」が必要な場面と考えます。
また、「Aさんがイネイブラーとして夫を支える重要性を説明する。」との回答は、イネイブラーとして夫のアルコール依存症の状態を継続させるとの意味ともなり、不適切です。
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