精神保健福祉士 過去問
第27回(令和6年度)
問125 (精神障害リハビリテーション論 問5)

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

精神保健福祉士試験 第27回(令和6年度) 問125(精神障害リハビリテーション論 問5) (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、(※2)のプログラムの特徴として、正しいものを1つ選びなさい。

〔事例〕
ある日、市役所の精神保健に関する相談窓口にAさん(43歳)が来庁し、担当のB精神保健福祉士に話をした。Aさんによると、会社員である夫(45歳)は、日頃の仕事のストレスに起因する過度の飲酒が原因で体調を崩し、身体疾患の治療のため入院をした。その後、退院を迎えるに当たり、Aさんと夫は、主治医から「体調は落ち着きましたが、アルコール依存症の可能性があるので、精神科の受診を勧めます」と提案を受けた。ところが、退院後、夫に精神科を受診するよう話したが全く聞こうとせず、激しく怒り出すようになった。また、夫が飲酒を再開してしまい、そのことについて、Aさんも夫に対し「なぜお酒を飲むの」と怒りの感情をぶつけたことから夫婦関係は悪化した。自分の力だけではどうにもならないと感じるようになり相談窓口を訪れたとのことであった。(※1)
Aさんの話からB精神保健福祉士は、精神保健福祉センターで実施されているプログラムを紹介した。それは、アルコール依存症が疑われる人が精神科を受診しようとしない時に、本人のキーパーソンとなる人に介入することで、本人を受診につなげるための包括的なプログラムである。その説明を受け、Aさんからはプログラムへの参加の意思が示された。(※2)
このプログラムに参加するようになり、しばらくして夫は精神科病院を受診することができた。夫は2か月休職し、入院治療を受けたことで自身の病状についての理解が進んだ。退院後間もなく、Aさんは夫と共に退院の報告を兼ねてB精神保健福祉士のもとを訪れた。夫は「いろいろありがとうございました。無事に退院したのですが、実は、ストレスがたまるとまた飲酒しそうで怖いです。どうしたら良いでしょうか」と語り、Aさんも「夫が飲酒を再開しないために、私も夫と一緒にやれることを探したいです」と述べた。B精神保健福祉士は、精神科の主治医に相談することも重要であることを説明しつつ、家族も参加できるアルコール依存症の患者本人を対象とした自助グループを紹介した。(※3)
  • 対立的手法を積極的に活用する。
  • 日本で開発されたものである。
  • 家族が「私」という一人称を主語にして、患者本人に思いを伝える方法を学ぶ。
  • 専門職から患者本人への直接的な働きかけに重きを置く。
  • アルコール依存症に特化したプログラムである。

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (2件)

01

事例の記述には、「アルコール依存症が疑われる人が精神科を受診しようとしない時に、本人のキーパーソンとなる人に介入することで、本人を受診につなげるための包括的なプログラム」とあり、「CRAFT(Community Reinforcement and Family Training)」のことを指していると考えられます。

CRAFTとは、アメリカで飲酒や薬物の問題に悩む家族のために開発されたプログラムで、当事者が治療を拒んでいる時にその家族が対立を招かずに治療を勧めるための具体的な方法を学ぶものです。

CRAFTの特徴と一致しているものを考えることで正答にたどり着くと思います。

 

選択肢1. 対立的手法を積極的に活用する。

CRAFTといった家族介入プログラムでは、対立や非難を避けるアプローチを重視します。

設問の中にも、過去にAさんが夫に「なぜお酒を飲むの」と怒りの感情をぶつけて夫婦関係が悪化したことからも、対立的手法は逆効果であることがわかります。

本人を受診につなげるためには、対立的な手法ではなく、より建設的で関係性を損ねないコミュニケーションが必要です。

選択肢2. 日本で開発されたものである。

CRAFTなどの家族介入プログラムは、主にアメリカで開発されたものです。

 

選択肢3. 家族が「私」という一人称を主語にして、患者本人に思いを伝える方法を学ぶ。

「私」を主語にして自身の感情や困り事を伝えるアイメッセージは、CRAFTやアサーションで用いられるコミュニケーション技術です。

相手を非難するのではなく、自分の気持ちを穏やかに伝えることで、対立を避け、本人が耳を傾けやすくなるよう促します。

これは、家族のコミュニケーションスキルを向上させ、当事者を受診につなげるための具体的な方法の一つです。

選択肢4. 専門職から患者本人への直接的な働きかけに重きを置く。

問題文には「本人のキーパーソンとなる人に介入することで、本人を受診につなげる」と記載があるため、専門職から本人への直接的な働きかけは重視していないことがわかります。

選択肢5. アルコール依存症に特化したプログラムである。

CRAFTなどの家族介入プログラムは薬物依存症などにも有効なものです。

アルコール依存症に特化しているわけではありません。

まとめ

事例で示されているプログラムは、当事者の夫ではなく、そのキーパーソンである妻に家族介入プログラムを勧める方法です。

このように、精神保健福祉士は問題の原因となっている当事者への直接介入だけでなく、家族を介して本人の状態改善を図ることもあります。

こういったアプローチの方法もあることを覚えておきましょう。

参考になった数4

02

まずは、事例を整理しながら選択肢の対応を検討していきます。

 

・Aさんが市の精神保健の窓口に来所(対応 B精神保健福祉士)

・Aさんの夫は仕事のストレスから過度の飲酒、身体治療のため入院

・医師からアルコール依存症の疑いで精神科受診を勧められる

・Aさんの夫は飲酒を再開、Aさんの夫への怒り、受診の勧めも聞き入れられず「自分の力ではどうしもない」と感じる。

・B精神保健福祉士は、精神保健福祉センターで実施されている「アルコール依存症が疑われる人が精神科を受診しようとしない時に、本人のキーパーソンとなる人に介入することで、本人を受診につなげるための包括的なプログラム」を紹介

・Aさんは参加の意思表示

 

「アルコール依存症が疑われる人が精神科を受診しようとしない時に、本人のキーパーソンとなる人に介入することで、本人を受診につなげるための包括的なプログラム」は、CRAFTをさすものと考えられます。

選択肢1. 対立的手法を積極的に活用する。

正しくありません。

 

CRAFTは、対立を避け関係性を改善することを目指しています。

選択肢2. 日本で開発されたものである。

正しくありません。

 

CRAFTは、アメリカで開発・発展したプログラムです。

選択肢3. 家族が「私」という一人称を主語にして、患者本人に思いを伝える方法を学ぶ。

正しいです。

 

「一人称での自己表現」が、CRAFTの中核的なコミュニケーションスキルの一つとされています。

 

 

選択肢4. 専門職から患者本人への直接的な働きかけに重きを置く。

正しくありません。

 

CRAFTは、本人への働きかけではなく、キーパーソンに働きかけ、キーパーソンと本人の関係性を変えることで、本人自ら変わるきっかけをつくることを志向しています。

選択肢5. アルコール依存症に特化したプログラムである。

正しくありません。

 

アルコールや薬物依存症の本人が治療を拒否している場合に行われるプログラムです。

 

アルコール依存症に特化したプログラムではありません。

 

 

 

 

参考になった数2