社会保険労務士の過去問
第53回(令和3年度)
労働者災害補償保険法 問2

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問題

社労士試験 第53回(令和3年度) 択一式 労働者災害補償保険法 問2 (訂正依頼・報告はこちら)

通勤災害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 3歳の子を養育している一人親世帯の労働者がその子をタクシーで託児所に預けに行く途中で追突事故に遭い、負傷した。その労働者は、通常、交通法規を遵守しつつ自転車で託児所に子を預けてから職場に行っていたが、この日は、大雨であったためタクシーに乗っていた。タクシーの経路は、自転車のときとは違っていたが、車であれば、よく利用される経路であった。この場合は、通勤災害と認められる。
  • 腰痛の治療のため、帰宅途中に病院に寄った労働者が転倒して負傷した。病院はいつも利用している駅から自宅とは反対方向にあり、負傷した場所はその病院から駅に向かう途中の路上であった。この場合は、通勤災害と認められない。
  • 従業員が業務終了後に通勤経路の駅に近い自動車教習所で教習を受けて駅から自宅に帰る途中で交通事故に遭い負傷した。この従業員の勤める会社では、従業員が免許取得のため自動車教習所に通う場合、奨励金として費用の一部を負担している。この場合は、通勤災害と認められる。
  • 配偶者と小学生の子と別居して単身赴任し、月に1~2回、家族の住む自宅に帰っている労働者が、1週間の夏季休暇の1日目は交通機関の状況等は特段の問題はなかったが単身赴任先で洗濯や買い物等の家事をし、2日目に家族の住む自宅へ帰る途中に交通事故に遭い負傷した。この場合は、通勤災害と認められない。
  • 自家用車で通勤していた労働者Xが通勤途中、他の自動車との接触事故で負傷したが、労働者Xは所持している自動車運転免許の更新を失念していたため、当該免許が当該事故の1週間前に失効しており、当該事故の際、労働者Xは、無免許運転の状態であった。この場合は、諸般の事情を勘案して給付の支給制限が行われることはあるものの、通勤災害と認められる可能性はある。

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この過去問の解説 (3件)

01

解説は以下のとおりです。

選択肢1. 3歳の子を養育している一人親世帯の労働者がその子をタクシーで託児所に預けに行く途中で追突事故に遭い、負傷した。その労働者は、通常、交通法規を遵守しつつ自転車で託児所に子を預けてから職場に行っていたが、この日は、大雨であったためタクシーに乗っていた。タクシーの経路は、自転車のときとは違っていたが、車であれば、よく利用される経路であった。この場合は、通勤災害と認められる。

通勤災害の合理的な経路及び方法を問う問題です。合理的な経路及び方法とは移動の場合に一般に労働者が用いるものと認められる経路及び手段等を言い、1つに限られません。経路については乗車定期券に表示され、或いは会社に届け出ているような鉄道、バスなどの通常利用する経路の他、マイカー通勤、タクシーなど通常利用することが考えられる経路が複数ある場合、複数の経路も合理的な経路と認められます。

第七条 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付

 複数事業労働者(これに類する者として厚生労働省令で定めるものを含む。以下同じ。)の二以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡(以下「複数業務要因災害」という。)に関する保険給付(前号に掲げるものを除く。以下同じ。)

 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付

 二次健康診断等給付

 前項第三号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。

 住居と就業の場所との間の往復

 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動

 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

選択肢2. 腰痛の治療のため、帰宅途中に病院に寄った労働者が転倒して負傷した。病院はいつも利用している駅から自宅とは反対方向にあり、負傷した場所はその病院から駅に向かう途中の路上であった。この場合は、通勤災害と認められない。

病院又は診療所においての診察又は治療を受けることは「厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由」に相当しますが、「病院はいつも利用している駅から自宅とは反対方向にあり」合理的な経路上になく、通常利用する経路の逸脱中に発生しており、業務災害とは認められません。

第七条 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

(中略)

 労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第三号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。

選択肢3. 従業員が業務終了後に通勤経路の駅に近い自動車教習所で教習を受けて駅から自宅に帰る途中で交通事故に遭い負傷した。この従業員の勤める会社では、従業員が免許取得のため自動車教習所に通う場合、奨励金として費用の一部を負担している。この場合は、通勤災害と認められる。

自動車教習所での教習(資格取得や予備校なども含む)は日常生活上必要な行為ではないため、通勤災害とは認められません。

従業員が業務終了後に通勤経路の駅に近い自動車教習所で教習を受けて駅から自宅に帰る途中で交通事故に遭い負傷した。この従業員の勤める会社では、従業員が免許取得のため自動車教習所に通う場合、奨励金として費用の一部を負担している。この場合は、通勤災害と認められる。

選択肢4. 配偶者と小学生の子と別居して単身赴任し、月に1~2回、家族の住む自宅に帰っている労働者が、1週間の夏季休暇の1日目は交通機関の状況等は特段の問題はなかったが単身赴任先で洗濯や買い物等の家事をし、2日目に家族の住む自宅へ帰る途中に交通事故に遭い負傷した。この場合は、通勤災害と認められない。

単身赴任者は何日以内に自宅に戻ったかが問題となります。業務終了の当日及び翌日は良いが、交通機関に特段の事情がない場合の翌々日は合理的な理由ではなく、通勤災害と認められません。

配偶者と小学生の子と別居して単身赴任し、月に1~2回、家族の住む自宅に帰っている労働者が、1週間の夏季休暇の1日目は交通機関の状況等は特段の問題はなかったが単身赴任先で洗濯や買い物等の家事をし、2日目に家族の住む自宅へ帰る途中に交通事故に遭い負傷した。この場合は、通勤災害と認められない。

選択肢5. 自家用車で通勤していた労働者Xが通勤途中、他の自動車との接触事故で負傷したが、労働者Xは所持している自動車運転免許の更新を失念していたため、当該免許が当該事故の1週間前に失効しており、当該事故の際、労働者Xは、無免許運転の状態であった。この場合は、諸般の事情を勘案して給付の支給制限が行われることはあるものの、通勤災害と認められる可能性はある。

合理的な経路及び方法の方法について、免許を一度も取得したことがない者が自動車を運転する場合、泥酔して自動車、自転車を運転する場合は合理的な方法と認められませんが、「労働者Xは所持している自動車運転免許の更新を失念」や単なる不携帯などは必ずしも合理性を欠くものとして取り扱わないこととなっています。

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02

1 設問のとおり正しいです。

1つの経路だけではなく、その移動が合理的であれば複数パターン認められます。

2 設問のとおり正しいです。

逸脱中に起こったものなので、通勤災害と認められません。

3 誤りです。 

自動車教習所での教習は「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるもの」には該当しないため、通勤災害とは認められません。

4 設問のとおり正しいです。

業務に従事した当日又は翌日に移動した場合は就業との関連性が認められるとされています。

5 設問のとおり正しいです。

なお、免許を一度も取得したことのない者については合理的とは認められません。

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03

解答:「従業員が業務終了後に通勤経路の駅に近い自動車教習所で教習を受けて・・・」が正解です。

選択肢1. 3歳の子を養育している一人親世帯の労働者がその子をタクシーで託児所に預けに行く途中で追突事故に遭い、負傷した。その労働者は、通常、交通法規を遵守しつつ自転車で託児所に子を預けてから職場に行っていたが、この日は、大雨であったためタクシーに乗っていた。タクシーの経路は、自転車のときとは違っていたが、車であれば、よく利用される経路であった。この場合は、通勤災害と認められる。

「合理的な経路及び方法の移動」についての問題です。

一般に用いるものと認められる経路及び手段等であれば認められますので、「大雨でタクシーに乗った」場合でも通勤災害と認められます。

選択肢2. 腰痛の治療のため、帰宅途中に病院に寄った労働者が転倒して負傷した。病院はいつも利用している駅から自宅とは反対方向にあり、負傷した場所はその病院から駅に向かう途中の路上であった。この場合は、通勤災害と認められない。

「いつも利用している駅から自宅とは反対方向の病院に行く途中」での負傷ですので通勤災害と認められません。

選択肢3. 従業員が業務終了後に通勤経路の駅に近い自動車教習所で教習を受けて駅から自宅に帰る途中で交通事故に遭い負傷した。この従業員の勤める会社では、従業員が免許取得のため自動車教習所に通う場合、奨励金として費用の一部を負担している。この場合は、通勤災害と認められる。

× 

自動車教習所での教習は「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるもの」ではないため、通勤災害とは認められません。

選択肢4. 配偶者と小学生の子と別居して単身赴任し、月に1~2回、家族の住む自宅に帰っている労働者が、1週間の夏季休暇の1日目は交通機関の状況等は特段の問題はなかったが単身赴任先で洗濯や買い物等の家事をし、2日目に家族の住む自宅へ帰る途中に交通事故に遭い負傷した。この場合は、通勤災害と認められない。

単身赴任の帰省が通勤災害と認められるには、原則当日又は翌日での移動になります。

「交通機関の状況等は特段の問題はない」ので、2日目の移動は通勤災害と認められません。

選択肢5. 自家用車で通勤していた労働者Xが通勤途中、他の自動車との接触事故で負傷したが、労働者Xは所持している自動車運転免許の更新を失念していたため、当該免許が当該事故の1週間前に失効しており、当該事故の際、労働者Xは、無免許運転の状態であった。この場合は、諸般の事情を勘案して給付の支給制限が行われることはあるものの、通勤災害と認められる可能性はある。

「自動車運転免許の更新を失念していた」としても、「合理的な経路及び方法の移動」であれば通勤災害と認められる可能性はあります。

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