薬剤師の過去問
第99回
薬学実践問題(病態・薬物治療/実務、法規・制度・倫理/実務、実務) 問304

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

薬剤師国家試験 第99回 薬学実践問題(病態・薬物治療/実務、法規・制度・倫理/実務、実務) 問304 (訂正依頼・報告はこちら)

60歳女性。10年ほど前に尿タンパクを指摘されていたが放置していた。
その後、疲れやすくなったため、8年ほど前に近医を受診した。
腎機能低下を指摘され、薬物療法が開始された。
症状は徐々に進行し、現在は慢性腎不全の保存期である(検査値:血清クレアチニン値3.0mg/dL、血清カルシウム値8.8mg/dL、血清リン値4.4mg/dL、血清カリウム値5.0mEq/L)。

以下の処方を受けているが、最近、胸のむかつきなどの胃炎症状を訴えている。

この女性患者にニザチジンを投与することとなった。
なお、腎機能が正常な女性において、ニザチジンの全身クリアランスに占める腎クリアランスの割合は90%、eGFRを120mL/min/1.73m2とし、ニザチジンの腎クリアランスはeGFRに比例し、腎外クリアランスは腎機能の影響を受けないと仮定した。また、eGFRの推定には次のノモグラムを用いた。

腎機能正常者におけるニザチジンの1日量を300mgとするとき、この患者に対するニザチジンの1日量として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
問題文の画像
  • 30mg
  • 60mg
  • 90mg
  • 120mg
  • 150mg

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

腎クリアランスが90%ということより、健常者ではニザチジン300mgを投与すると90%の270mgが腎代謝を受け、残り10%にあたる30mgが肝代謝を受けることが分かります。

次に今回の患者のeGFRをノモグラムを用いて読み取ります。
60歳、血症クレアチニン値3.0mg/dLの所に点を打ち、2点を直線で結び女性のeGFRとの交点を見ると、eGFRは12と読み取れます。
つまり健常者のeGFRが120なのに対して、患者は約10%まで減少していることが分かります。

したがってeGFRと腎クリアランスは比例することから、腎クリアランスも10%に減少していることになります。
ただし肝クリアランスはeGFRとの相関は無いため10%のままです。

するとニザチジン300mgを投与すると、この患者の場合30mgが肝代謝を受け、27mgが腎代謝を受けることになります。

全身クリアランス=腎クリアランス+肝クリアランスより、30+27=57mgとなり、適切な投与量は最も近い数字である60mgが正解となります。

参考になった数1

02

正解:2

患者の年齢60歳、血清クレアチニン値3.0mg/dLです。ノモグラムの両地点を結ぶとeGFRは13であると分かります。腎機能が正常な人のeGFRは120なので、腎機能が正常人の11%に低下していることが分かります。

ニザチジンは投与量の90%が腎排泄されます。
腎機能が正常な人に300mg投与すると、270mgが腎排泄されます。

本患者は腎機能が正常人の11%しか排泄できないため、
270×0.11≒30より30mgしか腎排泄されません。

肝臓で投与量の10%が代謝されるため、
300×0.1より30mgが肝代謝を受けます。
するとニザチジン300mgを投与すると、この患者の場合30mgが肝代謝を受け、27mgが腎代謝を受けることになります。

全身クリアランス=腎クリアランス+肝クリアランスより、30+30=60mg

よって選択肢3が正解となります。

参考になった数0

03

【答え】2

【考え方】
 全身クリアランスの低下率からニザチジンの1日量を求めます。

 全身クリアランス=肝クリアランス+腎クリアランスから、腎機能低下の患者の肝クリアランスと腎クリアランスの低下率を求めることができれば、全身クリアランスの低下率がわかります。

 肝クリアランスは、問題文より、腎機能低下の影響を受けないため、正常女性と同じ値ですので、正常女性の肝クリアランスを求めることで、値がわかります。

 腎クリアランスは、問題文より、eGFRに比例するので、eGFRの低下率から腎クリアランスの低下率を求めます。

【解き方】
 ・肝クリアランスの求め方
  問題文より、全身クリアランスに占める腎クリアランスの値が90%だから、全身クリアランス=肝クリアランス+腎クリアランスより、100%=肝クリアランス+90%。よって、肝クリアランス=10%とわかります。

 ・腎クリアランスの求め方
  eGFRの値を求めるために与えられたモノグラムを用います。

  このグラフは年齢とeGFR(男女それぞれ)と血清Crの関係を表すもので、3つのうちの2つの値を直線で結ぶことで、残りの1つを推定することができます。

  この問いでは、年齢(60)と血清Cr(3.0mg/dL)が与えられているので、直線で結ぶことでeGFRの値が約12mL/min/1.73m^2とわかります。

  腎機能が正常の女性のeGFR120 mL/min/1.73m^2と比較すると10%まで低下していることがわかります。ニザチジンの腎クリアランスがeGFRに比例することより、ニザチジンの腎クリアランスも正常の女性と比較して10%まで低下していることがわかります。

 ・全身クリアランスの求め方
  腎機能低下の患者の全身クリアランスは、全身クリアランス=肝クリアランス+腎クリアランスより、全身クリアランス=10%+10%。よって、全身クリアランスは正常女性と比較して20%まで低下していることがわかります。

 ・ニザチジンの1日投与量の求め方
  正常女性の1日投与量が300mgであるので、腎機能低下の患者の1日投与量=正常女性の1日投与量×腎機能低下患者の全身クリアランスの割合より、腎機能低下の患者の1日投与量=300mg×20%。よって、1日投与量は60mgとわかります。

参考になった数0