二級建築士 過去問
令和3年(2021年)
問25 (学科1(建築計画) 問25)
問題文
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問題
二級建築士試験 令和3年(2021年) 問25(学科1(建築計画) 問25) (訂正依頼・報告はこちら)
- 換気設備について、熱損失を少なくするために、全熱交換器を用いた。
- 空気熱源マルチパッケージ型空調機は、省エネルギーに配慮し、成績係数(COP)の大きい機器を採用した。
- 風がない場合においても温度差による換気を期待し、上下部に開口部を設けた吹き抜け空間を計画した。
- 夏期の冷房時における窓面からの日射負荷を低減するため、東西面の窓に水平ルーバーを計画した。
- 雨水利用システムにおける集水場所を、集水率の高さや、集水した雨水の汚染度の低さを考慮して、屋根面とした。
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この過去問の解説 (3件)
01
1 〇
全熱交換器とは、室内空気を排気する際に、そこから熱と湿気を抜き取り、外から入ってくる空気に取り込んで給気を行う換気システムの事です。排気や給気の際に熱損失が少なく、暖房負荷が軽減されるため省エネに有効です。
2 〇
空気熱源マルチパッケージ型空調機は、エアコンのちょっといいやつ、くらいで覚えてください。
COPとは、冷暖房能力÷消費エネルギーの数値になります。冷暖房能力に対して消費エネルギーが低ければ低いほどCOPの数値が高くなりますので、省エネルギー効果が期待できます。
3 〇
空気は温度が高いと上昇し、低いと下降していきます。吹き抜けは建物の高さを生かすことができる為、空気の循環には効果的な計画となります。
4 ×
南側の太陽は東西に動く為、水平ルーバーは南側。東側と西側の太陽は上下に動く為、垂直ルーバーは東西側。太陽の動きに合わせてルーバーを設置すると日射負荷を軽減することができます。問題文は東西側に水平ルーバーを計画している為、間違いです。
5 〇
集水する場合は、効率よく雨水を獲得できる場所や、なるべく汚染されていない水を収集するため、屋根面から樋に落ちた雨水をタンクに貯める方法が効率的で衛生的な方法となります。
よって問の答えは 4 となります。
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02
1.正しいです。
全熱交換器は排気中の排熱を回収して新鮮な空気にその熱を伝えることにより、室内温度を変えることなく換気ができる換気設備です。
2.正しいです。
成績係数(COP)とは、冷凍機やヒートポンプなどが投入されたエネルギーに対する冷凍能力の大きさであり、COPが大きいほど冷凍効率が高く、省エネルギーであるということを示します。
3.正しいです。
暖かい空気は上昇気流により上へと流れていきます。
吹き抜け空間のような天井の高い空間において、上下に開口部を設けることで空気が上下に流れ、効率よく換気ができます。
4.間違いです。
水平ルーバーは南面に設置すると夏期の日射の遮蔽に有効です。
東西面では太陽高度が低いため、水平ルーバーより垂直ルーバーの設置のほうが日射の遮蔽に有効です。
5.正しいです。
雨水利用システムの集水場所は屋根面外にも壁面や敷地・道路面で設定することができますが、雨水水質の観点から屋根面で集水することが好ましいです。
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03
この問題を解く上で意識したい点は、各環境・省エネルギー技術の基本的な原理と、それがどのような条件下で最も効果を発揮するかを理解することです。
例)自然エネルギーの特性理解: 太陽の日射角度(季節や時間帯、方位による違い)、空気の温度差(重力換気)、風の利用など、自然エネルギーが建物にどうような影響を及ぼすのかを理解する。
・設備の機能と目的: 全熱交換器が「熱損失を減らす」こと、COPが大きい機器が「効率が良い」こと、といった各設備の役割を明確にする。
・最適な適用条件: 例えば、水平ルーバーが「南面の日射遮蔽に強い」が「東西面には弱い」といったように、各手法には得意・不得意な条件があることを理解する。
これらのことを意識しながら問題に取り組むことで、表面的な知識だけでなく、より深い、実用的な知識を身につけることができます
全熱交換器は、排気される室内の空気から熱(顕熱)と湿度(潜熱)を回収し、外から取り入れる新鮮な空気にその熱と湿度を移す装置です。これにより、冷暖房によって快適な状態にした室内の空気の熱が外部に排出されるのを防ぎ、同時に外気を室内の温度・湿度に近づけて供給できます。結果として、換気による熱損失を大幅に削減できるだけだはなく、空調負荷を低減するため、省エネルギー対策に大きく貢献することができます。
つまり、この記述は適切です。
「成績係数(COP:Coefficient of Performance)」は、投入した電力(エネルギー)に対して、どれだけの冷暖房能力が得られるかを示す指標です。COPの値が大きいほど、少ない電力で大きな冷暖房効果が得られることを意味し、省エネルギー性能が高いと評価されます。したがって、省エネルギーに配慮するなら、COPの大きい機器を選ぶのは当然の選択です。
つまり、この記述は適切です。
これは重力換気(煙突効果)の原理を利用した計画です。吹き抜け空間の上部と下部に開口部を設けることで、室内の温かい空気(密度が低い)が上昇して上部の開口部から排気され、代わりに外部の冷たい空気(密度が高い)が下部の開口部から流入します。これにより、風がなくても温度差(空気密度の差)によって自然な換気が促され、機械換気に頼らずに室内環境を整えることができ、省エネルギーにつながります。
つまり、この記述は適切です。
夏期の東西面からの日射は、太陽高度が低い朝方や夕方に窓に直接差し込みます。この時間帯の太陽光は、水平方向からの入射角が小さいため、水平ルーバーでは効果的に遮蔽することができません。水平ルーバーは、太陽高度が高い夏期の南面からの日射遮蔽には有効ですが、東西面の日射遮蔽には垂直ルーバーや可動ブラインド、庇などが適しています。東西面に水平ルーバーを計画しても、日射負荷低減効果は限定的になってしまいます。
したがって、この記述は不適切です。
屋根面は、比較的広大な面積を確保しやすく、地面からの土砂や汚染物質の巻き上げが少ないため、高い集水率と比較的汚染度の低い雨水を得やすい理想的な集水場所とされています。地面や駐車場などから集水する場合に比べ、落ち葉や鳥の糞、大気中の塵などが混入する可能性はありますが、一般的に他の地面からの集水よりも汚染度が低く、ろ過処理も比較的容易になります。
つまり、この記述は適切です。
この問いで最も不適切な記述は「 夏期の冷房時における窓面からの日射負荷を低減するため、東西面の窓に水平ルーバーを計画した」でした。
不適切な理由: 夏期において、東西面の窓には、太陽高度が低い朝や夕方に日差しが直接差し込みます。水平ルーバーは太陽高度が高い時間帯(主に南面の日差し)を遮るのに有効ですが、低い角度からの日差しが多い東西面には効果が薄いです。東西面の日射遮蔽には、太陽の動きに合わせて効果を発揮する垂直ルーバーや可動ブラインド、あるいは深い庇などが適しています。
その他選択肢のポイント:
・全熱交換器は、換気による室内の熱損失を抑え、空調負荷を軽減する省エネ技術です。
・成績係数(COP)が大きい空調機は、少ない電力で効率的に冷暖房を行うため、省エネルギー性に優れます。
・上下に開口部を設けた吹き抜け空間は、温度差による空気の密度差を利用した「重力換気(煙突効果)」を促し、自然換気による省エネを促すことができます。
・屋根面は、雨水利用システムにおいて、集水面積が広く、比較的汚染度の低い雨水を集めやすい理想的な場所です。
この問題を通じて、建築物の環境性能を高めるためには、それぞれの技術や手法が持つ特性を理解し、建物の立地、方位、利用状況に合わせて適切に選択・計画することが必要不可欠であることがわかります。
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