クレーン・デリック運転士 過去問
平成31年(2019年)4月
問27 (原動機及び電気に関する知識 問27)

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問題

クレーン・デリック運転士試験 平成31年(2019年)4月 問27(原動機及び電気に関する知識 問27) (訂正依頼・報告はこちら)

クレーンの三相誘導電動機の速度制御方式に関する記述として、適切なものは次のうちどれか。
  • 巻線形三相誘導電動機の二次抵抗制御は、固定子の巻線に接続した抵抗器の抵抗値を変化させて速度制御するもので、始動時に緩始動ができる。
  • 巻線形三相誘導電動機の電動油圧押上機ブレーキ制御は、機械的な摩擦力を利用して制御するため、ブレーキライニングの摩耗を伴う。
  • 巻線形三相誘導電動機のダイナミックブレーキ制御は、巻下げの速度制御時に電動機の一次側を交流電源から切り離し、一次側に直流電流を通電して励磁することにより制動力を得るもので、つり荷が極めて軽い場合でも低速での巻下げができる。
  • 巻線形三相誘導電動機のワードレオナード制御は、電動機の回転数を検出して指定された速度と比較しながら制御するため、極めて安定した速度が得られるが、低速は最高速度の15%程度までしか得られない。
  • かご形三相誘導電動機のインバーター制御は、電源の周波数を固定したまま電流値を変えて電動機に供給し回転数を制御するもので、精度の高い速度制御ができる。

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この過去問の解説 (3件)

01

1 . 誤りです。

巻線形三相誘導電動機の二次抵抗制御は、回転子の巻線に接続した抵抗器の抵抗値を変化させて速度制御するものです。
始動時に緩始動ができるものは、かご形三相誘導電動機です。

2 . 正しいです。

巻線形三相誘導電動機の電動油圧押上機ブレーキ制御は、機械的な摩擦力を利用して制御するため、ブレーキライニングの摩耗を伴います。

3 . 誤りです。

巻線形三相誘導電動機のダイナミックブレーキ制御は、巻下げの速度制御時に電動機の一次側を交流電源から切り離し、一次側に直流電流を通電して励磁することにより制動力を得るもので、つり荷が極めて軽い場合、低速での巻下げができません。

4 .誤りです。

ワードレオナード制御は、直流電動機の制御です。専用の直流発電機によって供給される電源で、直流電動機に加える電圧を変化させて制御します。
電動機の回転数を検出して指定された速度と比較しながら制御するものがサイリスター一次電圧制御で、極めて安定した速度が得られます。
低速は最高速度の5%程度まで得ることができます。

5 . 誤りです。

かご形三相誘導電動機のインバーター制御は、インバーター装置によって、電源の周波数や電圧を変えて電動機に供給し、速度制御するもので、精度の高い速度制御ができます。

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02

クレーンの三相誘導電動機の速度制御方式に関する問題です。

クレーンの仕組みを理解する上で重要な分野なので、各問題文の内容は把握しておきましょう。

選択肢1. 巻線形三相誘導電動機の二次抵抗制御は、固定子の巻線に接続した抵抗器の抵抗値を変化させて速度制御するもので、始動時に緩始動ができる。

巻線形三相誘導電動機の二次抵抗制御は、固定子の巻線に接続した抵抗器の抵抗値を変化させて速度制御するものとなりますが、始動時に緩始動できるものではありません。緩始動できるのはかご形三相誘導電動機です。

選択肢2. 巻線形三相誘導電動機の電動油圧押上機ブレーキ制御は、機械的な摩擦力を利用して制御するため、ブレーキライニングの摩耗を伴う。

正しい記述です。

巻線形三相誘導電動機の電動油圧押上機ブレーキ制御は、機械的な摩擦力を利用して制御するため、ブレーキライニングの摩耗を伴います。そのため、ブレーキライニングの点検は欠かさず行う必要があります。

選択肢3. 巻線形三相誘導電動機のダイナミックブレーキ制御は、巻下げの速度制御時に電動機の一次側を交流電源から切り離し、一次側に直流電流を通電して励磁することにより制動力を得るもので、つり荷が極めて軽い場合でも低速での巻下げができる。

巻線形三相誘導電動機のダイナミックブレーキ制御は、一般的につり荷が軽い場合は低速での巻下げはできません。

選択肢4. 巻線形三相誘導電動機のワードレオナード制御は、電動機の回転数を検出して指定された速度と比較しながら制御するため、極めて安定した速度が得られるが、低速は最高速度の15%程度までしか得られない。

問題文はサイリスター制御の説明文となります。

ワードレオナード制御は負荷に対応した速度調整ができますが、設備費用が高いのが難点です。

選択肢5. かご形三相誘導電動機のインバーター制御は、電源の周波数を固定したまま電流値を変えて電動機に供給し回転数を制御するもので、精度の高い速度制御ができる。

かご形三相誘導電動機のインバーター制御は、電源の周波数を固定したまま電流値を変えるのではなく、インバーター装置を使用して周波数や電圧を変更してから回転数を制御します。

まとめ

聞きなれない言葉が多かったかと思いますが、クレーンの制御はクレーンで作業をするのに知っておく必要があるので、それぞれの内容はしっかり理解しておきましょう。

参考になった数2

03

クレーンに使用される三相誘導電動機では、荷の安全なつり上げやつり下げ、走行などを行うために、さまざまな速度制御方式が採用されています。それぞれの制御方式には特徴や使用目的があり、理解が必要です。

選択肢1. 巻線形三相誘導電動機の二次抵抗制御は、固定子の巻線に接続した抵抗器の抵抗値を変化させて速度制御するもので、始動時に緩始動ができる。

不適切な記述です。巻線形誘導電動機の二次抵抗制御は、回転子側(二次側)に接続した外部抵抗を調整して速度制御するものであり、固定子側(一次側)に抵抗を接続するわけではありません。


 

選択肢2. 巻線形三相誘導電動機の電動油圧押上機ブレーキ制御は、機械的な摩擦力を利用して制御するため、ブレーキライニングの摩耗を伴う。

適切な記述です。電動油圧押上機(電磁ブレーキ)は、油圧や電磁力によりブレーキを解除し、ばねの力でブレーキをかける構造です。ブレーキは機械的な摩擦力で制動するため、ブレーキライニング(摩擦材)の摩耗が生じるのは正しい内容です。


 

選択肢3. 巻線形三相誘導電動機のダイナミックブレーキ制御は、巻下げの速度制御時に電動機の一次側を交流電源から切り離し、一次側に直流電流を通電して励磁することにより制動力を得るもので、つり荷が極めて軽い場合でも低速での巻下げができる。

不適切な記述です。ダイナミックブレーキ(直流制動)では、一次側(固定子側)に直流電流を流して回転子に制動トルクを与えますが、この制御は低速時や極めて軽い荷では制御が不安定になります。「つり荷が極めて軽い場合でも低速での巻下げができる」とする記述は不適切です。


 

選択肢4. 巻線形三相誘導電動機のワードレオナード制御は、電動機の回転数を検出して指定された速度と比較しながら制御するため、極めて安定した速度が得られるが、低速は最高速度の15%程度までしか得られない。

不適切な記述です。ワードレオナード制御は、回転数を安定的に制御できる高度な制御方式であり、回転数を非常に低速まで落とすことも可能(数%程度)です。「最低速度が最高速度の15%程度」とするのは実態と異なり不適切です。
 

選択肢5. かご形三相誘導電動機のインバーター制御は、電源の周波数を固定したまま電流値を変えて電動機に供給し回転数を制御するもので、精度の高い速度制御ができる。

不適切な記述です。インバータ制御では、電源の周波数を可変して電動機に供給し、回転数を制御します。記述にある「周波数を固定したまま」は誤りで、インバータの本質と逆です。


 

まとめ

三相誘導電動機の速度制御方式には、それぞれ動作原理と適用範囲が異なり、適切な制御方式の理解はクレーンの安全運用に欠かせません。今回の設問では、ブレーキ制御に関する記述が唯一、機械的摩擦を利用した制動という点で正しい内容です。

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