問題
「 80 歳の女性。200 m の歩行で左下腿に痛みやしびれが生じ歩けなくなる。手押し車での歩行では症状は出ない。左膝蓋腱反射は減弱、両下肢動脈拍動の触知は良好である。」
200mほどの歩行で下肢に痛みとしびれが生じ、
歩けなくなるとのことから、
間歇性跛行がみられていると考えられます。
また、
手押し車歩行では無症状であるとのことから、
神経性の間歇性跛行であると想定されます。
さらに、左膝蓋腱反射が減弱していることにより、
L4の障害が疑われます。
両下肢動脈拍動触知が良好であることから、
間歇性跛行の原因のうち血管性のものである可能性が低いと考えられます。
腰椎椎間板ヘルニアは、
下肢にしびれや痛みを生じる疾患のひとつです。
部位により膝蓋腱反射の減弱を認めることはありますが、
この疾患では、間歇性跛行がみられることはありません。
また、患者の年齢のピークは50代ともいわれます。
閉塞性動脈硬化症は、
下肢などにしびれや痛みを生じる疾患のひとつです。
動脈硬化により、
下肢に末梢の血管に血行障害が生じると、
間歇性跛行がみられるようになります。
また、血行障害を生じているため、
足背などの動脈の拍動を触知しにくくなります。
椎間関節性腰痛は、椎間関節の炎症によって生じます。
下肢に痛みを生じることがありますが、
腰をそらしたり、ひねったりすることで
痛みが出現しやすいのが特徴的です。
腰部脊柱管狭窄症では、あまり腰痛は強くなく、
歩行時などには、下肢痛やしびれのため、
長い距離を歩くのが難しく間歇性歩行となります。
手押し車での歩行の際は、前傾姿整となるため、
痛みが生じにくくなります。
症例の症状から、
これが正解であると考えられます。
選択肢にあげられている疾患は、
いずれも下肢にしびれや痛みを生じます。
病態に応じた特徴的な症状がありますので、
症状を丁寧に読み取って判断していきます。
問題の症例文中の、「200mの歩行で左下腿に痛みやしびれが生じ歩けなくなる。手押し車での歩行では症状は出ない。」という事から、間欠性跛行の症状という事がわかります。
更に、「左膝蓋腱反射は減弱」という事から、腰部の神経根症状がある事がわかり、また、「両下肢動脈拍動の触知は良好である。」という事から、閉塞性動脈硬化症やバージャー病などの血管系の疾患が否定できます。
一般的に椎間板ヘルニアの所見がある場合は、SLRが陽性になり、下肢のしびれや疼痛が顕著となります。間欠性跛行の症状はありません。
下肢動脈の拍動は減弱します。
運動時痛や腰部の伸展痛があり、また椎間関節部の圧痛も顕著に認められます。間欠性跛行の症状はありません。
間欠性跛行が特徴的な進行性の疾患となります。
腰部の症例問題では、整形外科学テスト法や、間欠性跛行、反ると痛い、拍動の減弱などのキーワードで鑑別することができます。