問題
「68歳の女性。国際線の機内で左下腿が次第に腫脹してきた。熱感や冷感はない。左ふくらはぎに把握痛がある。」
最も考えられるのはどれか。
正解は 深部静脈血栓症。です。
深部静脈血栓症(DVI)は、下肢の深部静脈(腸骨静脈・大腿静脈・膝窩静脈)に血栓ができる病態のことを言います。ここでできた血栓が遊離し、血行性に運ばれ肺動脈を塞栓すると肺血栓塞栓症(PTE)となります。PTEを発症した場合は、ショックや心肺停止などにより致死的になることがあります。
◯危険因子としては
・人工関節置換術
・外傷(骨盤骨折など)
・下肢の悪性腫瘍
・下肢のギプス固定
・長期臥床
・高齢 などが挙げられます。
近年では、長期の飛行機旅行や災害時などの車内生活など、長時間同じ姿勢でいることで発症することから”エコノミークラス症候群”とも呼ばれています。
◯症状としては、下肢全体もしくは下腿が赤黒く腫れ上がり、痛みを伴います。
*心不全では(右心系の機能低下の場合)上下大静脈の鬱血をきたし、その結果すねで圧痕を残す浮腫が出現します。
*急性腎不全では水・電解質異常や老廃物の体内蓄積によって様々症状が出ます。
特に下肢の浮腫は乏・無尿期で合併することがあります。
*コンパートメント症候群は、骨折などによる外傷性の筋肉内出血や浮腫、ギプス固定などによる長時間の圧迫などによって、筋区画(コンパートメント)の内圧が上昇し、循環不全により神経・筋に不可逆性壊死をきたすもののことを言います。
症状としては、急激に発症する蒼白・脈拍消失・疼痛・運動麻痺・感覚障害が見られます。
今回の症例では、国際線の機内ということから、長期の飛行機旅行ということが読み取れます。
加えて徐々に片側下腿の腫脹と疼痛が見られ、熱感や冷感がないこと・外傷などの事由がないことなどから、深部静脈血栓症と読み解くことができます。
問題文の症例「国際線の機内で左下腿が次第に腫脹してきた。熱感や冷感はない。左ふくらはぎに把握痛がある。」の部分から、エコノミークラス症候群による、深部静脈血栓症と推測できます。
深部静脈血栓症における血栓形成の原因として、長期臥床や、飛行機などで長時間の同一姿勢による血流停滞や、手術や外傷、また脱水などがあります。
深部静脈の血栓が飛んで、肺動脈を塞ぐと、非常に危険な状態となるため、注意が必要です。
間違いです。
心不全の場合でも、下腿部のむくみなどの症状がありますが、息切れや動悸の症状を訴えるため、正答から外れます。
間違いです。
急性腎不全の場合のむくみは、下腿部のみでなく、手や顔面部にも出現します。
その他、尿閉や易疲労、全身のかゆみや吐き気、食欲不振などの症状がみられます。
間違いです。
コンパートメント症候群は、下肢や前腕などの区画された筋肉内の内圧が異常に上昇し、痛みが出現します。
重症になると、横紋筋融解症や腎機能障害を起こすこともあります。
正解です。
本症例では、国際線の機内という事と、下腿部の腫脹と把握痛という症状から、深部静脈血栓症が当てはまります。