問題
追加で行ったモーレイテストは陽性、エデンテストは陰性であった。原因となる筋の緊張緩和を目的に母指圧迫を行う場合、局所治療穴として最も適切なのはどれか。
いかり肩、上肢痛、アドソンテストが陽性であることから胸郭出口症候群が疑われます。また、追加で行われたモーレイテストが陽性であることから斜角筋隙部を通過する腕神経叢や鎖骨下動脈の絞扼されていることが考えられます。エデンテストが陰性なので、肋鎖間隙への絞扼や牽引による症状の増悪はないと判断できます。
完骨は、乳様突起の後下方にある陥凹部にあります。この部位に関与する筋肉は頭板状筋です。
中府は、烏口突起の内縁にあります。この部位に関与する筋肉は大胸筋や小胸筋などがあげられます。
扶突は、胸鎖乳突筋の前縁と後縁の間にあります。この部位に関与する筋肉は胸鎖乳突筋や斜角筋があげられます。この症例は斜角筋隙部への絞扼が疑われるため、これが正解であると考えられます。
兪府は、鎖骨の下縁、胸骨中央の外方2寸にあります。
胸郭出口症候群において、斜角筋隙部、小胸筋下の間隙部、肋鎖間隙部のどこが絞扼・牽引されているのかを理解することが重要となります。
問題文の症例で行ったテストは、アドソンテストで、胸郭出口症候群のテスト法です。
「首が太くいかり肩」というキーワードからも、胸郭出口症候群と推測できます。
モーレイ(モーリー)テストは、胸郭出口症候群の分類の中で、斜角筋症候群に特化したテストで、斜角筋を圧迫した状態で、橈骨動脈を触知するテストです。
エデンテストは、胸郭出口症候群の分類の中で、
肋鎖症候群に特化したテストで、
胸郭が開くように、両側上肢を後下方へ牽引した状態で、橈骨動脈を触知するテストです。
胸郭出口症候群の分類には、あともう一つ、
小胸筋症候群(過外転症候)があります。
よって、この問題症例では、斜角筋症候群が疑えるので、斜角筋上に位置する経穴を選択します。
事例では、まず右上肢痛の主訴から、
頸部の後屈・右回旋による
右橈骨動脈の拍動の変化を調べています。
モーレイテストは、
斜角筋圧迫による変化を、
エデンテストでは、肋鎖症候群を判別します。
モーレイテストが陽性とのことですので、
原因筋として斜角筋が想定されます。
完骨は、足の少陽胆経の経穴で、
乳様突起基底部の後下方の陥凹部にとります。
頭板状筋などと関連しています。
中府は、手の太陰肺経の経穴で、
烏口突起の内縁、
腋窩動脈の拍動部の下1寸にとります。
大胸筋などと関連しています。
扶突は、手の陽明大腸経の経穴で、
前頸部、甲状軟骨上縁の高さで、
胸鎖乳突筋の前縁と後縁の間にとります。
斜角筋を構成する、
前斜角筋に関連しますので、
これが正解であると考えられます。
兪府は、足の少陰腎経の経穴です。
鎖骨の下縁、胸骨中央の外2寸にとります。
広頚筋などと関連しています。
症例の男性は、頸が太くいかり肩であり、
このことも斜角筋の圧迫による右上肢痛に
影響しているものと考えられます。