中小企業診断士の過去問
令和4年度（2022年）
経済学・経済政策 問6（1）

国民所得に生産、支出の観点をからめた出題です。国民所得の３面性などと

テキストでは説明されていますね。

問題を選択肢の正誤判定にもとづき説明していきます。

まず総需要線の傾きですが、

AD = C + I + G およびC = C₀＋cY より　AD = C₀＋cY + I + G となるので

AD = cY + (C₀ + I + G) となることから、傾きはc に等しい、ということに

なります。

続いて投資支出１単位の増加によるGDPの増加ですが、これは投資乗数と

言われるものです。

公式は、

投資乗数 = １ / １ー限界消費性向　

となりますので、１ / １ーc 　と表されます。

一方政府支出１単位の増加によるGDPの増加は政府支出乗数と言われますが、

公式は、

政府支出乗数 = １ / １ー限界消費性向

となりますので、１ / １ーc と表されます。

つまり投資乗数と政府支出乗数は等しいということが言えますので、双方の間に

大小関係は生じません。

最後に総需要線ADの切片ですが、ADの式である、AD = cY + (C₀ + I + G) より、

切片はC₀にはなりませんから誤りです。

したがって、正解は「正・誤・誤」となります。　

（基礎知識）

国民所得を生産、分配、支出それぞれどの面から見ても同じになります（三面等価の原則）。

総需要はお金を払って購入してモノを手に入れますので、総支出と同じこととお考え下さい。現在縦軸は総需要となっていますが、同様に総供給（生産面）も表すとします。ここではADに対応して、ASとします。

この時、総需要AD＝C+I+Gで表されます。一方で総供給ASは三面等価の原則から所得（＝分配とお考え下さい）と等しいとすると、AS＝Yの式、つまり４５度線が描かれます。

この２つの線が交わるところが均衡点ということになります。ここが完全雇用GDPとこの問題では定義されています。しかし、実際はY0のGDPであり、総需要＞総供給となっていることがわかります。つまり、供給よりも需要が大きいため、モノの価格が上がっていく、インフレ状態となっています。

AD＝C0＋cY＋I＋Gとなり、C0、I、GはYに関係なく決まることから定数と考えられるため、AD＝ｃY＋（C0＋I+G）と置くことができます。ここで切片はＣ０＋Ｉ＋Ｇになることがお分かりいただけます。三面等価の原則からAD=Yとすると、Y=cY+(C0＋I+G)より、Y＝1／（1‐c）×（C0＋I＋G）となります。

I、Gそれぞれ1単位増やすと、かかっているのは1／（１－ｃ）で同じですので、基本同じ乗数の増加になります。

ここまで整理できれば、この問題は解くことが可能です。

（選択肢評価）

a　AD＝ｃY＋（C0＋I+G）となるため、傾きはcで正しい

b　乗数効果は1／（１－ｃ）で同じになりますので、この記載は誤っています。

ｃ　切片はＣ０＋Ｉ＋Ｇになりますので誤った記載です。

a:総需要AD＝C＋I＋Gに消費関数C＝C₀＋cYを代入すると、AD＝cY＋（C₀＋I＋G）となります。よって、総需要線ADの傾きは、cとなります。

b:投資支出1単位の増加によるGDPの増加のことを投資乗数といい、1/(1-ｃ)で表されます。政府支出1単位の増加によるGDPの増加は政府支出乗数といい、これも1/(1-ｃ)で表されます。よって、投資乗数、政府支出乗数は同値となります。

c:総需要線AD＝cY＋（C₀＋I＋G）でしたので、切片は（C₀＋I＋G）となります。