中小企業診断士の過去問
令和4年度(2022年)
経済学・経済政策 問5

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経済学・経済政策 令和4年度(2022年) 問5 (訂正依頼・報告はこちら)

生産物市場の均衡条件が、次のように表されるとする。

生産物市場の均衡条件  Y=C+I+G
消費関数  C=10+0.8Y
投資支出  I=30
政府支出  G=60
ただし、Yは所得、Cは消費支出、Iは投資支出、Gは政府支出である。

いま、貯蓄意欲が高まって、消費関数がC=10+0.75Yになったとする。このときの政府支出乗数の変化に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 貯蓄意欲が高まったとしても、政府支出乗数は4のままであり、変化しない。
  • 貯蓄意欲が高まったとしても、政府支出乗数は5のままであり、変化しない。
  • 貯蓄意欲の高まりによって、政府支出乗数は4から5へと上昇する。
  • 貯蓄意欲の高まりによって、政府支出乗数は5から4へと低下する。

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この過去問の解説 (3件)

01

(基本知識)

政府支出乗数とは、政府支出(G)を1単位増加させたときに所得(Y)が何単位増加するのかという数値になります。公共投資、つまり財政政策による効果を見るものです。“乗数効果”となっていますが、政府投資が1億円でも、その1億円が次の需要を生み出しますので、効果としては1億円以上の効果を実現するというものです。

例えば政府投資として何らかの建築工事が行われると、建築業界の収益が上がり、結果給与が増えたとします。建築業界で働いている人は所得が増えましたので、外食したり、レジャーに使ったりと新たな消費が生み出され、それが各業界の収益増につながります。仮に各業界がそれを所得に反映して、また消費を行うと、1億円以上の効果が見込めるというものです。

この効果を考えるとき、どの項目と所得が連動するのかを考える必要があります。

問題の Y=C+I+G は輸出入を考えない閉鎖経済のモデルになりますが、既に式で与えられている通り、消費は所得に影響されます。

では、Iはいかがでしょうか?ここでは式は与えられていませんが、投資は資金調達のやりやすさに影響されますので、一般的に金利に影響され、所得は関係ありません。同様にGも政府が支出する市内を決定しますので関係ありません。

消費が所得に関係しますので、Y=C+I+Gの式にCの式を当てはめます。また、Iは定数として所与になりますので代入します。Gの増減でYがどれほど変わるかを見ますので、一旦Gはそのままにしておきます。

Y=10+0.8Y+30+G

これを整理して

0.2Y=G+40  より  Y=5G+200 数学的には ΔY/ΔG=5 ということになります。微分ですね。

つまり、Gを1単位増やすとYは5単位増えることがわかります。この5が乗数効果になります。

次に貯蓄意欲の高まりです。Y(所得)は基本的に消費か貯蓄に割り振られます。その割り振りの比率が消費ではc(消費性向)で所得の何割を消費に回すかということになります。消費か貯蓄になるとすると、貯蓄に回す比率は1-c(これを貯蓄性向といいます)となります。

問題では消費性向が0.8→0.75となり、貯蓄に回す比率は0.2→0.25と高くなっています。

同様に政府支出乗数を求めると

Y=10+0.75Y+30+G より Y=4G+160 になります。 つまり政府支出乗数は4となり、低下しています。先ほどの説明の通り、政府の支出が次の需要を生み出し、それがまた次の需要を生み出すことで乗数効果が出ますが、貯蓄に回ってしまうとそこで効果が止まってしまいます。よって貯蓄意向の高まりは乗数効果を引き下げる効果を持っています。

選択肢1. 貯蓄意欲が高まったとしても、政府支出乗数は4のままであり、変化しない。

政府支出乗数は元々5であるので誤り

選択肢2. 貯蓄意欲が高まったとしても、政府支出乗数は5のままであり、変化しない。

貯蓄意欲の高まりで政府支出乗数は5→4と低下するので誤り

選択肢3. 貯蓄意欲の高まりによって、政府支出乗数は4から5へと上昇する。

貯蓄意欲の高まりは乗数効果を引き下げるので誤り

選択肢4. 貯蓄意欲の高まりによって、政府支出乗数は5から4へと低下する。

正しい

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02

政府支出乗数とは、政府支出(G)の変化が国民所得(Y)に与える影響のことで、以下の式で表されます。

政府支出乗数 = 1 / 1ー限界消費性向

本問では限界消費性向は0.8(与えられた式:C=10+0.8Yより)ですから、政府支出乗数は5になります。

ここで貯蓄意欲が高まり、消費関数が変化すると限界消費性向が0.75となるので、政府支出乗数は4になります。

この内容を踏まえて選択肢の正否を確認します。

選択肢1. 貯蓄意欲が高まったとしても、政府支出乗数は4のままであり、変化しない。

冒頭の内容の通り、政府支出乗数は5から4に変化しますので誤りです。

選択肢2. 貯蓄意欲が高まったとしても、政府支出乗数は5のままであり、変化しない。

冒頭の内容の通り、政府支出乗数は5から4に変化しますので誤りです。

選択肢3. 貯蓄意欲の高まりによって、政府支出乗数は4から5へと上昇する。

冒頭の内容の通り、政府支出乗数は5から4に変化しますので誤りです。

選択肢4. 貯蓄意欲の高まりによって、政府支出乗数は5から4へと低下する。

正解です。冒頭の説明の通りです。

まとめ

政府支出乗数に関する出題でした。過去にも出題されていますので、公式を復習しておきましょう。

参考になった数9

03

政府支出乗数とは政府支出の増加が所得の増加にどの程度影響を与えるかを表したもので、1/(1-限界消費性向)で求められます。

限界消費性向とは、所得が1単位増えたときに増える消費量のことです。

当初の消費関数はC=10+0.8Yで、所得が1単位を増加すると消費量は0.8増加します。よって限界消費性向は0.8です。

貯蓄意欲の高まりで、消費関数はC=10+0.75Yとなりましたので、限界消費性向も0.75になります。

よって政府支出乗数への影響は、1/(1-0.8)=5から1/(1-0.75)=4に変化します。

すなわち限界消費性向の増加(貯蓄意欲の高まり)は政府支出の影響を下げることになります。

参考になった数2