問題
生産物市場の均衡条件 Y=C+I+G
消費関数 C=10+0.8Y
投資支出 I=30
政府支出 G=60
ただし、Yは所得、Cは消費支出、Iは投資支出、Gは政府支出である。
いま、貯蓄意欲が高まって、消費関数がC=10+0.75Yになったとする。このときの政府支出乗数の変化に関する記述として、最も適切なものはどれか。
(基本知識)
政府支出乗数とは、政府支出(G)を1単位増加させたときに所得(Y)が何単位増加するのかという数値になります。公共投資、つまり財政政策による効果を見るものです。“乗数効果”となっていますが、政府投資が1億円でも、その1億円が次の需要を生み出しますので、効果としては1億円以上の効果を実現するというものです。
例えば政府投資として何らかの建築工事が行われると、建築業界の収益が上がり、結果給与が増えたとします。建築業界で働いている人は所得が増えましたので、外食したり、レジャーに使ったりと新たな消費が生み出され、それが各業界の収益増につながります。仮に各業界がそれを所得に反映して、また消費を行うと、1億円以上の効果が見込めるというものです。
この効果を考えるとき、どの項目と所得が連動するのかを考える必要があります。
問題の Y=C+I+G は輸出入を考えない閉鎖経済のモデルになりますが、既に式で与えられている通り、消費は所得に影響されます。
では、Iはいかがでしょうか?ここでは式は与えられていませんが、投資は資金調達のやりやすさに影響されますので、一般的に金利に影響され、所得は関係ありません。同様にGも政府が支出する市内を決定しますので関係ありません。
消費が所得に関係しますので、Y=C+I+Gの式にCの式を当てはめます。また、Iは定数として所与になりますので代入します。Gの増減でYがどれほど変わるかを見ますので、一旦Gはそのままにしておきます。
Y=10+0.8Y+30+G
これを整理して
0.2Y=G+40 より Y=5G+200 数学的には ΔY/ΔG=5 ということになります。微分ですね。
つまり、Gを1単位増やすとYは5単位増えることがわかります。この5が乗数効果になります。
次に貯蓄意欲の高まりです。Y(所得)は基本的に消費か貯蓄に割り振られます。その割り振りの比率が消費ではc(消費性向)で所得の何割を消費に回すかということになります。消費か貯蓄になるとすると、貯蓄に回す比率は1-c(これを貯蓄性向といいます)となります。
問題では消費性向が0.8→0.75となり、貯蓄に回す比率は0.2→0.25と高くなっています。
同様に政府支出乗数を求めると
Y=10+0.75Y+30+G より Y=4G+160 になります。 つまり政府支出乗数は4となり、低下しています。先ほどの説明の通り、政府の支出が次の需要を生み出し、それがまた次の需要を生み出すことで乗数効果が出ますが、貯蓄に回ってしまうとそこで効果が止まってしまいます。よって貯蓄意向の高まりは乗数効果を引き下げる効果を持っています。
政府支出乗数は元々5であるので誤り
貯蓄意欲の高まりで政府支出乗数は5→4と低下するので誤り
貯蓄意欲の高まりは乗数効果を引き下げるので誤り
正しい
政府支出乗数とは、政府支出(G)の変化が国民所得(Y)に与える影響のことで、以下の式で表されます。
政府支出乗数 = 1 / 1ー限界消費性向
本問では限界消費性向は0.8(与えられた式:C=10+0.8Yより)ですから、政府支出乗数は5になります。
ここで貯蓄意欲が高まり、消費関数が変化すると限界消費性向が0.75となるので、政府支出乗数は4になります。
この内容を踏まえて選択肢の正否を確認します。
冒頭の内容の通り、政府支出乗数は5から4に変化しますので誤りです。
冒頭の内容の通り、政府支出乗数は5から4に変化しますので誤りです。
冒頭の内容の通り、政府支出乗数は5から4に変化しますので誤りです。
正解です。冒頭の説明の通りです。
政府支出乗数に関する出題でした。過去にも出題されていますので、公式を復習しておきましょう。