行政書士の過去問
平成29年度
一般知識等 問25
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問題
行政書士試験 平成29年度 一般知識等 問25 (訂正依頼・報告はこちら)
次の文章は、都市計画における建設大臣(当時)の裁量権の範囲に関する原審の判断を覆した最高裁判所判決の一節である。空欄[ Ⅰ ]〜[ Ⅳ ]には、それぞれあとの(ア)〜(エ)のいずれかの文が入る。原審の判断を覆すための論理の展開を示すものとして妥当なものの組合せはどれか。
「都市施設は、その性質上、土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置することにより、円滑な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するように定めなければならないものであるから、都市施設の区域は、当該都市施設が適切な規模で必要な位置に配置されたものとなるような合理性をもって定められるべきものである。この場合において、民有地に代えて公有地を利用することができるときには、そのことも上記の合理性を判断する一つの考慮要素となり得ると解すべきである。
[ Ⅰ ]。しかし、[ Ⅱ ]。
そして、[ Ⅲ ]のであり、[ Ⅳ ]。
以上によれば、南門の位置を変更することにより林業試験場の樹木に悪影響が生ずるか等について十分に審理することなく、本件都市計画決定について裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してしたものであるということはできないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」
(最二小判平成18年9月4日判例時報1948号26頁)
ア 原審は、南門の位置を変更し、本件民有地ではなく本件国有地を本件公園の用地として利用することにより、林業試験場の樹木に悪影響が生ずるか、悪影響が生ずるとして、これを樹木の植え替えなどによって回避するのは困難であるかなど、樹木の保全のためには南門の位置は現状のとおりとするのが望ましいという建設大臣の判断が合理性を欠くものであるかどうかを判断するに足りる具体的な事実を確定していないのであって、原審の確定した事実のみから、南門の位置を現状のとおりとする必要があることを肯定し、建設大臣がそのような前提の下に本件国有地ではなく本件民有地を本件公園の区域と定めたことについて合理性に欠けるものではないとすることはできないといわざるを得ない
イ 本件国有地ではなく本件民有地を本件公園の区域と定めた建設大臣の判断が合理性を欠くものであるということができるときには、その建設大臣の判断は、他に特段の事情のない限り、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとなるのであって、本件都市計画決定は、裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法となるのである
ウ 樹木の保全のためには南門の位置は現状のとおりとするのが望ましいという建設大臣の判断が合理性を欠くものであるということができる場合には、更に、本件民有地及び本件国有地の利用等の現状及び将来の見通しなどを勘案して、本件国有地ではなく本件民有地を本件公園の区域と定めた建設大臣の判断が合理性を欠くものであるということができるかどうかを判断しなければならない
エ 原審は、建設大臣が林業試験場には貴重な樹木が多いことからその保全のため南門の位置は現状のとおりとすることになるという前提の下に本件民有地を本件公園の区域と定めたことは合理性に欠けるものではないとして、本件都市計画決定について裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してしたものであるということはできないとする
「都市施設は、その性質上、土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置することにより、円滑な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するように定めなければならないものであるから、都市施設の区域は、当該都市施設が適切な規模で必要な位置に配置されたものとなるような合理性をもって定められるべきものである。この場合において、民有地に代えて公有地を利用することができるときには、そのことも上記の合理性を判断する一つの考慮要素となり得ると解すべきである。
[ Ⅰ ]。しかし、[ Ⅱ ]。
そして、[ Ⅲ ]のであり、[ Ⅳ ]。
以上によれば、南門の位置を変更することにより林業試験場の樹木に悪影響が生ずるか等について十分に審理することなく、本件都市計画決定について裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してしたものであるということはできないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」
(最二小判平成18年9月4日判例時報1948号26頁)
ア 原審は、南門の位置を変更し、本件民有地ではなく本件国有地を本件公園の用地として利用することにより、林業試験場の樹木に悪影響が生ずるか、悪影響が生ずるとして、これを樹木の植え替えなどによって回避するのは困難であるかなど、樹木の保全のためには南門の位置は現状のとおりとするのが望ましいという建設大臣の判断が合理性を欠くものであるかどうかを判断するに足りる具体的な事実を確定していないのであって、原審の確定した事実のみから、南門の位置を現状のとおりとする必要があることを肯定し、建設大臣がそのような前提の下に本件国有地ではなく本件民有地を本件公園の区域と定めたことについて合理性に欠けるものではないとすることはできないといわざるを得ない
イ 本件国有地ではなく本件民有地を本件公園の区域と定めた建設大臣の判断が合理性を欠くものであるということができるときには、その建設大臣の判断は、他に特段の事情のない限り、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとなるのであって、本件都市計画決定は、裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法となるのである
ウ 樹木の保全のためには南門の位置は現状のとおりとするのが望ましいという建設大臣の判断が合理性を欠くものであるということができる場合には、更に、本件民有地及び本件国有地の利用等の現状及び将来の見通しなどを勘案して、本件国有地ではなく本件民有地を本件公園の区域と定めた建設大臣の判断が合理性を欠くものであるということができるかどうかを判断しなければならない
エ 原審は、建設大臣が林業試験場には貴重な樹木が多いことからその保全のため南門の位置は現状のとおりとすることになるという前提の下に本件民有地を本件公園の区域と定めたことは合理性に欠けるものではないとして、本件都市計画決定について裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してしたものであるということはできないとする
- [ Ⅰ ]ア、[ Ⅱ ]ウ、[ Ⅲ ]エ、[ Ⅳ ]イ
- [ Ⅰ ]イ、[ Ⅱ ]エ、[ Ⅲ ]ア、[ Ⅳ ]ウ
- [ Ⅰ ]イ、[ Ⅱ ]エ、[ Ⅲ ]ウ、[ Ⅳ ]ア
- [ Ⅰ ]ウ、[ Ⅱ ]イ、[ Ⅲ ]エ、[ Ⅳ ]ア
- [ Ⅰ ]エ、[ Ⅱ ]ア、[ Ⅲ ]ウ、[ Ⅳ ]イ
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この過去問の解説 (3件)
01
裁量権の逸脱または濫用に関する設問です。本判例(最判H18.9.4林試の森事件)を知らなくとも、接続詞や文脈をヒントに並び替えができそうです。
権力分立のため、原則として、行政作用には司法審査は及びませんが、裁量権の逸脱または濫用があった場合には、裁判所が当該行政作用を取消すことができます(行政事件訴訟法30条)。
近時の判例では、「他事考慮」または「要考慮事項の考慮不尽」のいずれかの基準を用いて判断過程審査(行政の判断過程に合理性があるか否かという観点から裁量審査をする)を行っているものが多くなっています。
本裁判においては、(Ⅰエ)原審では、同都市計画の判断は裁量権の範囲を逸脱または濫用していないと判断されたものの、(Ⅱア・Ⅲウ・Ⅳイ)当該判断は別の手段をとった場合の影響等に関する具体的な検討に欠けており、十分に審理することなく本件都市計画を裁量権の範囲内とした原審には法令の違反がある、とされました。
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02
Ⅱの前に、「しかし」とあるので、エの反論内容である、
アに続くと推測されます。
ⅢとⅣは、話の流れからウが最初に入り、
イで違法性を述べて締めくくっていると判断できます。
よって、正解は5です。
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03
「原審の判断を覆す」ための論理の展開が聞かれています。
アとエには「原審」があり、
ア.に「原審の確定した事実のみから・・・
合理性に欠けるものではないとすることはできないといわざるを得ない」
とある原審の判断をしていることから、
エ→アとわかります。
ウの末尾「本件国有地ではなく本件民有地を・・・
を判断しなければならない」
から、
イの「本件国有地ではなく本件民有地を本件公園の区域と定めた建設大臣の判断が合理性を欠くものであるということができるときには」
につながっていきます。
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