行政書士の過去問
平成29年度
一般知識等 問28
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問題
行政書士試験 平成29年度 一般知識等 問28 (訂正依頼・報告はこちら)
錯誤等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 要素の錯誤が成立する場合において、表意者に錯誤に基づく無効を主張する意思がないときであっても、表意者自身が錯誤を認めており、表意者に対する債権を保全する必要がある場合、表意者の債権者は、表意者の錯誤を理由とする無効を主張することができる。
- 売買代金に関する立替金返還債務のための保証において、実際には売買契約が偽装されたものであったにもかかわらず、保証人がこれを知らずに保証契約を締結した場合、売買契約の成否は、原則として、立替金返還債務を主たる債務とする保証契約の重要な内容であるから、保証人の錯誤は要素の錯誤に当たる。
- 婚姻あるいは養子縁組などの身分行為は錯誤に基づく無効の対象とならず、人違いによって当事者間に婚姻または縁組をする意思がないときであっても、やむを得ない事由がない限り、その婚姻あるいは養子縁組は無効とならない。
- 連帯保証人が、他にも連帯保証人が存在すると誤信して保証契約を締結した場合、他に連帯保証人があるかどうかは、通常は保証契約の動機にすぎないから、その存在を特に保証契約の内容とした旨の主張立証がなければ、連帯保証人の錯誤は要素の錯誤に当たらない。
- 離婚に伴う財産分与に際して夫が自己所有の不動産を妻に譲渡した場合において、実際には分与者である夫に課税されるにもかかわらず、夫婦ともに課税負担は専ら妻が負うものと認識しており、夫において、課税負担の有無を重視するとともに、自己に課税されないことを前提とする旨を黙示的に表示していたと認められるときは、要素の錯誤が認められる。
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この過去問の解説 (3件)
01
民法95条を引用しておきます。
「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」
1〇 ①債権者の債権を保全する必要がある場合に②表意者がその意思表示の要素に関し錯誤を認めている場合は、仮に表意者自らに錯誤無効を主張する意思がなくとも、債権者は表意者の錯誤無効を主張することが許されます(最判S45.3.26)。
2〇 法律行為の要素に錯誤があったときは、意思表示は無効になります(民法95条)。ここで言う「要素」とは、法律行為の重要な部分のことで、「その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」は要素の錯誤があるとされます。2020年に施行される改正民法では、このことが条文化されています。
保証人の錯誤ですが、「保証契約は、特定の主債務を保証する契約であるかた、主債務がいかなるものであるかは、保証契約重要な内容である。そして、主債務が、商品を購入する者がその代金の立替払を依頼しその立替金を分割して支払う立替え払契約上の債務である場合には、商品の売買契約の成立が立替契約の前提となるから、商品売買契約の成否は、原則として、保証契約の重要な内容であると解するのが相当である」と判示されました(最判H14.7.11)。
3× 婚姻も養子縁組も、人違い等によって当事者間にその意思がないときは、無効となる旨、定められています(民法742条1号、802条1号)。
4〇 肢の通りで、連帯保証人が他にいると誤信して連帯保証契約を結んだことは、通常は動機の錯誤であって、特段の事情が無い限り要素の錯誤とは言えません(最判S32.12.19)。
5〇 肢の通りで、判例では、協議離婚に伴う財産分与契約において、夫側(自身)には譲与所得税が課されないものと認識し、これを黙示的に表示していたときは、要素の錯誤が認められるとされました(最判H1.9.14)。
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02
原則は表意者のみが主張できます。
例外的に選択肢のような状況なら、表意者の債権者(第三者)からの
主張も認められています。(判例あり)
2.(売買契約の成否)は法律行為の重要な部分といえるでの、
要素の錯誤があるといえる、よって正解となります。
3.意思のない婚姻や縁組は無効となります。
4.他にも保証人がいるなら契約をしよう(動機)
連帯保証契約を締結します。(意思・表示)
よって、正解の選択肢です。(判例あり)
5.選択肢のとおり、正解です。(判例あり)
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03
原則として錯誤無効を主張できるのは表意者に制限されますが、例外的に表意者が瑕疵を認めており債権保全の必要がある場合には、第三者が錯誤無効を主張できるという判例があります(最判昭45・3・26)。
2.正しい記述です。
立替払契約が締結され,同契約に基づく債務について保証契約が締結された場合、保証契約を締結した際そのことを知らなかったという保証人の意思表示には法律行為の要素に錯誤がある、との判例があります(最判平14・7・11)。
3.間違った記述です。
婚姻の無効原因には、民法742条1号に婚姻の当事者間に婚姻意思がないときという規定があります。
養子縁組の無効原因についても、民法802条1号に、人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないときという規定があります。
4.正しい記述です。
他に連帯保証人がある旨の債務者の発言を誤信して連帯保証をした場合は、縁由の錯誤であり、当然には要素の錯誤ではないとの判例があります(最判昭32・12・19)。
5.正しい記述です。
妻に課税されるものと誤解した夫が、妻に対し気遣う発言をし、妻もそれを理解していた場合などは、黙示的に表示されて意思表示の内容をなしたものというべきであるとの判例があります(最判平1・9・14)。
よって、3が正解です。
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