行政書士の過去問
平成29年度
一般知識等 問33

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問題

行政書士試験 平成29年度 一般知識等 問33 (訂正依頼・報告はこちら)

Aは自己所有の甲機械(以下「甲」という。)をBに賃貸し(以下、これを「本件賃貸借契約」という。)、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。この事実を前提とする次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
  • Bは、本件賃貸借契約において、Aの負担に属するとされる甲の修理費用について直ちに償還請求することができる旨の特約がない限り、契約終了時でなければ、Aに対して償還を求めることはできない。
  • CがBに対して甲を返還しようとしたところ、Bから修理代金の提供がなかったため、Cは甲を保管することとした。Cが甲を留置している間は留置権の行使が認められるため、修理代金債権に関する消滅時効は進行しない。
  • CはBに対して甲を返還したが、Bが修理代金を支払わない場合、Cは、Bが占有する甲につき、動産保存の先取特権を行使することができる。
  • CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、事務管理に基づいて修理費用相当額の支払を求めることができる。
  • CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできない。

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この過去問の解説 (3件)

01

1.賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、「直ちに」その償還を請求することができます。特約がないと請求できないとするのは間違いです。(民法608条1項)

2.留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げませんので、間違いです。(民法300条)

3.先取特権者は、その債務者の「財産」について、行使することができます。
甲はBの所有物ではないので、先取特権は成立しませんので、間違いです。(民法303条参考)

4.義務なく他人のために事務の管理を始めたわけではないので、Cの行為は事務管理ではありません。
事務管理に基づいて費用を請求というのは間違いです(民法697条)

5.正しい記述です。
法律上の原因なく利益を受けた場合は、利益償還義務を負いますが、Aは不当利得ではありませんので、義務を負いません。(民法703条参考)

よって、5が正解です。

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02

正解は5
民法全般の知識を問う設問です。

1× 「賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる」(民法608条1項)とされているため、特約がなくとも、修理費用の償還請求が可能です。

2× 「留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない」(同法300条)ので、修理代金債権に関する消滅時効は進行することになります。

3× 債務者の特定の動産について先取特権を有するのは「一 不動産の賃貸借 二 旅館の宿泊 三 旅客又は荷物の運輸 四 動産の保存 五 動産の売買 六 種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給 七 農業の労務 八 工業の労務」(同法311条)です。
甲の所有権はBではなくAにあるため、Cは甲について動産保存の先取特権を行使することはできません。

4× 「義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない」(同法697条1項)、「管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる」(同法702条1項)とされています。
Cは、請負契約上の修理義務に基づいて修理を行っていますので、「義務なく」始めた者とは言えないので、修理費用相当額の支払いを求めることはできません。

5〇 判例は「甲が建物賃借人乙との間の請負契約に基づき建物の修繕工事をしたところ、その後乙が無資力になったため、甲の乙に対する請負代金債権の全部又は一部が無価値である場合において、右建物の所有者丙が法律上の原因なくして右修繕工事に要した財産及び労務の提供に相当する利益を受けたということができるのは、丙と乙との間の賃貸借契約を全体としてみて、丙が対価関係なしに右利益を受けたときに限られる」(最判H7.9.19、判事事項『建物賃借人から請け負って修繕工事をした者が賃借人の無資力を理由に建物所有者に対し不当利得の返還を請求することができる場合』)としています。
本肢においてAは、対価関係(ここでは賃貸借契約)に基づいて修理相当額の利益を得ているため、CはAに対し、不当利得に基づく修理費用相当額の支払い請求はできません。

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03

1.「Aの負担に属するとされる甲の修理費用」
 は必要費で、必要費はすぐに請求できます。
 民法608条

2.留置してるだけでは、消滅時効の中断になりません。
(払ってください。とは言ってない)
 よって〇です。
 民法300条

3.原則、動産、不動産の先取特権ともに債務者の所有物につき成立します。
 よってXです。

4.Bの依頼によりCは修理をしたので、事務管理が成立しない
 事務管理の要件に、「法律上の義務がない」があります。
 よってXです。
 民法697条

5.正当な理由(法律上の原因)なく財産的利得を得る・・・
 民法703条
 Aは不当に利益を得たわけではない
 よってXです。

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