行政書士の過去問
平成29年度
一般知識等 問34
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問題
行政書士試験 平成29年度 一般知識等 問34 (訂正依頼・報告はこちら)
不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 景観の良否についての判断は個々人によって異なる主観的かつ多様性のあるものであることから、個々人が良好な景観の恵沢を享受する利益は、法律上保護される利益ではなく、当該利益を侵害しても、不法行為は成立しない。
- 人がその品性、徳行、名声、信用などについて社会から受けるべき客観的な社会的評価が低下させられた場合だけではなく、人が自己自身に対して与えている主観的な名誉感情が侵害された場合にも、名誉毀損による不法行為が成立し、損害賠償の方法として原状回復も認められる。
- 宗教上の理由から輸血拒否の意思表示を明確にしている患者に対して、輸血以外に救命手段がない場合には輸血することがある旨を医療機関が説明しないで手術を行い輸血をしてしまったときでも、患者が宗教上の信念に基づいて当該手術を受けるか否かを意思決定する権利はそもそも人格権の一内容として法的に保護に値するものではないので、不法行為は成立しない。
- 医師の過失により医療水準に適った医療行為が行われず患者が死亡した場合において、医療行為と患者の死亡との間の因果関係が証明されなくても、医療水準に適った医療行為が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、不法行為が成立する。
- 交通事故の被害者が後遺症のために身体的機能の一部を喪失した場合には、その後遺症の程度が軽微であって被害者の現在または将来における収入の減少が認められないときでも、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害が認められる。
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この過去問の解説 (3件)
01
不法行為に関する難易度高めな設問です。
1× 判例(最判H18.3.30)では、「良好な景観に近接する地域内に居住する者が有するその景観の恵沢を享受する利益は、法律上保護に値するものと解するのが相当である」とし、「ある行為が良好な景観の恵沢を享受する利益に対する違法な侵害に当たるといえるためには、少なくとも、その侵害行為が、刑罰法規や行政法規の規制に違反するものであったり、公序良俗違反や権利の濫用に該当するものであるなど、侵害行為の態様や程度の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くことが求められる」との判断基準を示しています。
2× 民法723条には「他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる」と規定されています。
ここに言う名誉とは、「人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まない」(最判S45.12.18)とされています。
3× 「宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることは拒否するとの固い意思を有している患者に対して医師がほかに救命手段がない事態に至った場合には輸血するとの方針を採っていることを説明しないで手術を施行して輸血をした場合において右医師の不法行為責任が認められ」たという有名な判決があります(最判H12.2.29判事事項)。
4〇 判例では、「医師が過失により医療水準にかなった医療を行わなかったことと患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、右医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明される場合には、医師は、患者が右可能性を侵害されたことによって被った損害を賠償すべき不法行為責任を負う」(最判H12.9.22判決要旨)とされました。
5× 判例では、「交通事故による後遺症のために身体的機能の一部を喪失した場合においても、後遺症の程度が比較的軽微であつて、しかも被害者が従事する職業の性質からみて現在又は将来における収入の減少も認められないときは、特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害は認められない」(最判S56.12.22判決要旨)とされました。
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02
(最判平18.3.30)
2.名誉感情は、内心の問題であり個人差が大きい上、他人からは容易にうかがい知ることができません。
よって、それが人格権の侵害に該当する時などを除き不法行為とはならないとされていますので、間違いです。
3.医師が説明を怠ったことにより、手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪われた患者の精神的苦痛に対しては、慰謝すべく不法行為に基づく損害賠償責任を負うとの判例があります。
意思決定する権利は人格権の一内容として法的に保護に値するものであると考えられますので、間違いです。 (最判平12.2.29)
4.医療水準にかなった医療が行われていたならば、患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、医師は患者に対し、不法行為による損害を賠償する責任を負うとの判例があります。(最判平12.9.22)
正しい記述です。
5. その後遺症の程度が比較的軽微であつて、現在又は将来における収入の減少も認められないという場合においては、特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はないとの判例がありますので、間違いです。
(最判昭56.12.22)
よって、4が正解です。
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03
これを認めている判例があります。
よってX
2.主観的な名誉感情の侵害には不法行為は成立しません。
3.人格権の一内容として法的に保護に値する。
「エホバの証人」信者輸血拒否事件12.2.29、参照
4.医療水準にかなった医療が行われてたら、
その患者が死亡の時点において、なお
生存していた相当程度の可能性の存在が証明されれば、
709条適用と解されます。
5.その後遺症の程度が軽微であって、
被害者の現在または将来における収入の
減少が認められないときは、
財産上の侵害は認められません。
判例あり
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