行政書士の過去問
平成30年度
法令等 問3
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問題
行政書士試験 平成30年度 法令等 問3 (訂正依頼・報告はこちら)
次の文章は、最高裁判所の判例(百里基地訴訟)の一節である。空欄( )に当てはまる文章として、妥当なものはどれか。
憲法九八条一項は、憲法が国の最高法規であること、すなわち、憲法が成文法の国法形式として最も強い形式的効力を有し、憲法に違反するその余の法形式の全部又は一部はその違反する限度において法規範としての本来の効力を有しないことを定めた規定であるから、同条項にいう「国務に関するその他の行為」とは、同条項に列挙された法律、命令、詔勅と同一の性質を有する国の行為、言い換えれば、公権力を行使して法規範を定立する国の行為を意味し、したがって、行政処分、裁判などの国の行為は、個別的・具体的ながらも公権力を行使して法規範を定立する国の行為であるから、かかる法規範を定立する限りにおいて国務に関する行為に該当するものというべきであるが、国の行為であっても、私人と対等の立場で行う国の行為は、右のような法規範の定立を伴わないから憲法九八条一項にいう「国務に関するその他の行為」に該当しないものと解すべきである。・・・原審の適法に確定した事実関係のもとでは、本件売買契約は、( )。
(最三小判平成元年6月20日民集43巻6号385頁)
憲法九八条一項は、憲法が国の最高法規であること、すなわち、憲法が成文法の国法形式として最も強い形式的効力を有し、憲法に違反するその余の法形式の全部又は一部はその違反する限度において法規範としての本来の効力を有しないことを定めた規定であるから、同条項にいう「国務に関するその他の行為」とは、同条項に列挙された法律、命令、詔勅と同一の性質を有する国の行為、言い換えれば、公権力を行使して法規範を定立する国の行為を意味し、したがって、行政処分、裁判などの国の行為は、個別的・具体的ながらも公権力を行使して法規範を定立する国の行為であるから、かかる法規範を定立する限りにおいて国務に関する行為に該当するものというべきであるが、国の行為であっても、私人と対等の立場で行う国の行為は、右のような法規範の定立を伴わないから憲法九八条一項にいう「国務に関するその他の行為」に該当しないものと解すべきである。・・・原審の適法に確定した事実関係のもとでは、本件売買契約は、( )。
(最三小判平成元年6月20日民集43巻6号385頁)
- 国が行った行為であって、私人と対等の立場で行った単なる私法上の行為とはいえず、右のような法規範の定立を伴うことが明らかであるから、憲法九八条一項にいう「国務に関するその他の行為」には該当するというべきである。
- 私人と対等の立場で行った私法上の行為とはいえ、行政目的のために選択された行政手段の一つであり、国の行為と同視さるべき行為であるから、憲法九八条一項にいう「国務に関するその他の行為」には該当するというべきである。
- 私人と対等の立場で行った私法上の行為とはいえ、そこにおける法規範の定立が社会法的修正を受けていることを考慮すると、憲法九八条一項にいう「国務に関するその他の行為」には該当するというべきである。
- 国が行った法規範の定立ではあるが、一見極めて明白に違憲とは到底いえないため、憲法九八条一項にいう「国務に関するその他の行為」には該当しないものというべきである。
- 国が行った行為ではあるが、私人と対等の立場で行った私法上の行為であり、右のような法規範の定立を伴わないことが明らかであるから、憲法九八条一項にいう「国務に関するその他の行為」には該当しないものというべきである。
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この過去問の解説 (4件)
01
以下の事実関係の下争われました。
百里基地用地買収に際し、
土地所有者X1が基地反対派の町長Zの使用人Yに
本件土地の売買契約を締結したが、
X1は代金の一部が不払いだったとして、
債務不履行を理由とする売買契約の解除をし、
この土地をX2(国)に売却した事案で、
土地の所有権確認の請求がなされたものです。
憲法上の論点は以下3点でした。
①この売買契約が、憲法98条1項にいう
「国務に関するその他の行為」に当たり、
憲法9条に反して無効となるか否か。
②本件を私人間の私法上の紛争と解するとして、
なお憲法を直接適用して違憲とし無効とできるか。
(いわゆる直接適用説をとれるか否か)
③私人間の私法上の紛争に憲法は直接適用できないとしても(間接適用説)、
民法90条の公序良俗違反で無効にできるか。
最高裁は、上記の論点について以下の立場を示しました。
1)本件売買契約は、憲法98条1項にいう
「国務に関するその他の行為」には該当しない。
2)憲法9条は、人権規定と同様、私人間の私法上の
紛争に直接適用されない。(間接適用説)
3)憲法9条にいう統治活動に対する規範は、
憲法90条にいう「公の秩序」の内容を一部を形成するもので、
私法的な価値秩序の下、
反社会的な行為であるとの認識が、
社会の一般的な観念として確立されているか否かが
公序良俗違反となるか否かの基準である。
以上の前提のもとに、本問の選択肢を見ます。
1
誤り。
判例は本件売買行為について、
憲法98条1項の「国務に関するその他の行為」
に該当しないと判示しました。
また、本件行為について
「私人と対等の立場で行う行為」と認定しています。
2
誤り。
判例は本件売買行為について、
憲法98条1項の「国務に関するその他の行為」
に該当しないと判示しました。
また、本件売買契約は、
国の行政手段ではなく、
私人として行った私法上の行為と認定しています。
3
誤り。
判例は本件売買行為について、
憲法98条1項の「国務に関するその他の行為」
に該当しないと判示しました。
また「社会権」とは、
私法秩序に貧困政策などの政策的考慮を背景に
公法的秩序を持ち込むことで形成されたもので、
土地売買契約の無効如何が争われた本件とは
何ら関係がありません。
4
誤り。
高度に政治的な国の統治行為については、
「一見極めて明白に違憲」である場合を除き
司法権の審査になじまないとするのは
いわゆる統治行為論ですが、
本件では国の行為を私人としての私法上の行為と
認定しており、
統治行為論を論じる余地はありません。
5
正しい。
冒頭の百里基地訴訟に関する解説に則しています。
よって、本問は5が正解になります。
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02
百里基地訴訟(最判H1.6.20)を題材とした問題です。航空自衛隊百里基地の予定地であった土地の売買について、自衛隊の違憲性(9条違反)の問題が絡む重要な判例です。最高裁では、本件売買は国と私人が対応な立場で行ったものであり、98条1項の「国務に関するその他の行為」には含まれないため、その違憲性によって無効となるようなものではないとされました。
憲法9条および98条を引用します。
9条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、 国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 2前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
98条【憲法の最高性と条約及び国際法規の遵守】この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、 詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。 2日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
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03
よって、国が結んだ土地の売買契約は無効である、と主張した。
裁判所は、本件の自衛隊に関する憲法判断自体を不要とし、土地の売買契約についても、私人と対等な立場で行った私法上の行為であり、憲法98条1項違反とはならない、としました。
よって正解は⑤です。
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04
判決では、憲法98条1項の「国務に関するその他の行為」とは、「公権力を行使して法規範を定立する国の行為」とし、本件売買契約は、私人と対等の立場で行った私法上の行為とされ、法規範の定立を伴わないことが明らかであるから、憲法九八条一項にいう「国務に関するその他の行為」には該当しないと判示しました。
ア:妥当でない
イ:妥当でない
ウ:妥当でない
エ:妥当でない
オ:妥当
したがって、⑤が正解です。
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