行政書士の過去問
平成30年度
法令等 問10

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問題

行政書士試験 平成30年度 法令等 問10 (訂正依頼・報告はこちら)

行政処分の無効と取消しに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 行政処分が無効である場合、当該処分はその成立当初から効力を認められないから、当該処分に対する取消訴訟を提起することはできない。
  • 行政処分が無効である場合、行政不服審査法が定める審査請求期間にかかわらず、当該行政処分の審査請求をすることができる。
  • 行政処分の職権取消しは、当該処分に対する相手方等の信頼を保護する見地から、取消訴訟の出訴期間内に行わなければならない。
  • 行政処分が職権により取り消された場合、取消しの対象となった処分の効力は消滅するので、これを争う相手方は、当該処分の有効確認の訴えを提起しなければならない。
  • 行政処分の違法を理由として国家賠償を請求するためには、その取消しまたは無効確認の確定判決をあらかじめ得ておく必要はない。

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この過去問の解説 (4件)

01

行政不服審査法・行政事件訴訟法に関する問題です。

1
誤り。

原告から見て行政処分が無効に当たる瑕疵ありと思われたとしても、
取消訴訟の出訴期間内であれば、取消訴訟として審理されます。

2
誤り。

行政不服審査法に基づく不服申立ては、
行政行為の瑕疵が取消に当たるか無効に当たるかを問わず、
処分があったことを知った日の翌日から3月以内、
処分があった翌日から1年以内です。
(行政不服審査法第18条)

3
誤り。

行政処分の職権取消しは、
その行政行為が違法ないし不当になされたために、
その効力を処分時に遡りなかったことにする行為。
その為、行政庁による職権取消しについて
別に法律上の根拠は必要なく、
同時に職権取消しの期限に関する定めもありません。

4
誤り。

行政処分の職権取消しを争う場合、
そもそも職権取消しにより
最初から行政処分がなかったことになります。
従って、行政事件訴訟法第36条に基づく
「当該処分若しくは裁決の存否又は有無」を争う
余地がありません。
むしろ行政庁の不作為の違法確認訴訟が提起されうる。(行政事件訴訟法第37条)

5
正しい。

国家賠償法第1条は民法上の不法行為法の特則であり、民法715条(使用者責任)に類します。
従って、行政事件訴訟法上の取消又は無効
確定判決を得ることは必要ありません。
公法関係上の行政行為の違法・不当は
民事上の不法行為における違法性と直接関係しません。

よって、本問は肢5が正答となります。

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02

瑕疵ある行政処分についても、権限ある機関から取消されない限りは、一応有効なものとして扱われます。
一方、瑕疵が「重大かつ明白」である場合は、その処分はもはや効力を有さないとされています。

①誤り
無効な行政行為についても取消訴訟を提起することができます(行訴法3条)。

②誤り
無効な行政処分についても行審法3条の規定する審査請求期間の適用を受けることとなります。
審査前置主義が規定されている場合でも、処分そのものが無効とされる場合は、審査請求をしないでいきなり無効等確認訴訟を提起することができます。

③誤り
行政処分が当初から違法または不当であった場合、それを理由に処分の効力を失効させ、発生した法的関係を遡及して消滅させることを「取消し」といいます。
「職権取消し」は、処分をした行政庁自身が自らの職権で違法または不当な処分を消滅させることをいいます。
この場合、処分の前提となる条件が不適当であり、本来あるべき法的状態を回復させるに過ぎないため、法律の根拠は必要なく、出訴期間の適用もないとされています。

④誤り
行政処分が職権により取り消された場合、取消しの対象となった処分の効力は消滅します。その処分は遡って効力を失うため、処分の有効確認の訴えを提起する必要はありません。

⑤正解
判例は、国家賠償請求に取消しまたは無効確認の確定判決をあらかじめ得ておく必要はないとしています。

したがって、⑤が正解です。

参考になった数7

03

正解は5
行政処分の無効と取消しに関する設問です。

1× 行政処分が無効かどうかは裁判所で判断されるものなので、無効か否かの判断も当該取消訴訟において審理されます。

2× 行政処分が無効である場合、当該行政処分の審査請求が可能ですが、審査請求期間の制限を受けます。

3× 瑕疵ある行政行為を取り消すことを職権取消しといいますが、法律による規定はありません。

4× そのような規定はありません。

5× 判例では、「行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ右行政処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないものではないから、本訴が被上告人委員会の不法行為による国家賠償を求める目的に出たものであるということだけでは、本件買収計画の取消後においても、なおその無効確認を求めるにつき法律上の利益を有するということの理由とするに足りない」(最判S36.4.21)とされました。

参考になった数3

04

1 ×
行政処分が無効であっても取消訴訟を提起することは可能ですので、誤りです。

2 ×
行政処分が無効である場合、審査請求又は無効等確認訴訟を提起することができますが、審査請求は行政不服審査法が定める審査請求期間内に行う必要があるため、誤りです。

3 ×
行政処分の職権取消しに法律の規定はなく、期間の制限もないため誤りです。

4 ×
「当該処分の有効確認の訴えを提起しなければならない。」という規定はないため誤りです。

5 〇
正しい記述です。

よって正解は⑤です。

参考になった数1