行政書士の過去問
平成30年度
法令等 問18

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問題

行政書士試験 平成30年度 法令等 問18 (訂正依頼・報告はこちら)

行政事件訴訟法の定める民衆訴訟と機関訴訟に関する次の記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
  • A県知事に対してA県住民が県職員への条例上の根拠を欠く手当の支給の差止めを求める訴訟は、民衆訴訟である。
  • A県県営空港の騒音被害について、被害を受けたと主張する周辺住民がA県に対して集団で損害の賠償を求める訴訟は、民衆訴訟である。
  • A県が保管する国の文書について、A県知事が県情報公開条例に基づき公開の決定をした場合において、国が当該決定の取消しを求める訴訟は、機関訴訟である。
  • A県議会議員の選挙において、その当選の効力に関し不服がある候補者がA県選挙管理委員会を被告として提起する訴訟は、機関訴訟である。
  • A県がB市立中学校で発生した学校事故にかかわる賠償金の全額を被害者に対して支払った後、B市が負担すべき分についてA県がB市に求償する訴訟は、機関訴訟である。

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この過去問の解説 (4件)

01

1
妥当である。

行政事件訴訟法第42条は、
「民衆訴訟は、法律に定める場合において、
法律に定めるものに限り、提起することができる。」
と定めています。

地方自治法第242条の2は、
地方公共団体職員のなした違法な財務会計上の
管理運営をただすために、
住民に地方裁判所への出訴権を認めています。
(住民訴訟)

本肢の「A県知事に対してA県住民が現職員への
条例上の根拠を欠く手当の支給の差止めを
求める」訴訟は、
地方自治法第242条の2に法定された住民訴訟の
対象になるために、
行政事件訴訟法第5条にいう民衆訴訟に当たります。

2
妥当でない。

このような場合は、
国家賠償法第2条1項が
「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理
に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、
国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」
と定められていることから、
民事訴訟の一種とみなされます。

3
妥当でない。

この場合は、取消訴訟に当たります。

県の保管する国の文書につき、
県知事が県情報公開条例に基づき公開決定したため
国が当該決定の取消しを求める訴訟として、
最高裁判例平成13年7月13日があります。
(海上自衛隊対潜水艦作戦センター事件)

那覇防衛施設局長が建築基準法に基づき
那覇市建築主事に提出した海上自衛隊施設の
建築工事計画通知書及び添付図面を、
那覇市情報公開条例に本地季公文書公開請求した
請求人らに対して、
那覇市長は一部公開の決定をしました。
これに、国が違法を主張し取消を求めました。

最高裁は、
裁判所法第3条にいう法律上の争訟に当たるとし、
従って本件は、
法律上の争訟でない場合に認められる余地のある
機関訴訟(行政訴訟法第6条)ではなく、
取消訴訟としてとらえるべきと判示しました。

4
妥当でない。

この種の訴訟は、民衆訴訟に当たります。

「機関訴訟」とは、行政事件訴訟法第6条に
「国又は公共団体の機関相互間における権限の存否
又はその行使に関する紛争についての訴訟」と
定められていますので、
明らかに本肢には当てはまりません。

行政事件訴訟法第5条が定める「民衆訴訟」は、
法第42条に従い、
法律に定める場合に、
法律に定めるものに限り提起できるとしています。

この点、公職選挙法第203条に
地方公共団体議会議員選挙の効力に不服ある候補者は、
当該都道府県の選挙管理委員会を被告として
高等裁判所に訴訟を提起できると法定しています。
従って、本訴訟は民衆訴訟に当たります。

5
妥当でない。

本肢のような事例は国家賠償法に関する訴訟であり、
行政事件訴訟の一である機関訴訟ではなく、
民事訴訟として扱われます。


以上より、本問は肢1が正解となります。

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02

正解は1
行政事件訴訟法の定める民衆訴訟および機関訴訟に関する設問です。なお、両訴訟の定義は、以下の通りです。
第五条 この法律において「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。
第六条 この法律において「機関訴訟」とは、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう。

1〇 肢1の訴訟は、住民訴訟(地方自治法242条の2第1項1号)であり、民衆訴訟に分類されます。

2× 大阪国際空港公害訴訟(最大判S56.12.16)では、国家賠償法に基づき損害賠償請求がなされました。同訴訟は、民事訴訟に当ります。

3× 「国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争」に当らないため、機関訴訟ではありません。なお、国が沖縄県の協定書等の開示決定について、その取消しを求めた訴訟(福岡高H30.4.17)は、抗告訴訟でした。

4× 肢4の訴訟は、選挙に関する訴訟(公職選挙法)なので、民衆訴訟であって、機関訴訟ではありません。

5× 肢5の訴訟は、国家賠償法3条2項に基づく訴訟であり、肢2と同じく民事訴訟です。国家賠償法3条を引用します。
「前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。」

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03

①妥当
「『民衆訴訟』とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するもの(行訴法5条)」とされ、法律による定めがある場合に提訴が可能です。
この場合は、地方自治法が想定する住民訴訟の典型例です。

②妥当でない
この場合は、国家賠償請求訴訟となります。

③妥当でない
この場合は、取消訴訟(=抗告訴訟)となります。
なお、抗告訴訟については、「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」をいいます(行訴法3条1項)。

④妥当でない
選挙訴訟について、公職選挙法204条は、選挙の効力に異議がある選挙人または候補者が…、訴訟を提起できる旨を定めています。
選挙訴訟は、民衆訴訟の代表例です。

⑤妥当でない
この場合は、国家賠償請求訴訟となります。
損害を賠償した者は、その範囲において他の賠償すべき者に対してその超過分を求償することができます。
設問では、A県とB市が賠償責任を負うことになりますので、その間で求償を請求することになります。

したがって、①が正解です。

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04

1.妥当である
手当の支給差止めを求める訴訟は、地方自治法242条の2第1号の住民訴訟であり、民衆訴訟にあたります。

2.損害の賠償を求める訴訟だから、国家賠償請求訴訟です。

3.国は設計図面が開示されることにより、建物の所有者として有する固有の利益が侵害されることを理由として開示決定の取消しを求めているから、取消訴訟です。

4.妥当でない
当選の効力を争う訴訟は、「地方公共団体の議会の議員及び長の当選の効力に関する訴訟」(公職選挙法207条)であり、民衆訴訟です。

5.妥当でない
A県がB市に対して、B市の負担分について求償請求しているのだから、国家賠償請求の求償金請求訴訟(国家賠償法3条2項)です。

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